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5巻
5-2
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晩餐会は無事終了し、庇護者――恋人達とマテリオが俺の部屋に集まった。
「早速だけど、経緯を教えてくれるか?」
みんなの顔を見ながら口火を切る。マテリオとの関係を明かした時は、あんなに険悪だったのに。今はなんだか変な雰囲気だ。
「それほど難しい話ではない。三人共、マテリオのことは薄々気がついていたのだ」
「何それ?」
「殿下、私は疑われるようなことは何もしておりません」
否定するマテリオ。確かに恋愛感情を向けられたり、二人きりの時にエッチな雰囲気を醸したりというのはなかったと思う。だから俺も友人だと思ってた訳でさ。本人だって、極限状態に陥って初めて気づいたと言っていた。
「いーや。俺は交玉事件の前から怪しいと思ってたね」
「私は、気づいたのは最近ですが、それまでの薄っすらとした違和感が全部腑に落ちました」
本人より周囲のほうが敏感に感じ取っていたってことか。
「でも、マテリオと、その……そういう関係になったこと、みんな怒ってただろ?」
「多少はな。だが一番困惑したのは、二人の香りが違ったからだ。だから……私達の香りも加えていいか?」
香りか。エルビスはマテリオとシた後の俺達を『甘い花の香りで、尚かつ官能的です。エキゾチックで、劣情を湧き上がらせるような香りですね』と言っていた。ダリウスも他の二人との後は『安らぐ甘い香りだ』と。そんなに違うんだろうか、自分じゃ分からない。
「このままじゃ俺達、眠れそうにないしな」
「少しだけです、ジュンヤ様。お願いです」
真剣な瞳で見つめられ……でも、それって、三人で致すの?
「あの、三人同時はつらいって……」
「マテリオがいればエンドレスでやれるんだろ?」
「ダリウス!」
「冗談だ。キスでいい。再会してからまだ一度もしてないぞ」
そうだね、みんなとしてない。エッチだって、一人一人と向き合って愛し合いたい……
って、うわっ! 何考えてるんだ? 恥ずかしい!
「何エロい顔してるんだ?」
「そんな顔してないって!」
「してる。顔も赤い。セックスする想像したのか?」
「エロ団長め! あの、さ……ちゃんと、一対一でシたいだけ……」
俯いて白状すると静まり返った。
「ダメだったか……?」
「「「とんでもない!」」」
一斉に否定の言葉が返ってくる。
「一対一で可愛がられたいのだな? 望み通りじっくり愛してやろう」
「しばらく滞在することになったし、たっぷり可愛がってやるぞ?」
「そのままご一緒に眠っていいですか?」
「いいよ。その、俺もイチャイチャしたい……」
みんなの変なスイッチを入れてしまいました……‼
でも、うん。複数プレイは回避できた。そういえば、マテリオは沈黙している。顔を見ると、目が合ったのに逸らされた。
「みんな、マテリオを虐めたりしてない?」
事情聴取で俺だけが席を外した時、何かされなかったか、ずっと心配していたんだ。
「ジュンヤにとって、マテリオはどういう存在だ? 恋人か?」
俺の問いに答えはなく、ティアがどストレートな質問を投げてきた。
「えっ、それは……」
難しい質問だ。恋人? 友人? 境界線が曖昧だ。でも、相手がマテリオじゃなかったら受け入れなかった。
「友人だと思ってたし、こうなったことを後悔して離れていかれるのは嫌だ。正直、はっきり言えないんだ。曖昧で悪いと思ってるけど」
俺が言うと、ティアがボソリと呟いた。
「ふむ。自覚がないのか」
「ん? 何が?」
「エリアス、あんまり突っ込むな。俺達にはそのほうが好都合だろ?」
ダリウスが割り込んでくる。
「そうです、そのままでいいではないですか」
「エルビスまで……なに?」
よく分からないが、マテリオは友人の中でも特別だし、いなくなってほしくない。それに、あいつになら抱っこされても嫌じゃないし……
「ジュンヤ、これ以上の話は後だ。今は再会のキスがしたい」
ティアが近づいてきたので目を閉じる。ああ、ティアの香水の香りがする。久しぶりだ。
無意識に手が伸びて抱きしめ返していた。座ったままの俺に覆いかぶさるティアの熱い舌が滑り込んでくる。
「ん……」
熱くて甘いティアの舌が俺のに絡んで、夢中でそれに応えた。甘い……
「ぁ……」
堪能していたいのに、ティアが体を引いて俺から離れてしまう。
「もっと……」
追い縋ると再びキスしてくれて、何度も舌を擦り合わせた。名残惜しいのに、また離れてしまう。
「なんで?」
「皆、待ち遠しいんだ。次はダリウスにしてもらえ」
ダリウスがティアと入れ替わり、分厚い舌が俺の舌を搦め捕る。
「ふっ……んんっ! ふっ……あっ、触っちゃだめ!」
キスに夢中になっていると服の下に手が滑り込んで、乳首を摘まれてしまった。
『ここじゃ……やだよ。二人の時、シて……?』
耳元で囁くと、ダリウスの肩がビクッと震えてまたキスが降ってくる。
「んん……んくっ……ん……」
流し込まれた甘い唾液を飲み込むと、体の奥がジンジンした。
「はぁ……この小悪魔め。後でたっぷり啼かせるからな?」
「うん」
ダリウスが引くと今度はエルビスだ。
「今は、恋人の時間ですよね?」
「俺はいつだって恋人のつもりだよ?」
「ジュンヤ様っ」
「んんっ! ん、ふっ……うぅん。はぁ……心配させてごめん」
「やっと……キスできました。本当に、無事で良かった」
エルビスが落ち着くまで頭を撫でてやる。三人が冷静さを取り戻したところで、ティアがマテリオを呼んだ。
「さて、マテリオよ。この中に加わった証明をするのだ」
「証明とは、どのようなことでしょう」
「そなたもジュンヤに口づけを。我々に、お前もまた真の庇護者だと証明してほしい」
みんなが見ているのにマテリオとキスだって?
