俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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とりあえず俺は、まず颯斗の子供心を引き出すことにした。


 

 ってことで、害虫ごっこを何とか回避していろんな遊びをやってみたんだが、まあ見事にことごとく失敗。



 鬼ごっこ、かくれんぼ、縄跳び、はないちもんめ。まあ色々やった。ってか最後のは二人でやるもんじゃないね!!提案して気がついたんだよな、あれ俺ってもしかして馬鹿なの?遊びのセンスなさすぎた。



 いや、別に颯斗が見るからにつまんなそうにしてるとかじゃないんだよ。


 ちゃんとにこにこしながらやってくれるんだけどね?目があんまり生き生きしてないんだよなぁ。



 その後もままごととかしてみたんだけど、俺の事情でもうそれは封印したい。いや、中身23歳でおままごとはキツいよ。知ってる?記憶ある状態で人形持って裏声出したりするの、ちょっと恥ずかしいんだからねっ!!


 しかも今更だがやっぱ颯斗はおかしい。推しにこんなこと言うのもあれだが、おかしい。だって俺のままごとでの役、歳取った犬とかなんだもん。老犬だよ、老犬。ちなみに颯斗はそんな俺を飼っている殺し屋役である。殺されないだけ現実よりマシだが、うーん、これ誰得設定?俺ヨボヨボしながら時々ワン…とかいうだけの役だし、颯斗はターゲットの人形(声:俺の裏声)を殺すだけだし。俺が思ってたおままごとと違うんだが???


 颯斗、想像力あるからこういうごっこ系好きそうだと思ってやってみたけど、普通にこれは教育に良くないので本当にやることがない時以外禁止にした。うん、年上とかくだらないプライドみたいなこと言って遊びを颯斗に任せるのはダメだな!



 そんなこんなでウンウン唸って遊びを考えていると、その日はあっという間に時間が来てしまい颯斗帰宅。結局颯斗の童心を引き出すことはできなかった。

 だが俺は諦めない。



 翌日から俺は、颯斗の元を毎日訪ねた。家、結構近くて徒歩圏なんだよ。





「はーやーとっ!」






ある時は室内で神経衰弱。





「はやとー!!」





またある時は公園で砂遊び。





「はやとっ!!」





 ある時はだるまさんが転んだをした。それはもう毎日毎日、仲良いねぇ、と母さんと颯斗ママに言われるくらいにはしつこく家のベルを鳴らしに行った。多分俺ならキレてる。



 しかし、颯斗はいつも、俺が来ても嫌そうな顔はせず一定の笑顔を浮かべたままだ。会話には付き合ってくれるし、遊びにもちゃんと参加してくれる。でも、心は開いてない感じ。たまに温度のない目で見てくる時あるし。颯斗に取って俺は今のところ、ただの暇つぶしみたいなもんだろうな。




 だが、俺だって何も考えなしに毎日遊びに誘っているわけではない。ちゃんと毎回颯斗の反応を観察して分析しているのだ!その結果、俺は閃いた。






「これだ!!!」






 颯斗は、屋外での遊びをする時めちゃくちゃ運動神経が良くて大抵俺に勝ってしまう。小説の中でも確か颯斗の部屋に小、中、高と大会で取った賞が置いてある、という描写があった。まあ、恋人が死んじゃってそれも全部颯斗は壊してしまうんだけど。




 話を戻そう。つまり、ここは学生の定番、スポーツで人間性を育むのが正しいのでは!?ということが言いたい。




 よくあるじゃんか、スポーツ漫画とかで。こう、やる気を育んでさ、そこから熱い友情が生まれるやつ。あれだよ、あれ。これなら颯斗も熱中できるのでは!?俺に足りなかったのはスポーツだったんだな!




 次の日、俺は意気揚々と颯斗の家に行った。





「はやとー」





「あっ、かなめ。きょうはなにする?」





 毎日来る俺に颯斗も慣れたもので、得意の王子スマイルを浮かべながら出てきてくれた。優しいなぁほんと。よし、そんな優しい颯斗にはあの伝説のセリフをやろう。









「はやと!やきゅうしようぜ!!」








……………………。








降りる沈黙。






 ふっ、流石の颯斗も伝説のこの台詞には勝てまいっ!















「かなめ」







「ん?」















「やきゅうはふたりじゃむりだよ」













天を仰ぐ。










嗚呼。







そうか。








俺に足りないのはスポーツじゃなくて友達だったのか。














…ってことで今日も今日とて、失敗。てへぺろ。
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