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しおりを挟む龍神side
「前代未聞ですよ、あんなお願い。」
舞台裏で俺の帰りを待っていた亘が開口一番そう言って、そこからは説教に発展していった。
そもそもあなたは今日風紀委員長としてではなく三年の生徒として参加したのに何故藍野君と二年生徒の問題を取り締まってるんですかええ知ってますとも都島君が教えてくれましたからはいそれでどういうことか説明して頂けますよね委員長。
「待てちょっとは手加減してくれ」
「はい?なんですか委員長。聞こえませんよ??」
「分かった俺が悪かった………でもまあ、抱擁とかよりもいいだろう?」
「当たり前です!委員長のハグなんて、そんな安いものじゃないんですから絶対に誰彼構わずしてはいけません!!」
いや俺の抱擁に価値は無いと思うぞ。
「別に抱擁くらい求められればいくらでもするが…」
「絶対ダメですやめてください」
真顔で即答する亘に、少し疑問を抱いた。
じゃあ、
「それはお前でもか?」
「当たり前のことを聞かないでくださ……はいっ?!」
薄々思っていたが、やっぱり亘は抱擁をして欲しかったのだろう。素直じゃないな。
「ほら、亘。」
手を広げて促せば、亘は珍しく顔を真っ赤にして狼狽えた。
「かっ、からかわないでください!!」
「じゃあ、やっぱりお前は俺の抱擁が嫌なわけか…そうか…それは、ちょっと悲しいな」
「~っ分かりました!分かりましたからもうやめてください!」
亘の返事に満足して再度両手を広げると、耳まで赤く染めた亘が遠慮がちに寄ってきた。
「し、失礼します……」
しっかりしているイメージのある亘だが、なんだかこうして見ると可愛い。さっきまではあんなに機嫌が悪かったのに今はすっかり治っている。後輩らしい一面を見れた気がするな。
少し甘やかしたくなったので寄ってきた亘を少し強く抱きしめると、更に顔を赤くして俯いた。
これくらいにしておくか。
「亘。いつもありがとう、感謝している」
離れる前にそう伝え、殊更優しく抱き締めて離れると、亘は熟れた林檎のように赤くした顔で静かに震え、声にならない悲鳴を上げて去っていってしまった。
亘の性格上俺を嫌ったりはしないだろうが、さすがにあれは怒ってしまったみたいだ。少しやりすぎたか。
……だがまあ、亘の可愛い一面が見れたので良しとしよう。
その頃の亘。
「本当に、あの人は、分かってない………私は、ハグはされるんじゃなくて、したいんですよ…」
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