「しかし、こんな、人前で」
うん。マテリオは人前でできるタイプじゃないと思う。困惑するのは当然だろう。
「ティア……おれ……もう、変になってるから、同じだと思うよ?」
三人とキスしたから、とっくにエッチな気分になっている。
「認めはしたが、確認したい」
「お二方も同意見ですか? その……そのような行為はいかがなものかと思いますが」
マテリオは珍しく動揺している。だが、ダリウスとエルビスもティアに同意し頷いた。
「おれも……はずかしい……」
「なんだよ、俺達とするのを見られるのは平気だろ?」
「なんか、マテリオは……恥ずかしいんだよ」
「ぐぅっ! 可愛くて腹立つ! マテリオ、一発殴らせろっ!」
「ああ……ジュンヤ様、なぜそんなに可愛いのですか?」
「伴侶とするのは阻止すべきだったか……? 判断ミスか……?」
まともなのはマテリオだけ? みんな変だが、俺はもっとおかしい。早くキスの続きをしてほしいのに。
「ティア、早くキスしたい……」
「マテリオとしてからだ。その後は……今夜は私と閨を共にしよう。嫌か?」
「いやじゃない。わかった……マテリオ、キスしよ?」
あれが最後じゃないよ……
俺が手を伸ばして手招きすると、マテリオはフラフラと近寄ってきた。
「良いのだろうか。もう、二度と触れないと覚悟を決めたのに」
「いいんだってさ。おれも、キスしていいよ」
迫るルビー色の瞳に吸い込まれそうだった。その首に手を回して引き寄せ、唇を触れ合わせる。それだけで、あの不思議な力がお互いの間に流れ始め、ザワザワと蠢いた。
「ん、んくっ……んん、はぁ、んん……」
流れてくる……俺の力とマテリオの力が混ざって、また戻ってくる。もっと、もっと……もう一度、マテリオの熱い肌に触れたい……
「「「そこまで!」」」
気がつけば、マテリオに縋りつくように自分の体を擦りつけていた。
肩を後ろに引かれ、俺達は突然引き剥がされる。
「なに……?」
「はぁ、はぁ……わ、私は、こんなつもりでは」
意識がはっきりすると、マテリオのシャツがはだけ、俺の服も乱れていた。それ、俺がやったのか? 少し意識が飛んでいたけど、俺達何をしたんだ~⁉
「そういうことかよ!」
「私達は大変な男を受け入れてしまったようだな」
「ジュンヤ様がとってもエッチに……!」
よく分からないが、俺達はこの短時間に我を忘れて求め合っていたらしいです。なんてこった!
「ジュンヤ。確かにマテリオは庇護者で間違いない。ジュンヤの心が受け入れているのも確かめた。だが、私達の想いもしっかり受け止めてもらうぞ?」
「は、はい……」
全力で三人のご機嫌を取ることが確定した。お手柔らかにお願いします……
ティアを残してみんなが出ていく。二人きりになり、ティアの膝の上に向かい合う形で座った。たまにはこうやって甘えると喜ぶと思ったからだ。
「マテリオを認めたこと、後悔してるのか?」
「正直、少し後悔している。あんな可愛い顔をマテリオに見せて……! 本当は独り占めしてしまいたいのに」
ギュッと抱きしめられ、ディープキスで舌を搦め捕られる。
「ごめんな。俺、どんどんいやらしくなって怖いよ。……今も、すごく、シたい。ティアに抱かれて、一緒にいるんだって感じたい」
「アユムから、ジュンヤは愛されるほど神力が強まると聞いた。だから、愛されて乱れるのは良いことなのだ」
「良いこと……?」
触れられるだけでゾクゾクしてしまうのも、キスだけで抱かれたくなるのも、神子の力のせい?
