俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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「ん゛んんぅっ!!!!」







 ぬるぬるとした気持ち悪い動きの舌に口の中を犯されながら、ズボンのベルトを外される。レッドホットチキン野郎も続け様に自分のベルトを外し、ズボンから凶悪なブツがまろび出てきて一気に青ざめた。
いよいよ本当に掘られそうな展開で、でもこれ漫画でよく見るモブレそのものじゃんとかそんな悠長なこと思っていられない。よく知らない他人の体温が口の中で好き勝手してるのでさえ吐きそうなくらい気持ち悪いのに、あんなもの尻にブッ込まれたら絶対に死ぬ。






「ん゛ぁッ!?!?」






 そこそこなサイズのグロいソレに気を取られていると、急に乳首がグニィ!と強く摘まれて体に電気が走ったような感覚がした。






 は、っ!?な、何!?





 さっきまでは虫が動いてるみたいに気持ち悪かった指の動きが、急に強い刺激を与えてきて意図せず腰が跳ねる。






「ッぁ゛、はッぅ!?!?」






 先端を爪で撫でるように引っ掻かれて息ができない。信じられないし信じたくないし最っ悪でぶん殴りたいのに、マジで気持ち悪いはずなのに、訳わかんないことに体がビクビクと跳ねてずくん、と快楽を拾ってしまっている。




 

 おかしい。意味が分からない。





 だってだって、これは乳首なのに。普段は存在すら気にしてないようなものなのに。女の子なら分かるけど、男で乳首触られて感じるなんて本当にBL漫画とか小説とかでしかあり得ない。いわばフィクションのはずで、俺は確かに腐男子だから見たことあるけど、こんな、こんなのおかしい。




 明らかにさっきまでと違う俺の反応を見て、弄っている本人である沢渡とか言うクソ野郎がキスしながらニヤ、と目を細める。くっそお前マジで赦さねぇから、ほんとクソ!!!






「うわ、乳首ビンビンじゃん。エッロ」

 


「乳首で感じるとかこいつ見た目に寄らず淫乱じゃねぇかw」




「ッつ゛ァ゛、んぅあ゛ッ!?」







 スキンヘッドとリーゼントが覗き込んできて、スキンヘッドが尖った先っぽにじゅぷッ、と吸い付いてくる。もう片方はクリクリと指で弄られ、途端に俺の意思関係なく体がビクビクンッ、と震えて、蹂躙されている口の間から変な声が漏れる。もう何もかも気持ち悪くてほんとに嫌で仕方ないのに、それを無視して跳ね上がる全身に泣きそうになった。






 こんなのおかしい。






 ヌチュクチュと嫌な水音が耳に響いて、濡れた乳首が外気でひんやりしておかしくなりそうだ。ズズ、と上顎を舌でなぞられる。怖くて仕方ない。




 でも真に怖いのはこの状況じゃなくて、快感を確かに拾うこの体だった。




 ゴクリ、と目の前の朱鳥が喉を鳴らした。目が欲で光っていて、爛々としている。奴のグロテスクな見た目のソレが、だんだん俺の方に近づいているのが分かった。視界が霞む。





 このままじゃもう、犯されてしまう。いくら腐男子といっても男同士なんて俺はしたことないし、知識としてうっすらとしか知らない。でも普通に考えてあんなものが、小さな尻の穴なんかに入るわけがない。もし仮に入ったとしても、こんなヤツらにヤられたくない。







 嫌だ、



 

 嫌だ、




 嫌だ!!






 こんなやつらにこんなことされたくない。怖い。行かなきゃよかった。こんなとこ来なければ。果し状なんか捨てればよかったんだ。そもそもこんなやつとなんか関わらなきゃよかった。怖い。嫌だ。怖い。

















 ────いや、諦めんな俺!!












