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「ただいまより、新入生歓迎会の閉会式を行います」
副会長の樋口の言葉を聞きながら、俺はいつものように愛想のかけらもない無表情を浮かべてステージの上に立っていた。
何故俺がこんなことを……。
思わず溜息を吐きながら舞台の上から生徒たちを見下ろす。好奇、驚愕、羨望…様々な視線がこちらに向いている。ランキング上位者や学園の人気者とペアになったやつは大変だな、なんて思っていると、不意にざわめきが静かになった。樋口が軽く注意したらしい。
「では、まずはペアになった方々の発表です。名前を呼ばれたら一歩前に出てください。」
名前を呼ばれたペアが前に出ると会場からどよめきや冷やかしが聞こえる。例年、2、3年でペアになった者は付き合うことが多い。盛り上がるのは定番のようだ。
そういう意味では本当に三浦に悪いことをしたな、と申し訳なく思いつつ呼ばれたので、三浦の手をとって前に出る。ステージの照明が熱い。
「うえわっ?!」
手を引かれて驚いた三浦は、小さく悲鳴をあげた後こちらの様子を窺った。どうやら不安で仕方ないらしい。顔もやや俯きがちで表情が暗い。
「これはまた意外な組み合わせですね」
司会の進行上何か言わなくてはならない樋口が心底興味なさそうに感想を述べた。隣の三浦の肩がビクッと跳ねたのが分かる。
樋口、余計なことを言うな。緊張するだろう、三浦が。
思わず心の中で悪態を吐く。しかしこのままではあまりに三浦が可哀想なので、俺が軽く説明しておくことにした。
「これは俺の不注意で彼にぶつかってしまったことが原因の事故だ。お互いの合意の上ではないが、俺が三浦に頼んで一緒にステージに上がってもらった。残り時間が少なくて、今更新しく人を捕まえられなかったからな」
「えっ……」
堂々と嘘を吐く俺に驚いたのか、三浦ががばっとこちらを見た。
今は俺に合わせてくれ。何も言わなくていい。
目線でそう伝えると、三浦は目を見開くも慌てて頷いた。
途端、周りから、なーんだそういうことかと納得の声が聞こえたのでどうやら無事切り抜けることができたらしい。これで少しはマシになったはずだ。
「そうですか。では鬼側の龍神風紀委員長は三浦君に何か願いを言ってください」
相変わらず覇気のない樋口の言葉に、俺は軽く考え込む。
王道は自分の好きな人とのデートだとか、頭を撫でて欲しいだとか、名前を読んでほしいだといったものだが……これはまず無しだろう。どちらにも得がない。
となると。
あまり負担にならないことがいいだろうな……。
そう思いながら俺は口を開いた。
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