「ああ。私達の絆が深くなるほど、快楽は大きくなる。乱れるのは愛し合っているからで、決して恥ずかしいことではない」
愛し合っているから。こんなにも求めてしまうのは、俺達の絆の証。俺がいやらしくても、乱れても、みんなは受け止めてくれる。
「クードラでティアが襲われたって聞いた時、すごく怖かった。その後もまたはぐれて不安だった……。今こうしているのが現実だって感じたいから、抱いてほしい」
「良いのか?」
「うん。心配させた罰を受けてもいいよ。縛る? 俺を縛っていいのは、ティアだけだから、お仕置きしてもいいよ」
「――っ」
ティアは俺をガバッと抱き上げ、ベッドになだれ込んだ。
「ん、ん、んぅ」
「そんな風に可愛く誘われたら、期待に応えねばな」
執拗に口内を蹂躙するティアの舌が愛おしくて仕方がない。
「ティア、もっと」
「ふふ……いやらしくて可愛い。もっと欲しいんだろう?」
「うん……ナカにも、きて。今日は縛らないのか?」
「必要ない」
ティアは荒々しく俺の服を脱がせにかかった。俺も待てずにティアのボタンを慌ただしく外し、脱がした服を放り投げる。その間もキスを繰り返し、荒い吐息が混ざり合った。心配させてしまった。だから、俺を好きにして。
全てを剥ぎ取ってピッタリと体を重ねてキスしながら、互いの体を弄り合う。滑らかで薄っすらと汗の滲む肌が、手のひらに吸いつくようだった。
このまま一つに溶けてしまいたい……
激しいキスで息も絶え絶えの俺を宥めるように、ティアは首筋から順に舐め甘噛みを始めた。時折吸いながら舌と唇で愛撫され、気持ち良さに吐息が漏れる。
「ぁん……ティア、俺もシたい。ティアに触りたい」
「嬉しいが、今はジュンヤを味わいたい。どこもかしこも果実のように美味だからな。食べてもいいか?」
そう尋ねながらも愛撫する手は止まらず、ゾクゾクと快感の波に襲われる。
「あ、ぁ。たべて、いい。ティア、あ……」
「では、遠慮なくいただこう」
「あんっ! いきなり! ひぁっ」
突然乳首に吸いつき、甘噛みしながら反対側の乳首もクリクリと転がされた。
「ふぁ、あ、あっ、あぁ」
きもちいぃ……もっと舐めて、噛んで……
あまりの気持ち良さに、胸をティアに押しつけてしまう。
「乳首を舐められるのが好きか?」
「すきぃ、ぁん……あ、早く、ナカにきて」
「随分せっかちだな。もう交玉を挿れていいのか?」
「うん……」
めちゃくちゃいやらしく誘っている自覚はある。でも止められない……はやく、奥まできてほしい。繋がって、もっと直接ティアを感じたいんだ。
棚から香油と交玉を取り出すティアを見つめながら、ゆっくりと脚を開く。恥ずかしいけど、俺も求めてるって伝えたかった。
ティアが唾を呑み込む音がした。俺を見下ろす金の瞳が欲望に支配されているのが分かる。
嬉しい……。どんなにいやらしくなっても見捨てられたりしないんだ。
香油を纏った指が中に埋め込まれる。ユーフォーンに着くまでにマテリオに散々に拓かれたそこは、簡単に交玉を呑み込んだ。むしろティアの指を喜んで受け入れている。もっと深くに来てと伝えたくて、腰を揺らした。
「あぁん、ん、はぁ」
「随分と柔らかいな。こんなに嬉しそうに吸いついて腰が揺れているなんて、マテリオにどれほど抱かれたんだ?」
「あ、あぅ……んん……そんなこと、言っちゃ、やぁ、あっ、あぁ」
「ここに、何度注がれた?」
「ぁん……やだ」
回数なんて分からない。だって、何度も何度も……いや、馬車で隠れて移動する間はずっとマテリオがナカにいて、隅々まで愛撫され続けていたなんて、言えない。
「言うんだ。教えてくれ。どんな風に抱かれた?」
「そんなこと、言えない! あっ、や、そこ、もっと……擦って。お願いだから」
良いところに触れたのに、わざと違う場所にずらして刺激される。
「ちゃんと教えくれたらシてやろう」
「うう……意地悪。……ずっと、シてただけ」
「どんな風に?」
続けろとばかりに内壁を擦られた。
「あぁっ、ん……後ろから、何度も、イきっぱなしで、突かれてた」
「ほう。あれも存外情熱的だな。では、溢れるほど注がれたんだな?」
「……ん、いっぱい中出しされた……。ティア、もう焦らさないでくれよぉ」
精一杯手を伸ばし、縋りついて引き寄せる。
「キスして、んっ、んんっ、はぁ……お願い……めちゃくちゃにして。ゆるして……」
「ああ、私もジュンヤを味わいたい。自分で膝を抱えるんだ」
自ら曝け出すように指示されて従うと、恥ずかしいところが丸見えだ。顔が熱い。
「目を閉じるなよ?」
腰の下にクッションを入れて固定されたせいで、交玉から溢れた潤滑油と香油でグショグショになった俺の陰茎がピクピクと震えているのがよく見える。あまりにいやらしい光景に、思わず目を背けた。
「だめだ。私達が一つになる瞬間を見ろ」
「はい……」
俺はティアに命令されるのが好きだ。この男になら支配されたいと思っている。切なく疼く場所に、ティアの熱く滾ったモノがグッと押し付けられた。
「ぅう、はぁ」
待ち望んでいたものが挿入されると、自然と声が漏れてしまう。
