笑わない風紀委員長

13

「三浦。」






「っひゃい！！」





「ん。」



　手を突き出すと、三浦は不思議そうに手を出した。その手のひらに俺は持っていたものをそっと置く。
　




　
「へ……？」






　こ、これは？？と困惑してこちらを見る三浦に俺は平然と答える。






　




「絆創膏だ」
 








　瞬間、会場がしんとするが、気にせずに俺は続けた。こういうのは動揺した方が負けだ。







「俺から三浦へのお願いは、絆創膏を貼ってもらうこと、だ」







　これなら別にそんなに物議を醸すようなお願いではないだろう。万が一嫉妬に狂う輩が出たとしても、それは三浦にではなく俺に対してだろうしな。




　…………まあ、俺が三浦をこき使っているようにしか見えないだろうしな。 




　ちなみに指は、たまたまこの閉会式が始まる前に舞台裏の古い柱で木片が刺さって血が出ただけで、特にあらかじめ仕組んでいたというわけではない。あの柱は危ないから、後で学校に言って新品にしてもらわなければ。


　
　そう思いながら指を三浦に出す。




　
　

「えっああのっ！？」


　

「三浦、悪いな。俺はあまり絆創膏を貼るのが得意じゃないんだ。」



　
　
　我ながらこれは苦しい言い訳か、と苦笑するも、三浦はどうやら俺がこの場をやり過ごそうとしていることに気づいたらしい。緊張しつつも包装をペリッと剥がし、震える手で俺の人差し指に絆創膏を貼った。




「ん、うまく貼れてるな。ありがとう」





　おそらく今誰よりも不安がっているだろう三浦を安心させたくて、俺は笑いながらお礼を言った。









　そこでやっと、三浦も少し笑い、会場に歓声が満ちた。