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「ええ、まあそうね……」

「お会いするのが楽しみですわ。生徒会長であるリディア様のご家族でしたら、きっと素晴らしいお方に違いありませんもの」

 フィーリアの口から妹の名前が出た瞬間、私は複雑な気分になる。
 
 やっぱりそんな風に思われてるのね……。

 おおかた日頃の私の姿を見ての発言なのだろうが、実際の妹を見たらはたしてどのよ反応をするのだろうか。

 社交的な性格ではなかった妹は貴族の集まりに出たがらず、基本的には他家との交流がない。
 よって彼女の存在自体は知られているものの、肝心の本人そのものはフィーリアのようにろくに見かけた者がいないのが現状だ。

 だからこそ小耳に挟んだ話では、どうやら妹は病弱で儚い、まさに深窓の令嬢だと思われているようだが、正直、見当違いも甚だしいとしか言いようがない。
 深窓の令嬢なんて、妹とはもっとも程遠い言葉だというのに。

 むしろ本当は――。
  
「ちょっとアンタ、そこどきなさいよ! たかが準男爵令嬢ごときが公爵令嬢であるあたしの通学の邪魔をしてるんじゃないわよ!」

 嫌というほど聞き覚えのある金切り声にビシリと凍りつく。
 声のした方向に顔を向けると、案の定そこにはよく見知った巨体――くだんの妹がいた。

「道の真ん中を歩いて邪魔だったらありゃしないわ。それともなに、もしかしてアンタわざとこのあたしに嫌がらせしてるの?」

 同世代の女子と比較しても一回りも体が大きい妹は、なにやら小柄な女子生徒に絡んでいるようだった。

「い、嫌がらせなどそのようなつもりはまったくございませんわ。わたくしはただ普通に通学路を歩いていただけですのよ。それを邪魔だと申されましても……」

 一方的に因縁をつけられている女子生徒はここからでも分かるほど萎縮し、すっかり怯えきっている様子で、かろうじてそう返している。
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