笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
上 下
36 / 115

4

しおりを挟む

※微注意







 手の拘束から抜け出そうと足掻くも、一向に外れそうもない。御法川の方が身長があるせいなのか、それとも案外筋肉があるのかは分からないがよくない状況なのは変わりない。







「一年のことのついでに、瑚珀にちょっと忠告しとこうか。少しは警戒心を持ってもらわなきゃ、ね」







 そう言って目を細めた御法川は、俺の学ランの襟元をパチンと外し慣れた手つきで中のシャツのボタンを三つ開け手を滑り込ませた。







「っ?!……っお、前、なっんの、つもりだっ」







 腹から胸元にかけて御法川の長い指がつーっと皮膚の上を滑ると、ゾクゾクとした得体の知れないしびれが身体に走る。触れられている、たったそれだけのことなのに体のどこにも力が入らない。







「ははっ、可愛い。なんか余計に意地悪したくなっちゃったな。」 






 
 艶然えんぜんと微笑んだ御法川の端正な顔立ちがぐっと近くなり、吐息が耳にかかった。柔軟剤か何かなのか、ほんのり甘い匂いがして俺はぼんやりとしてしまう。








「……どうしよう、思った以上だ」






「っ、何が……んぅっ?!」







 独り言のように呟かれたその言葉への問いは、首筋に生暖かいものが這ったことで遮られた。思わずビクッと背筋を震わせる。






「自覚は無理かもしれないけど……危機感は持とうね?」




「い゛っ………」



 


 首に小さな痛みが走り、御法川の体が首から離れる。熱は離れたのに何故かそれとは裏腹に俺の顔は熱を集めた。








「それで、そろそろ話す気になったかな?僕はそんなに気が長い方じゃないんだけど」





「っ……言、わない」








 きっと睨むと、御法川の目が冷めたものに変わったのが分かる。









「強情だなぁ」









 また御法川が近づく気配がして、不覚にも俺は目をぎゅっと瞑ってしまった。













 と、その時。



















 ガチャっ。













「おはようございま………は?」












 風紀室の扉が開いた音がして、亘の地を這うような声が聞こえた。目を開けると、御法川の背中越しに亘が入ってくるのが見えた。





 何だか、誤解を招きそうだな……。










「あれ、庵司だ。おはよう」

 









 にっこりとして俺の上で御法川が挨拶する。この状況でよくお前は平然としてられるな。というか退け、重い。








「………今すぐ委員長から半径十メートル以上離れて一回あの世に召されてください、御法川先輩。」  










 相当怒ってるな、亘。



 これはおっかない、と勝手に思っていると、御法川が大袈裟に溜め息を吐く。





「あーあ、庵司が来ちゃったし、仕方ないか。でも、これでちょっとは分かったよね?瑚珀の警戒が足りないって」



「分かったから、もう退け。いい加減重い」







 仕方ないなぁ、と言いながら御法川が降りた瞬間、亘が目にも止まらぬ速さで御法川の頭を手にしていた分厚いファイルで殴った。








「いっっったああああ!?」




「角では殴っていないので問題ないでしょう。とりあえず聞きたいことはたくさんありますが今は視界に入ると暴力の衝動が抑えられないのであと三秒で風紀室から出て行ってください」




「えっ」





「三秒以内にここから出なければ御法川先輩の顔の造形は跡形なく変わっていることでしょう」







「怖っ!?」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

処理中です...