星降る夜に

たたり

文字の大きさ
上 下
12 / 24

決意

しおりを挟む
薫と清二の関係が進展する中、藤田隆一との見合い話が現実味を帯びてきた。薫の心は混乱していたが、彼女は自分の気持ちに向き合う決意を固めていた。

その日、薫は修蔵に呼ばれ、茶室へと向かった。茶室に入ると、修蔵は厳しい表情で座っていた。薫は緊張しながらも、父親と向き合った。

「お父様、お呼びですか?」薫は静かに尋ねた。

修蔵は薫を見つめ、「薫、藤田家との見合い話を進めることにした。今週末に会う準備をしておけ。」と言った。

薫の心臓が高鳴り、冷たい汗が流れた。しかし、彼女は覚悟を決めていた。「お父様、申し訳ありませんが、私はその見合いを受け入れることができません。」

修蔵の顔が一瞬険しくなった。「何を言っているのだ、薫。これはお前の将来を考えてのことだ。藤田君はお前にふさわしい相手だ。」

薫は目を閉じ、深呼吸をしてから続けた。「お父様、私には心に決めた人がいます。それが清二さんです。」

修蔵の顔がさらに険しくなった。「清二君だと?あの東京の新聞記者か?彼とは何の未来もないぞ。お前の幸せのために、藤田君との結婚が最善なのだ。」

薫は父親の厳しい言葉に心を痛めたが、引き下がるわけにはいかなかった。「お父様、私は清二さんと過ごす時間がとても幸せです。彼は私の心に響く存在です。私は彼と共に未来を歩みたいのです。」

修蔵はしばらく黙り込み、やがて重い声で言った。「薫、お前の気持ちは分かった。しかし、家族の名誉と伝統も大事だ。お前が本当にそれを理解しているのか?」

薫は涙を堪えながら、「お父様、私は家族のことを大切に思っています。しかし、自分の気持ちも大事にしたいのです。どうか、私の決意を理解していただけませんか?」と懇願した。

その時、茶室の扉が静かに開き、清二が姿を現した。彼は修蔵の前に深々と頭を下げた。「桜井さん、失礼します。私は山田清二です。薫さんと共に未来を歩む覚悟があります。どうか、私たちの気持ちを認めていただけませんか?」

修蔵は驚きながらも、清二を見つめた。「清二君、お前も本気なのか?」

清二は真剣な眼差しで答えた。「はい、薫さんを心から愛しています。彼女の幸せを一番に考え、共に未来を築いていきたいのです。」

修蔵はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。「分かった。お前たちの決意が本物であるならば、私も考えを改めよう。しかし、薫の幸せを第一に考えることを誓ってくれ。」

清二は深々と頭を下げ、「誓います。薫さんの幸せを一番に考え、共に生きていくことを。」と答えた。

薫は感動し、涙を流しながら清二に微笑んだ。「ありがとう、清二さん。お父様、感謝します。」

修蔵は静かに頷き、「薫、お前の幸せを願っている。お前たちが本当に幸せになるなら、それが私の望みだ。」と告げた。

薫と清二は手を取り合い、互いの愛を再確認した。彼らの決意が固まったことで、未来への道が開かれた。これからの困難を乗り越えながら、二人は共に歩むことを誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

気が合わない許嫁同士だったはずなのに

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【喧嘩ばかりの許嫁同士がとった最終手段は……?】 子爵令嬢アメリア・ホワイトと同じく子爵令息ニコル・ブラウンは両家が決めた許嫁同士。互いに二十歳になった暁には結婚することが義務付けられていたのだが、この二人会えば喧嘩ばかりだった。そこでこの状況を打開すべく、アメリアはある行動を取ることに…… *他サイトでも投稿中 * 前後編のショートストーリーです

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

処理中です...