11 / 96
8
しおりを挟む「あ、その、助けてくれてありがとう……」
公園の蛇口で顔についた泥を洗い終えると、鬼頭さんは頬を掻きながらもう一度お礼を言った。眼鏡は完全にブリッジが折れて変形していたため掛けられなかったそうだ。あいつら弁償させてから帰らせれば良かった。これ大人だったら器物損壊、犯罪だからな?あのガキどもめ。
「いやいや、全然!!見ててただムカついただけなんで!!」
「僕は何もしてませんから。ほとんど要が……」
ちょ、颯斗何でそんな非難がましく俺を見んの??なんか勘違いしてね??俺戦闘狂じゃないからな??え?はてな多い?ごめん。
「………ぃ……」
一人心の中で喚いてたら、鬼頭さんが何か呟いた。「え?」と聞き返す間も無く、ガバッと両手を握られる。え、えええ?
「か、かっこいい!!!」
「……へ?」
アホ面を晒す俺にキラキラとした眩しい視線が突き刺さる。ぎゅっと握られた手はぶんぶんと上下に振られて何が何やら。え?え?何?何ですかこの俺得しかない状況は。
「かっこいい!!ヒーローみたいだ!」
尊敬の眼差しってこういうのを言うんだろうなってくらい見本のような目で俺を見る鬼頭さんは何度もかっこいいを連呼して手を握った。て、照れるなぁこれ……いくら自覚してる俺といえど、流石に正面きって言われるのは慣れないわ。
「僕、鬼頭薫!4年生なんだけど、君は……?3年生だよね?」
知ってます!
とは言えるわけないのでこちらもにっと笑う。
「そうです、俺は成瀬要って言います」
よしよし、ちゃんと自己紹介できたぞ。今の俺は5歳の時とは違うんだ、どや。
「要君……ふふ、要君かぁ~!!」
ぎゅっ。
にへら、と蕩けるような笑みを浮かべながら鬼頭さんが俺に抱きつく……え、抱きつく??
ぎゅっ、と背中に回された手が俺の体をホールド。
は?めっちゃ甘い良い匂いするんだが??
誰か説明求むとか思ってたけどもうどうでもいい何この可愛い生き物。眼鏡かけてないから素顔が丸見えなんだが、綺麗すぎるお顔が、もう、もう直視できない!
色白いし、目が大きいし、口が小さい!本当にこの子鬼頭組の若頭で学園で不良共の頂点に立つ最恐の男と同一人物なの??同姓同名の他人じゃね?どこが悪役なのか誰か2字以内で説明しなさい。
あまりの美と可愛いの暴力で俺はすっかりデレデレしてしまい鬼頭さんを抱きしめ返そうとすると、突然パッと鬼頭さんと俺の距離が離れた。ちょっとショック。別に下心とかないからな!!……嘘、ちょっとあったわ。
ええ……と思いながら目を向けると、にっこり笑った颯斗が俺と鬼頭さんの間に割り込むように立っていた。
「……僕もいるんですけど?」
顔は笑っているが目が笑っていないし、何だかオーラがドス黒い。つまり何が言いたいかというと、めちゃ怖い。急いで弁明。
「あっ、ご、ごめん颯斗!!忘れてないから!な!?」
ごめん、正直ちょっと忘れてた。でも安心してくれ、俺の中の最推しは永遠に颯斗だから!!
「要に聞いてないよ。それと、要は要ですぐに突っ込んでいくのやめて」
「アッ、ハイスミマセン」
笑顔で秒殺された。なんか最近颯斗ってやけに俺が他の人と話してたらめっちゃ見てくるんだよなぁ。もしかしてヤキモチ!?ヤキモチなのか!?……いや、颯斗に限ってそれは無いか。俺友人として認知されてるかまず微妙だし。う、自分で言っておいて悲しくなってきた。
「……ああごめんね、見えなかったや。一応君の名前も聞いて良い?」
おやぁ??
険悪な雰囲気の颯斗に鬼頭様なら寛大な雰囲気と癒しパワーで丸め込んでくれるかなーなんて思っていたら、一転して鬼頭様がナチュラルに煽った。多分お茶飲んでたら吹いてた。
え、何なの?急にこんなところで悪役属性芽生えたとか……!?
主人公VS悪役とか、破滅そのものなんだが??
ちょっ、そのままの君達でいてくれほんと!!
144
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~
いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。
※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します!
※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる