浮気現場を目撃したら婚約者の王子から婚約破棄をされましたが大丈夫、あなた方以外みんな私の味方ですので!

日々埋没。

文字の大きさ
上 下
4 / 13

04

しおりを挟む
 ~ナターシャside~

 しがない男爵家の長女として生まれたわたくしは、幼い頃からお母様にもっと上を目指しなさいと口を酸っぱくして言われながら育った。

 男は自分より学のある女を嫌う、だから貴方も頭の悪い女性を演じなさい、それから女の武器にくたいを駆使して相手を逆に籠絡してやるのよ――それがお母様からの教えだった。 
 
 だからわたくしもその教えに従い、媚び売りの練習と、いざという時のための閨事ねやごとの勉強を怠らなかった。

 嫁に出るしかない貴族令嬢が上に行くためにはより偉い立場にあり、なおかつぎょしやすい殿方を捕まえる必要があったが、そのためには性的誘惑――ハニートラップは極めて有効的な方法であるからだ。

 しかしわたくしにはある重大な欠陥があった。
 
 それはこの女としては未成熟な体つきだった。
 ともすれば女児と見紛みまごうほどに幼い体では下手に露出の高いドレスを着ようものなら、かえって背伸びをしたがる子供を彷彿とさせるだろう。

 ゆえにわたくしは殿方を引っ掛ける手段として早々に色じかけは諦め、その代わりに愛嬌があり小動物のように可愛らしい女の路線で行くことにした。
 これならば相手に警戒されずにベタベタと肉体接触を謀りやすい。

 女性から好意を匂わせるようなスキンシップを取られ、それを嫌に思う殿方はまずいない。
 そしてその点ではこの国の第一王子バイドルはまさに適任と言えた。

 端正な顔立ちともてはやされるバイドル王子の裏の顔、もとい悪評を知らないわけではない。 
 婚約者がいながら女遊びの激しい王子、それは貴族令嬢の中では割と共通の認識であり、実際に彼と関係を持った令嬢は数しれないという。

 ただ実情までは詳しく知られていない。
 さすがに醜聞を恐れる令嬢からすればみだりに王子との爛れた関係を暴露するわけにはいかず、また貴族令嬢としてのプライドから手酷い振られ方をしたなどと喧伝けんでんする者はいないからだ。

 おかげで被害者は増えに増え、今では彼の誘いに乗るのは脳内お花畑な世間知らずか、側室入りを目指す野心家くらいなものだ。

 けれどもわたくしは彼女たちとは同じ轍を踏むつもりはない。
 王子の懐まで潜り込むために貴重な処女性まで失ったのだ、絶対に彼をモノにしてみせる!

 でも幸か不幸か、わたくしと王子の浮気現場を件の婚約者に見咎められるという事態に陥った。
 その時はこれでわたくしの夢も潰えたかと落胆しかけたものの、なんと王子はまさかの婚約破棄をその婚約者――イーリスに告げたのだ。

 つまり彼は婚約者の彼女ではなくこのわたくしを選んだということ。
 であれば必然的に新たにわたくしと婚約を結ぶ意志があるに違いない。
 これまでの努力がついに報われた瞬間だった。

 捨てられたイーリスには悪いけれど、可哀想な貴方に代わってあの男はせいぜいわたくしが利用し尽くして、上流階級をのし上がってやるのよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。

キーノ
恋愛
 わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。  ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。  だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。  こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。 ※さくっと読める悪役令嬢モノです。 2月14~15日に全話、投稿完了。 感想、誤字、脱字など受け付けます。  沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です! 恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

死に戻るなら一時間前に

みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」  階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。 「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」  ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。  ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。 「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」 一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

婚約者が聖女様と結婚したいと言い出したので快く送り出してあげました。

はぐれメタボ
恋愛
聖女と結婚したいと言い出した婚約者を私は快く送り出す事にしました。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

処理中です...