 まだ間に合う、今からでもとりあえず貞操だけは守れればいい!!その後ボコされるかもしれないけど、そうなったらそうなっただ。




 諦めかけていた心を必死で繋げて、俺は何とか力を振り絞って口の中を犯す舌を噛んでやった。最初に挑んだ時と違って今度はちゃんと相手のベロを捉えることができた。








「いぎァ゛っ!?!?」




「ッはぁ!ゲホッ、ゴホッ、ッはぁ、は、ぁッ……」








 沢渡が動物の鳴き声みたいな悲鳴をあげて慌てて口を離した。急に呼吸が戻ってきて、俺は軽く咳き込みながら息を荒げる。






 うっ、気持ち悪い。





 よく知りもしない他人のぬるぬるした舌が入ってるだけでも気持ち悪いのに、それを歯で捉える感覚とか鳥肌立ちすぎてやってられない。でもこのチャンスを逃すわけにはいかない。



 霞む視界の中で俺は続け様に後ろに思いっきり肘を叩き込んでやった。ごふ、と至近距離で息が吐き出されて後ろの拘束が離れたのを感じた。それを確認せずに、すぐに今度は目の前の赤髪の眉間を蹴飛ばし、スキンヘッドとリーゼントの顎をぶん殴る。






「いってぇ!!!クソッ、こいつまだ抵抗しやがる!!」







 沢渡とかいう緑髪と顎を抑えて蹲るスキンヘッド、リーゼントはしばらく動けなさそうだがレッドホットチキン野郎に関しては蹴飛ばす力がちょっと足りなかったらしく唾を飛ばしながら大激怒していた。人を殴るのなんか初めてで、握った拳がじんじんして痛い。









 でもこれでこいつだけになっ────。







「ぉらぁッ!!!テメェよくも手ェ出してくれたなァ!?」



「っ!?」








 怒鳴り声とともに後ろから羽交締めにされて振り返る。そこには角刈りヤンキーがいた。






 クソッ、こいついたのかよ!!存在感無さすぎて分かんねぇし、そもそも手出してきたのお前らだろーが!!







「ッ、はッ、はぁ、!、離せクソ野郎!!!」





「暴れんな!!」








 ジタバタと体を動かして抵抗する。さっきまでと違って抑えてるのは一人だから幾分抵抗しやすいけど、相手が俺よりでかいせいで中々解放とまではいかない。しかも、いつ他の3人が復活して参戦してくるか分からない。





 額を赤くした朱鳥がゆらり、とこちらに近づいてきて、血走った目で俺を睥睨した。










「変更だ、変更……テメェだけはぶん殴ってぶん殴って、動けなくした後にブチ犯して捨ててやる!!!」










 激昂して拳が高く振り上がる。青筋がビキビキと立っているのを見て、一目でこれを喰らえばただでは済まないと判断したけど避ける術がない。本当に最低最悪だ、こいつら。







 グッ、と歯を食いしばって、来たる衝撃に堪える。視覚を守るために咄嗟に目を瞑った。



























 ──────その時だった。











 
突然上から、低く掠れたような、特徴的な声が降ってきたのは。



























 
「────うるせぇ」
















 反射的に目を開ける。ヤンキー共が急に、水を打ったように静まって、全員等しく上を見上げていた。つられるように、俺も視線を旧校舎に向ける。




 旧校舎の2階部分の、多分廊下に当たる窓の縁に人が座ってこちらを見下ろしていた。2階とはいっても、この学園の教室の天井は高いので6、7メートルくらいの高さがあって、ここからだとその顔を正確に認識することはできない。








 だが、俺には一瞬で分かった。








 その人は少しくすみがかった薄めの金髪で、長い襟足を風でゆらゆらと靡かせていた。キラ、と一瞬だけ耳元が光って見えたのは、おそらくピアスをしているからで。





 ゴクリ、と誰かが唾を飲んだのが分かった。干上がった喉で、レッドホットチキンがポロリと小さく溢す。





























「き、鬼頭、さん……」


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