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しおりを挟むまぁ薄々分かっていたけど、颯斗のサイコパスな人格形成が始まりかけてるみたいだ。原作の影響が強まってる、ともいうか。
原作は颯斗が高校一年生の時に始まるけど、その頃には颯斗はもう既に結構倫理観死んでてヒロイン(男)と会う頃には、もうほとんど生きてるものには興味ない、みたいな状態になっている。原作では確か、回想という形で颯斗がサイコパスを加速させたきっかけになった『ある事件』について書いていた、と俺は記憶している。
その『ある事件』が起きるのが、今の颯斗中学時代だ。
だから俺は颯斗が中学に入学する前、ドキドキしながら毎日過ごしていた。ここが正念場、俺が如何に颯斗の闇堕ちを防げるかが俺の生存ルートに直結する。目指せ友好生存ルート、である。小学校よりももっと颯斗の動向、一挙手一投足に注目しないといけないと思っていた。
しかし、小学校と違って四六時中颯斗といることは不可能だった。まずうちの中学は違う学年のフロアに行くことは禁じられているし、学年を超えての交流なんてない。部活に入らなきゃならないせいで俺の自由にできる時間も少ない。
俺が颯斗と同じ部活に入ってれば話は違ったかもしれないけど、テニス部は強豪だから俺みたいな新参者が軽々しく入れるような部活じゃない。多分ボコボコにリンチされるか、クソ真面目に鍛えいじめられるかだな。そんなん俺が先に死ぬ。しかも、颯斗は生徒会に入ってしまったので会うことすら少なくなってしまった。
そんなわけで、俺が颯斗にべったりすることは難しくなってしまったので、時間を見つけては影から見守る、という方法で毎日過ごしている。
ってああ、ごめん、前置き長くなっちゃった。それで、俺が不安なのは、原作の強制力というものについてでさ。この前、俺見ちゃったんだよな。
颯斗が、学校のゴミ捨て場で手紙捨ててたの。
颯斗は、まぁ当たり前だがめちゃくちゃモテるから学年問わずよく告白される。何度か一緒に登校したけど、靴箱にラブレターとかしょっちゅうあるし、放課後呼び出し受けて告白とかもすごく多い。特に一年は、つい最近中学生になったこともあって結構手紙での告白が多いみたいだ。俺も颯斗ほどじゃないけどちょっとは告白されたことがあるのでその辺は割と詳しい。あ、別に自慢じゃないけどな?自慢じゃないよ?ふふん。
いてっ、殴らないで殴らないで話進めるから!えっと、それで颯斗は、告白は若干申し訳なさそうにして断るんだけど、靴箱のラブレターは一応受け取るんだよ。しかも、適当にくしゃってしてカバンに突っ込むとかもしなくて、クリアファイルに挟んでさ。これだから王子とか言われるんだよなぁ。
で、俺はてっきりその手紙を持って帰ってるものだと思ってたんだけど……こないだ颯斗観察してたら、颯斗の奴、校舎裏のゴミ捨て場に向かったんだよ。ゴミ箱なんて教室にあるし、なくてもわざわざここまで来て捨てることなんてないはずだよなって、俺は首傾げて見てた。颯斗、別にゴミ捨て頼まれたって感じでもなかったし。
そしたら、颯斗、さ。カバンからクリアファイル出して、ラブレターつかみ出してさ。片手で可燃ごみの回収ボックス開けたんだ。で、次の瞬間、なんの迷いもなく、手紙をびりびりに破いた。ほんとに、もう原型なくなるくらい、細かくして。そうして、全部、小さくした後に何事もなかったようにボックスの鉄の蓋閉めて、去ってたんだ。俺のいた位置から見た颯斗は、全く無表情で、何を考えてたかは分かんなかったんだけど……でも、颯斗の独り言が聞こえたんだ。
「……何人が、僕のために死ねるのかな」
『……くだらない』。
温度のない声が続けて自ら否定して、その後颯斗はいつもみんなにしているように、にっこりと笑った。王子様の、爽やかスマイル。それはすぐに、前から人がやってきたからだと気がついて、俺も追いかけないとって思ったけど、すぐには足が動かなかった。
息が詰まった。あの、声が、瞳が、俺に向けられているわけじゃないって分かっても、颯斗のあの目が脳裏に焼き付いて離れなかった。
もう、颯斗は俺が見ていた小説の中の颯斗でも、漫画の中の颯斗でもない。今、この世界を『生きている』颯斗なんだ。動いて、話して、血の流れてる、漣颯斗という一人の人間なんだ。
そして、そんな彼と一緒にいる俺もまた、成瀬要という一人の人間なわけで。
だから分かる。
俺と颯斗の生きている世界は、颯斗に優勢な状態でできてる。生きている俺たちは、あたたかい血を体に流しながらも、多分原作世界を生きてる。
知らない間に、原作通りに事が進むことだって、ありえる。
「はは………そう簡単には、行かないってか」
クラスメイトに呼ばれながら、俺は冷や汗を垂らし、口元を歪めた。
原作の強制力vsモブ転生者の俺。
果たして、どっちが勝つんだろうな?
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