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アイリス・イン・ナイトメア

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「アイリス。僕たちのように肉体を捨て去り魂だけの存在となった今の君には、あの残酷な元の世界を下敷きにして二次的な世界を構築する創作の力が備わっているんだ」

「二次的な世界……? 虹創作……?」

「そう。その世界はこれまで生きてきた世界とは異なり、君が思い描くままだ。誰に何を言われることもなく、誰に憚ることなく、君を主役とした物語がね」

 つまりそれが夢を見るということなのだろう。
 まるで明晰夢みたい。

「……本当にそんなことができるのね」

「ああもちろん可能だよ。例えばリディアを筆頭に、君をこんな風にした連中に仕返しをしてざまぁみろと笑ってやってもいい。あるいは原作オリジナルにはいなかった登場人物を夢想して、そのキャラクターと新たな恋をしてもいい。まさに自由だ」

 そう言われると悪い気はしない。
 原作とやらのあたしは酷い最期を迎えたんだし、せめてこれくらいのご褒美はあってもいい気がする。
 どうせつかの間の淡い夢なのだから。

「だからアイリス」「聞かせておくれ」「君が」「どんな」「夢」「を見たいのかを」「僕たちは」「それを手助けしよう」

 目の前のこいつ――アリスから、いくつもの声が無機質に問いかけてくる。
 人豚の本質を。胸中に抱いたある願望を。

「「「「さあ、僕たちのアイリス」」」」

 重なり合う言葉。
 まるで催眠をかけられたようにそれに背中を押されたあたしは――。
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