「ティアのおっきいの、イイ……」
「しばらく私が愛さないうちにこんなになって。さすがに妬けるな」
「ごめん……」
「気にするな。他の者達を上回るよう可愛がるだけだ。こうして、な」
「あぁう! あ、あ」
ズンッと奥まで突かれ、たまらず声が出てしまう。
最初は小刻みな抽送だったが、すぐに大きなグラインドで責められた。ティアの獰猛な亀頭で隘路をこじ開けられ、内壁が熱く痺れるようだ。
「くっ、うぅ。そんなに締めつけて、これが好きか?」
「はぁ、はぁ……すき……。大丈夫だから、もっと、めちゃくちゃに動いて」
ティアの動きに合わせて腰を揺らし、もっと奥まで挿入るよう抱えた脚をぐっと引き寄せる。俺のナカを蹂躙するティアが出入りする度、ぬらぬらと濡れていやらしい。
「ティアも、きもちいい?」
「ああ……お前のナカは、熱くて、蕩けそうだ」
額に汗を浮かべているティアが髪を掻き上げた。些細な仕草がセクシーで胸がときめく。もっと気持ち良くなってほしい。
激しく肌がぶつかり合い、水音がいやらしく響く。
「ティア、あうっ! 縛っても、いいよ。あっ、ぁん」
「引け目なら、感じなくて、いい」
「そんな、じゃ……はぁ……っそれ、だめぇ」
入り口から最奥の窄まりまで何度も行き来して抉られると、ビリビリとした快感が走った。
「ダメじゃないだろう? こんなに蕩けた顔をして」
見逃さないぞとばかりに、至近距離でティアが俺の顔を見つめている。
「イッちゃう、から、待って……ゆっくり、シて」
「くっ……締めすぎだ。搾り取る気か? やめないから我慢せずにイけ」
「一緒がいい。いっしょに、イこ?」
「また可愛いことを言う。ああ、一緒にイこう。どこに出してほしい?」
「ひぁうっ」
ナカをグルリと掻き回され、ビクビクと体が跳ねた。
「奥……奥に来てぇ……」
最奥の更に奥を獰猛なカリ首が拓き、深々と串刺しにされた。ナカにティアの力が流れてくる。マテリオとはまた違う、擦れ合う部分からじんわりと伝わる、熱く優しい力だ。
「あっ、あー、はぁぁ……ぅうん」
体がビクンビクンと痙攣し、無我夢中でティアに縋りつく。ナカに熱い迸りを注がれ、快感に震えた。
ティアの、熱いの、きた……
「はぁっ、はぁっ、ジュンヤ、綺麗だ。私の、ものだ」
「おれは、ティアの、だよ。あぁ、熱いのイイ……」
注がれた精液から、ティアの力が体の隅々に染み渡っていくのを感じる。行為を繰り返すうちに理解できるようになった。
「いやらしい顔だ。そんなに、精液を注がれるのが好きか?」
「あぅ……ん……すき……もっと」
「次は後ろからだ。マテリオと同じ体位で抱いてやろう」
ズルンと抜かれて、ナカが寂しくて震える。
「ぬいちゃ、やだ」
「ふふ。淫らな神子は可愛らしい。愛しているぞ」
「ティア、おれも、シてあげたい……」
「何をだ?」
「王子様に乗ってもいい?」
見上げるティアの瞳がギラリと光った。次の瞬間には体勢が入れ替わり、ティアの膝に跨がって見下ろしている。艶を持った金髪がジュエリーみたいにティアを飾って、とても綺麗だ。だが、陶器のような肌の中心には凶暴な屹立が聳えている。
「これがさっきまで挿入ってた……」
そっと握ると、ピクリと震えて、先端から透明な雫が溢れた。
「もったいない……」
キスして舌で掬い取る。舐めるだけのつもりだったが、ティアを感じたくて口に含んだ。口蓋に先端を押しつけながら頭を上下すると、気持ち良さそうな吐息が耳に届く。
「ジュンヤ、それはしなくて、いいんだ……」
頭に手が乗せられ退かされそうになる。が、したくてやっているんだという証に、肉茎に舌を絡ませて愛撫した。わざと音を立ててしゃぶると、俺自身の興奮も高まっていく。
「うう……はぁ、ジュンヤ、早く、お前のナカに挿入りたい」
「もっとしたかったけど、俺も我慢できないや」
ティアの上で膝立ちになり、上向いた陰茎に手を添える。ゆっくり腰を下ろすが、気が急いているせいか、なかなかすんなり挿入らない。
「あれ、なんで……っ」
「ジュンヤ、無理しなくてもいいぞ」
「やだ。シてあげたい」
多分、イったせいで無意識に力が入ってるんだ……
呼吸を整え、息を吐きながら改めて腰を下ろしていく。すると、ようやく欲しかったものが挿入ってきた。
「ん、ふぅ……んん、はぁ、もう、少し」
ティアの腿に尻が密着し、全部が収まった。あまりの気持ち良さに我慢できず腰を揺らすと、ティアが楽しそうに笑う。
「いい眺めだ」
「ふふ。王子様は寝ていいよ」
お詫びのご奉仕タイムだ。ティアの胸に手をつき、ゆっくりと腰を上下させる。
「くっ……」
感じているのか、ティアは目を閉じて声を殺している。俺にリードされるなんて思ってもいなかっただろう。
締めつけながら腰を揺らすと、ティアが俺の腰に手を添え、リズムに合わせて突き上げてくる。
「はぁ、はぁ、ん、これ、好き?」
「ああ、イイ……」
いつも翻弄されてしまうから、じっくりと時間をかけて繋がっていると、愛しさが増す気がした。ティアの右手が俺の陰茎に触れ、ゆるゆると上下する。そんなことされたら、ゆっくりなんて無理なんだけど!
