笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
上 下
31 / 117

14

しおりを挟む




龍神side





「前代未聞ですよ、あんなお願い。」



 舞台裏で俺の帰りを待っていた亘が開口一番そう言って、そこからは説教に発展していった。




 そもそもあなたは今日風紀委員長としてではなく三年の生徒として参加したのに何故藍野君と二年生徒の問題を取り締まってるんですかええ知ってますとも都島君が教えてくれましたからはいそれでどういうことか説明して頂けますよね委員長。



「待てちょっとは手加減してくれ」



「はい?なんですか委員長。聞こえませんよ??」


「分かった俺が悪かった………でもまあ、抱擁とかよりもいいだろう?」


「当たり前です!委員長のハグなんて、そんな安いものじゃないんですから絶対に誰彼構わずしてはいけません!!」

 



 いや俺の抱擁に価値は無いと思うぞ。




「別に抱擁くらい求められればいくらでもするが…」



「絶対ダメですやめてください」





 真顔で即答する亘に、少し疑問を抱いた。




 じゃあ、





「それはお前でもか?」








「当たり前のことを聞かないでくださ……はいっ?!」






 薄々思っていたが、やっぱり亘は抱擁をして欲しかったのだろう。素直じゃないな。



「ほら、亘。」





 手を広げて促せば、亘は珍しく顔を真っ赤にして狼狽えた。


 

「かっ、からかわないでください!!」



「じゃあ、やっぱりお前は俺の抱擁が嫌なわけか…そうか…それは、ちょっと悲しいな」



「~っ分かりました!分かりましたからもうやめてください!」



 亘の返事に満足して再度両手を広げると、耳まで赤く染めた亘が遠慮がちに寄ってきた。



「し、失礼します……」



 しっかりしているイメージのある亘だが、なんだかこうして見ると可愛い。さっきまではあんなに機嫌が悪かったのに今はすっかり治っている。後輩らしい一面を見れた気がするな。



 少し甘やかしたくなったので寄ってきた亘を少し強く抱きしめると、更に顔を赤くして俯いた。




 これくらいにしておくか。





「亘。いつもありがとう、感謝している」



 離れる前にそう伝え、殊更優しく抱き締めて離れると、亘は熟れた林檎のように赤くした顔で静かに震え、声にならない悲鳴を上げて去っていってしまった。





 亘の性格上俺を嫌ったりはしないだろうが、さすがにあれは怒ってしまったみたいだ。少しやりすぎたか。





 
 
 ……だがまあ、亘の可愛い一面が見れたので良しとしよう。




































 その頃の亘。










「本当に、あの人は、分かってない………私は、ハグはされるんじゃなくて、したいんですよ…」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

超絶美形な俺がBLゲームに転生した件

抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。 何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!! 別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。 この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

処理中です...