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しおりを挟む龍神side
御法川の謹慎明けというニュースはその日のうちにあっという間に広がり、本性を知る二、三年の生徒には波乱の予感を与えた。一年はまだ知らないので遠巻きに色めき立っているが、これも時間の問題だろう。
「御法川!!お前は何回言えば二階から飛び降りるのを止めるんだ!」
「まあまあ仁先生、僕は怪我しないから心配しなくても大丈夫だよ?過保護だなあ全く。仁先生僕のこと好きすぎ」
「そういうことじゃない、飛び降りた先に人がいたらどうする!あと俺がお前を好きで堪らなくなるのはお前が大人しい優等生になった時だけだ馬鹿たれ!!」
「それはその時に下に居て避けられなかった人が悪いんだよ。ちなみに僕今のままでもう十分優等生だと思うよ?」
「どこがだ阿呆っ、お前が優等生なら俺はお前の入学当初からこんなに苦労していない!!」
という仁先生と御法川の言い合いが聞こえてきた時は流石に頭痛がした。第三者の俺でもこうなのに当事者の仁先生の苦労たるや、計り知れない。
今まで謹慎だったから忘れていたが、そういえば藍野が転校してくるまではずっとこんな感じだったな。誰かの怒号を聞いて駆けつけたらほぼ御法川の仕業で、大体あいつのやらかしたことの後始末は俺に回ってきていたように思う。風紀に入れてからは少しおとなしくなったが。
ところで、風紀委員会は今劇的に荒れている。御法川合流のせいなのか、それとも亘から今朝の俺の痴態が知れ渡っているからなのか……切実に前者であって欲しい。
「い、委員長、大丈夫なんすかっ?!お、襲われたって……」
血相を変えた都島が風紀室にきた時は流石に俺も御法川を殴ろうかと思った。あと誰だ、都島にそんなこと吹き込んだやつ。
「俺が今すぐ片づけるんで、そいつの名前とクラス教えてください!」
風紀委員には俺が思っているより過激派が多いのかもしれない。誰かそこで武器を揃えている井上を止めてやってくれ。
「都島、俺は別に──」
襲われてない、と言おうとして首を傾げた。
ではあれは何だったのか。
瞬間、俺は今朝のことを鮮明に思い出してしまい、思わず口元を押さえて赤面した。
くそっ……。
「は、え……?い、いいんちょ、」
動揺した都島の声が聞こえ、はっとして顔を上げる。
「あ、いや……何でもない、大丈夫だ」
今日一日、何だか失敗しかしていない。こんなの襲われたと言っているようなものだ。
凍った空気を変えたくて、俺は机に向かい仕事をすることにした。
………………気まずいな。
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