「それ、ダメ、ゆっくりしたい、んんぁ!」
強い突き上げに言葉が続かない。
「まっ、て……できな、く、ぅ」
必死に訴えると、閉じていたティアの目が開いて不敵に笑った。左手が俺の乳首をキュッと摘み刺激する。三ヶ所同時に責められ、動けなくなってしまった。
「あ、はぅ、や、俺が、シたい、のにぃ」
「お返しだ。されっぱなしでは、悔しいからな」
「あっ、はっ、はぁ、あ、あ」
ガツガツと突き上げられ、もう何も考えられない。
「ん、あぁ、や、イ、ちゃ……う。やめ、て」
「イけば良い」
「や、いっしょ、いっしょが、いい……あぅ!」
ティアが腹筋だけで起き上がり、俺を抱きしめた。繋がったところから衝撃が響く。
「私の首に手を回せ」
言われた通りに手を回し、ティアの鎖骨にキスした。自重でつながりが深くなる。
「深い、よぉ……」
宥めるように唇にキスして、ティアが突き上げを再開する。どこもかしこも触れ合っていて熱く、気持ちいい。
「ひぅ……あぁあ……ん、ん~~っ」
達してガクガクと痙攣する粘膜にティアの熱い精液を注がれ、快感と甘い力に溺れそうだ。
「あいしてる……」
「私も愛している。今日はここで眠っていいか?」
「ん。いっしょに、いたい」
あらゆる液でドロドロのまま抱きしめ合い、キスを繰り返す。
「ティア」
「なんだ?」
「おれ……守るから。負けないよ」
「……ああ。共に、戦ってくれ」
「ん」
優しいキス。愛している、好き……そんな言葉では表せない、かけがえのない人。
「ジュンヤ、もう一度、いいか?」
「嘘……まだ、足りない?」
ティアが俺の手を導いたソコは、早くも再々戦を望んでいた。
「うう、回復早いよ」
「今度は私が後ろから愛したい」
顔がカッと熱くなる。
「うん……」
「ふふ……淫らなジュンヤもいいが、恥じらう姿も愛おしいな。ジュンヤ、私を欲してくれ」
「ティアが満足するまで、シて……」
言葉にしたらすごく恥ずかしくなって、ティアの胸に顔を埋めた。
「私はこれまで酷い抱き方もしたのに、なぜ許してくれるんだ?」
確かに、お仕置きされたり縛られたりしたけど。
「みんなのために自分自身を犠牲にしてるから。俺には我儘を言って良いんだよ?」
目を閉じて唇を求め、情熱的なキスと愛撫に身を任せる。快楽に堕とされ、淫らな夜は過ぎていった。
目が覚めると、隣でティアが眠っていた。いつも先に起きているのに珍しい。じっくりと芸術品みたいな美貌を観察する。金色の睫毛は昨夜より光を放っているように見える。
思えば、最初からこのキラキラに搦め捕られていた気がする。ジッと見つめていると、瞼が開いて金色の瞳と目が合った。
「おはよ」
「おはよう……」
俺をグッと引き寄せ、ピッタリと肌がくっつく。
「ティア、待って! 俺、その。ドロドロだから……汚いよ?」
そう。グチャグチャのドロドロになるまで愛し合って、完全に力尽きた俺達はそのまま寝てしまっていた。だから、どちらのものか分からない色々なものがあちこちにこびりついている。
「汚くなんかない。愛し合った証だ。ふぅ……ジュンヤ、もう少しこうしていたい……」
「そっか……俺も」
キスして体を弄り合いながら、昨夜の延長のイチャイチャを楽しむ。俺の奥にはまだティアが注ぎ込んだものが残っていて、甘い疼きと力の循環を味わっていた。
「そういえば、クードラで一度襲われたんだよな? 怪我はなかった?」
「ああ。護衛がいたので私は無事だった。だが、ジュンヤを置いて逃げろと言われ……離れざるを得なくなった。ギリギリまで合流することを検討したのだが、すまなかった」
視察先での襲撃の件がずっと気になっていた。いつも冷静なティアが怒鳴っていたという報告があったし、かなり危険な状況だったはずだ。だけど、それ以上のことを説明してくれない。
「ああ、昨夜、ナカから出すのを忘れてしまった。出してやらないと」
「えっ? ああ、だめ。まだしなくていいよぉ」
誤魔化すように話題を変えた上、体を起こそうとするティアを慌てて止める。
「体内に残しておくと体調を崩すと聞いた。そんな状態にさせたくない」
「ん……それ、根拠はないけど、無理に出さなくても大丈夫な気がするんだ」
「どういう意味だ?」
ティアが心配そうに見つめてくる。神子は精液から力をもらえるから、具合は悪くならないと思う……なんて、恥ずかしい理由を言えるか? でも、多分これは言わなきゃ納得してもらえない奴だ。
「だって……ナカにあるのが、まだ力をくれてる。これまでも腹痛は起きなかったし、むしろ出さないほうが調子良いんだと思う……」
「そうなのか? では、もう一度抱いてもいいか?」
え、そっちに持っていく?
「あっ、エッチな触り方、だめ! 今日も仕事があるんじゃないのか?」
「ある。あるが……たまにはサボってもいいと思わないか?」
「そうだけど、今日はまずくない? まだディックのことも片付いてないし、バタバタするだろ。今度ゆっくりイチャイチャしよう? ……あっ⁉」
グルンと視界が回り、のしかかってきたティアに口内を散々に舐められ、唾液を流し込まれる。
これ、なし崩し的に致してしまう流れだ。
「んん……だめ、だ」
コンコンッ。
その時、外から扉がノックされた。気づいているだろうに、ティアは無視している。
コンコンッ……コンコンッ!
だが、相手もめげずにノックを続ける。さすがにまずいよな。少し強めにティアの胸元を叩いた。
「む……時間切れか。あれは多分ソウガだ。ジュンヤを湯に入れてやるつもりだったのに」
「俺は後でいいから、ティアもここで湯浴みしてから行ったら?」
「確かにこれでは行けないな」
ティアが改めて自分達の姿を確認し、苦笑する。
「このままのジュンヤも部屋から出したくない。こんな官能的で美しい姿、誰にも見せたくない」
コンコンッ!
