上 下
14 / 51

14

しおりを挟む
 妹にアルフレッドを奪われてから完全に私たち姉妹の関係は破綻した。
 だからもう、我慢することはやめた。
 両親もどこまで事情を把握しているかはさだかではないが、なにも言ってこないのでなにか話を振られない限りは妹を無視している。
 もっとも話を振られたところで、一言も返さず顔を背けて終わりだが。
 
 今ではお互い同じ家に住むだけの他人、いや、公爵家に巣食う卑しい豚にしか思ってはいない。
 身なりに気を遣わずぶくぶくと太って、本当に醜い豚。
 あいも変わらず周囲の人間はあれを過剰なまでに甘やかすけれど、端から見れば飼われる愛玩動物そのものだ。あるいは家畜。

 本当はあんなのともう一緒に暮らしたくないがしかし両親の庇護下にある以上、それもできないのが現状だ。
 ゆえに私に残された最後の砦はヴァンディール家嫡女としての権利。
 これだけは絶対に死守しなければならない。

 そして私が家督を継いだら、あの豚は即刻追い出してやる。
 我ながらささやかな復讐だとは思うが、された仕打ちを考えればこのぐらいして当然だろう。 
 むしろ殺さないだけ温情があるとさえ言える。

「そういえば今度王家主催の晩餐会があるらしいわねぇ。王城から招待状が届いていたわよ」

 と、自宅一階のテラスでくつろいでいたお母様が今思い出したかのように話題を切り出した。
 私は二階のバルコニーから静かに耳を傾ける。

「それ、あたしがアルに頼んでおいたやつだ! ふふ、彼ったらあたしのことが好きでたまらないみたいね。ちょっとお願いしたらすぐに行動してくれるなんてホントあたしって愛されてるぅ~」

 眼下でその巨体に似合わずにくねくねとしなをつくる妹に吐き気すら覚える。

 なにがあたしって愛されてる、だ。
 気持ち悪い、豚のくせに。
 お前が媚びたところでなにも可愛くないのに。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します

恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢? そんなの分からないけど、こんな性事情は受け入れられません。 ヒロインに王子様は譲ります。 私は好きな人を見つけます。 一章 17話完結 毎日12時に更新します。 二章 7話完結 毎日12時に更新します。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。 私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。 ある日、そんな私に婚約者ができる。 相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。 初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。 そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。 その日から、私の生活は一変して―― ※過去作の改稿版になります。 ※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。 ※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...