星降る夜に

たたり

文字の大きさ
上 下
17 / 24

呼び出し

しおりを挟む
薫と清二が地域の商店主たちと協力し、桜井家の茶屋は次第に繁盛し始めた。

地域のイベントや共同プロジェクトが功を奏し、茶屋には多くの客が訪れるようになった。

商店主たちも桜井家の茶屋を応援し、一丸となって藤田家の圧力に立ち向かった。

薫は忙しくなった茶屋での日々を充実感を持って過ごしていた。

清二もまた、薫と共に茶屋の運営を手伝い、取材記事を書きながら茶屋の魅力を広めることに尽力していた。

そんなある日、清二の元に一本の電報が届いた。

東京の新聞社からの緊急連絡だった。

内容は簡潔でありながら重みのあるものだった。

「清二、至急東京に帰ってこい。重要な取材がある。」

清二は電報を読み、驚きと不安が入り混じった表情を浮かべた。薫はその様子に気付き、「どうしたの、清二さん?」と心配そうに尋ねた。

清二は電報を見せながら、「東京の新聞社からの緊急連絡だ。至急帰らなければならないみたいだ。」と説明した。

薫は一瞬言葉を失い、その後、小さな声で「それは…急がなければならないのね。」と。

彼女の目には不安と悲しみが見えたが、清二の決断を理解しようとする強さも感じられた。

清二は薫の手を握り、「薫さん、僕は一度東京に戻らなければならないけれど、必ず戻ってくる。君と、この茶屋を守るために。」と約束した。

薫は涙を浮かべながらも、「清二さん、待っています。必ず戻ってきてくださいね。」と答えた。

その夜、清二は修蔵に事情を説明し、翌日の朝一番の船で東京へ戻ることを決めた。

修蔵も清二の決断を尊重し、「君の使命を果たしてきなさい。そして、またここに戻ってきてくれ。」と送り出した。

翌朝、薫は早朝に清二を見送りに来た。

二人は茶屋の前で別れの挨拶を交わした。

清二は薫を強く抱きしめ、「必ず戻ってくるから、それまで頑張って。」と励ました。

薫は涙をこらえながら、「清二さん、気をつけてね。私たちも茶屋を守り続けます。」と答えた。

清二は函館港から連絡船に乗り込み、薫に手を振った。薫も手を振り返し、船が遠ざかるまでその姿を見送り続けた。

青森で船から汽車に乗り換える。東京へ向かう汽車の中、清二は自分がやるべき使命について思いを巡らせた。

薫との約束を胸に、彼は全力で取材をこなす決意を固めた。

一方、薫は清二の不在に寂しさを感じながらも、茶屋の運営に力を注ぎ続けることを誓った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

星降る夜の騎士との出会い

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:10

妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,242pt お気に入り:3,831

星の降る夜君に恋をした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:8

【完結】私がお邪魔だと思われますので、去らせていただきます。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,796pt お気に入り:3,267

婚約破棄された《人形姫》は自由に生きると決めました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:75,359pt お気に入り:936

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:153,505pt お気に入り:5,810

「泥棒模様の天使ちゃん」

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:6,277pt お気に入り:47

処理中です...