「殿下、ソウガでございます。恐れながら、ヒルダーヌ様、ザンド様との会談の時間が迫っております」
扉の外から遠慮がちに声をかけてきたのは、やはりソウガさんだった。これだけ無視されてもノックをやめずに声もかけてくるんだから、本気の限界なんだろう。俺の王子様はたくさんの人に必要とされているから、仕方ない。
「仕事頑張って。俺は動けないけど、ティアは大丈夫か?」
「ふふっ……ジュンヤが乗って動いてくれたから大丈夫だ。また是非頼む。いつでも歓迎だ」
コンコンッ!
「殿下、どうかお返事をくださいませ」
甘い時間は、もう終わりだ。
「……ふぅ。ソウガ、起きている。こちらで身支度するが、準備はできているか?」
「はい。いつでもどうぞ」
「ジュンヤも綺麗にしてやりたいが」
「大丈夫だって。自分で拭くから」
エルビスを呼ぶと言うティアを止める。
「自分がエルビスなら、こんな俺を見たい?」
「ふむ……そうだな。では、ノーマとヴァインならどうだ? 一人で湯に入るのは無理だろう?」
「うん、そうしようかな。二人には悪いけど」
「それが彼らの仕事だ」
コンコン!
俺は上掛けで体を隠した。それを見て、ティアが扉のほうに顔を向ける。
「ソウガ、入っていいぞ」
ソウガさんが入室し、俺から顔を背けてティアの体を拭き始める。本当は数人がかりでやるそうだが、今日は俺がいるからソウガさん一人みたいだ。
「ジュンヤ。今日は無理をするなよ」
「ん。いってらっしゃい」
準備を整えて名残惜しそうに去っていく背中を見送り、自分の惨状を確認すると、顔に熱が集まる。今までは抱かれて翻弄されるばかりだったけど、昨夜は自分から乗っかって腰を振りまくってしまった……!
だってさ、ティアが襲われて……最悪の事態だって起きていたかもしれない。そう思ったら、どうにも我慢できなくて、されるだけじゃなく、俺からもシたいんだって分かってもらいたくなった。それにしても、相当がっついちゃったな。
マテリオとシまくった余韻が続いていて……あの時間が終わったことが寂しくて、ずっと体が疼いていた。でも、マテリオは馬車を出たらもう俺に触らないって言ってたな。ティアに命じられてキスこそしたけど……もう、二度とマテリオの意思では触れてこない? 本当に?
いやいや、落ち着け俺。なぜ急にこんなこと考えているんだ? ティアとのエッチは今までで一番優しくて激しくて気持ち良かったし、この後はダリウスとエルビスもエッチで癒してあげなきゃいけない。三人の相手でいっぱいいっぱいだろ?
このローテーションにマテリオが入るのか? 四人でされても、マテリオの治癒効果で俺もバテなくなって、終わりがないじゃないかっ! こわっ!
いや、でも……そうなると、全員が満足するまで抱かせてあげられる?
おいおい、何が抱かせてあげられるだよ。湊潤也、しっかりしろっ! そりゃあみんなとのエッチは気持ち良くて好きだけど……いや、むしろ、エッチは好き、かも。ずっとしていたいとさえ思う。なんていやらしい体になっちゃったんだ!
その時、またノックが響いた。
「ジュンヤ様、ノーマとヴァインです。湯の準備ができました。入ってもよろしいですか?」
「いいよ」
あちこちドロドロで恥ずかしいけど仕方ない。
「二人とも、何も言わないで……」
「もちろんです」
「私が浴場までお抱きしてもよろしいですか?」
頷くと、ヴァインが新しい布で俺の体を包んで抱き上げてくれる……のだが、中からドロリとしたものが溢れてきた。
「ヴァイン! 下ろして! ちょっと、マズいっ」
「浴場のほうが色々楽ですよ。大丈夫ですから」
「ううぅ」
いっそ黙っていたほうが良かったかも。でも、包まれた布にも垂れて濡れているし、どちらにせよバレたな……
「早速だけど、経緯を教えてくれるか?」
みんなの顔を見ながら口火を切る。マテリオとの関係を明かした時は、あんなに険悪だったのに。今はなんだか変な雰囲気だ。
「それほど難しい話ではない。三人共、マテリオのことは薄々気がついていたのだ」
「何それ?」
「殿下、私は疑われるようなことは何もしておりません」
否定するマテリオ。確かに恋愛感情を向けられたり、二人きりの時にエッチな雰囲気を醸したりというのはなかったと思う。だから俺も友人だと思ってた訳でさ。本人だって、極限状態に陥って初めて気づいたと言っていた。
「いーや。俺は交玉事件の前から怪しいと思ってたね」
「私は、気づいたのは最近ですが、それまでの薄っすらとした違和感が全部腑に落ちました」
本人より周囲のほうが敏感に感じ取っていたってことか。
「でも、マテリオと、その……そういう関係になったこと、みんな怒ってただろ?」
「多少はな。だが一番困惑したのは、二人の香りが違ったからだ。だから……私達の香りも加えていいか?」
香りか。エルビスはマテリオとシた後の俺達を『甘い花の香りで、尚かつ官能的です。エキゾチックで、劣情を湧き上がらせるような香りですね』と言っていた。ダリウスも他の二人との後は『安らぐ甘い香りだ』と。そんなに違うんだろうか、自分じゃ分からない。
「このままじゃ俺達、眠れそうにないしな」
「少しだけです、ジュンヤ様。お願いです」
真剣な瞳で見つめられ……でも、それって、三人で致すの?
「あの、三人同時はつらいって……」
「マテリオがいればエンドレスでやれるんだろ?」
「ダリウス!」
「冗談だ。キスでいい。再会してからまだ一度もしてないぞ」
そうだね、みんなとしてない。エッチだって、一人一人と向き合って愛し合いたい……
って、うわっ! 何考えてるんだ? 恥ずかしい!
「何エロい顔してるんだ?」
「そんな顔してないって!」
「してる。顔も赤い。セックスする想像したのか?」
「エロ団長め! あの、さ……ちゃんと、一対一でシたいだけ……」
俯いて白状すると静まり返った。
「ダメだったか……?」
「「「とんでもない!」」」
一斉に否定の言葉が返ってくる。
「一対一で可愛がられたいのだな? 望み通りじっくり愛してやろう」
「しばらく滞在することになったし、たっぷり可愛がってやるぞ?」
「そのままご一緒に眠っていいですか?」
「いいよ。その、俺もイチャイチャしたい……」
みんなの変なスイッチを入れてしまいました……‼
でも、うん。複数プレイは回避できた。そういえば、マテリオは沈黙している。顔を見ると、目が合ったのに逸らされた。
「みんな、マテリオを虐めたりしてない?」
事情聴取で俺だけが席を外した時、何かされなかったか、ずっと心配していたんだ。
「ジュンヤにとって、マテリオはどういう存在だ? 恋人か?」
俺の問いに答えはなく、ティアがどストレートな質問を投げてきた。
「えっ、それは……」
難しい質問だ。恋人? 友人? 境界線が曖昧だ。でも、相手がマテリオじゃなかったら受け入れなかった。
「友人だと思ってたし、こうなったことを後悔して離れていかれるのは嫌だ。正直、はっきり言えないんだ。曖昧で悪いと思ってるけど」
俺が言うと、ティアがボソリと呟いた。
「ふむ。自覚がないのか」
「ん? 何が?」
「エリアス、あんまり突っ込むな。俺達にはそのほうが好都合だろ?」
ダリウスが割り込んでくる。
「そうです、そのままでいいではないですか」
「エルビスまで……なに?」
よく分からないが、マテリオは友人の中でも特別だし、いなくなってほしくない。それに、あいつになら抱っこされても嫌じゃないし……
「ジュンヤ、これ以上の話は後だ。今は再会のキスがしたい」
ティアが近づいてきたので目を閉じる。ああ、ティアの香水の香りがする。久しぶりだ。
無意識に手が伸びて抱きしめ返していた。座ったままの俺に覆いかぶさるティアの熱い舌が滑り込んでくる。
「ん……」
熱くて甘いティアの舌が俺のに絡んで、夢中でそれに応えた。甘い……
「ぁ……」
堪能していたいのに、ティアが体を引いて俺から離れてしまう。
「もっと……」
追い縋ると再びキスしてくれて、何度も舌を擦り合わせた。名残惜しいのに、また離れてしまう。
「なんで?」
「皆、待ち遠しいんだ。次はダリウスにしてもらえ」
ダリウスがティアと入れ替わり、分厚い舌が俺の舌を搦め捕る。
「ふっ……んんっ! ふっ……あっ、触っちゃだめ!」
キスに夢中になっていると服の下に手が滑り込んで、乳首を摘まれてしまった。
『ここじゃ……やだよ。二人の時、シて……?』
耳元で囁くと、ダリウスの肩がビクッと震えてまたキスが降ってくる。
「んん……んくっ……ん……」
流し込まれた甘い唾液を飲み込むと、体の奥がジンジンした。
「はぁ……この小悪魔め。後でたっぷり啼かせるからな?」
「うん」
ダリウスが引くと今度はエルビスだ。
「今は、恋人の時間ですよね?」
「俺はいつだって恋人のつもりだよ?」
「ジュンヤ様っ」
「んんっ! ん、ふっ……うぅん。はぁ……心配させてごめん」
「やっと……キスできました。本当に、無事で良かった」
エルビスが落ち着くまで頭を撫でてやる。三人が冷静さを取り戻したところで、ティアがマテリオを呼んだ。
「さて、マテリオよ。この中に加わった証明をするのだ」
「証明とは、どのようなことでしょう」
「そなたもジュンヤに口づけを。我々に、お前もまた真の庇護者だと証明してほしい」
みんなが見ているのにマテリオとキスだって?
「しかし、こんな、人前で」
うん。マテリオは人前でできるタイプじゃないと思う。困惑するのは当然だろう。
「ティア……おれ……もう、変になってるから、同じだと思うよ?」
三人とキスしたから、とっくにエッチな気分になっている。
「認めはしたが、確認したい」
「お二方も同意見ですか? その……そのような行為はいかがなものかと思いますが」
マテリオは珍しく動揺している。だが、ダリウスとエルビスもティアに同意し頷いた。
「おれも……はずかしい……」
「なんだよ、俺達とするのを見られるのは平気だろ?」
「なんか、マテリオは……恥ずかしいんだよ」
「ぐぅっ! 可愛くて腹立つ! マテリオ、一発殴らせろっ!」
「ああ……ジュンヤ様、なぜそんなに可愛いのですか?」
「伴侶とするのは阻止すべきだったか……? 判断ミスか……?」
まともなのはマテリオだけ? みんな変だが、俺はもっとおかしい。早くキスの続きをしてほしいのに。
「ティア、早くキスしたい……」
「マテリオとしてからだ。その後は……今夜は私と閨を共にしよう。嫌か?」
「いやじゃない。わかった……マテリオ、キスしよ?」
あれが最後じゃないよ……
俺が手を伸ばして手招きすると、マテリオはフラフラと近寄ってきた。
「良いのだろうか。もう、二度と触れないと覚悟を決めたのに」
「いいんだってさ。おれも、キスしていいよ」
迫るルビー色の瞳に吸い込まれそうだった。その首に手を回して引き寄せ、唇を触れ合わせる。それだけで、あの不思議な力がお互いの間に流れ始め、ザワザワと蠢いた。
「ん、んくっ……んん、はぁ、んん……」
流れてくる……俺の力とマテリオの力が混ざって、また戻ってくる。もっと、もっと……もう一度、マテリオの熱い肌に触れたい……
「「「そこまで!」」」
気がつけば、マテリオに縋りつくように自分の体を擦りつけていた。
肩を後ろに引かれ、俺達は突然引き剥がされる。
「なに……?」
「はぁ、はぁ……わ、私は、こんなつもりでは」
意識がはっきりすると、マテリオのシャツがはだけ、俺の服も乱れていた。それ、俺がやったのか? 少し意識が飛んでいたけど、俺達何をしたんだ~⁉
「そういうことかよ!」
「私達は大変な男を受け入れてしまったようだな」
「ジュンヤ様がとってもエッチに……!」
よく分からないが、俺達はこの短時間に我を忘れて求め合っていたらしいです。なんてこった!
「ジュンヤ。確かにマテリオは庇護者で間違いない。ジュンヤの心が受け入れているのも確かめた。だが、私達の想いもしっかり受け止めてもらうぞ?」
「は、はい……」
全力で三人のご機嫌を取ることが確定した。お手柔らかにお願いします……
ティアを残してみんなが出ていく。二人きりになり、ティアの膝の上に向かい合う形で座った。たまにはこうやって甘えると喜ぶと思ったからだ。
「マテリオを認めたこと、後悔してるのか?」
「正直、少し後悔している。あんな可愛い顔をマテリオに見せて……! 本当は独り占めしてしまいたいのに」
ギュッと抱きしめられ、ディープキスで舌を搦め捕られる。
「ごめんな。俺、どんどんいやらしくなって怖いよ。……今も、すごく、シたい。ティアに抱かれて、一緒にいるんだって感じたい」
「アユムから、ジュンヤは愛されるほど神力が強まると聞いた。だから、愛されて乱れるのは良いことなのだ」
「良いこと……?」
触れられるだけでゾクゾクしてしまうのも、キスだけで抱かれたくなるのも、神子の力のせい?
「ああ。私達の絆が深くなるほど、快楽は大きくなる。乱れるのは愛し合っているからで、決して恥ずかしいことではない」
愛し合っているから。こんなにも求めてしまうのは、俺達の絆の証。俺がいやらしくても、乱れても、みんなは受け止めてくれる。
「クードラでティアが襲われたって聞いた時、すごく怖かった。その後もまたはぐれて不安だった……。今こうしているのが現実だって感じたいから、抱いてほしい」
「良いのか?」
「うん。心配させた罰を受けてもいいよ。縛る? 俺を縛っていいのは、ティアだけだから、お仕置きしてもいいよ」
「――っ」
ティアは俺をガバッと抱き上げ、ベッドになだれ込んだ。
「ん、ん、んぅ」
「そんな風に可愛く誘われたら、期待に応えねばな」
執拗に口内を蹂躙するティアの舌が愛おしくて仕方がない。
「ティア、もっと」
「ふふ……いやらしくて可愛い。もっと欲しいんだろう?」
「うん……ナカにも、きて。今日は縛らないのか?」
「必要ない」
ティアは荒々しく俺の服を脱がせにかかった。俺も待てずにティアのボタンを慌ただしく外し、脱がした服を放り投げる。その間もキスを繰り返し、荒い吐息が混ざり合った。心配させてしまった。だから、俺を好きにして。
全てを剥ぎ取ってピッタリと体を重ねてキスしながら、互いの体を弄り合う。滑らかで薄っすらと汗の滲む肌が、手のひらに吸いつくようだった。
このまま一つに溶けてしまいたい……
激しいキスで息も絶え絶えの俺を宥めるように、ティアは首筋から順に舐め甘噛みを始めた。時折吸いながら舌と唇で愛撫され、気持ち良さに吐息が漏れる。
「ぁん……ティア、俺もシたい。ティアに触りたい」
「嬉しいが、今はジュンヤを味わいたい。どこもかしこも果実のように美味だからな。食べてもいいか?」
そう尋ねながらも愛撫する手は止まらず、ゾクゾクと快感の波に襲われる。
「あ、ぁ。たべて、いい。ティア、あ……」
「では、遠慮なくいただこう」
「あんっ! いきなり! ひぁっ」
突然乳首に吸いつき、甘噛みしながら反対側の乳首もクリクリと転がされた。
「ふぁ、あ、あっ、あぁ」
きもちいぃ……もっと舐めて、噛んで……
あまりの気持ち良さに、胸をティアに押しつけてしまう。
「乳首を舐められるのが好きか?」
「すきぃ、ぁん……あ、早く、ナカにきて」
「随分せっかちだな。もう交玉を挿れていいのか?」
「うん……」
めちゃくちゃいやらしく誘っている自覚はある。でも止められない……はやく、奥まできてほしい。繋がって、もっと直接ティアを感じたいんだ。
棚から香油と交玉を取り出すティアを見つめながら、ゆっくりと脚を開く。恥ずかしいけど、俺も求めてるって伝えたかった。
ティアが唾を呑み込む音がした。俺を見下ろす金の瞳が欲望に支配されているのが分かる。
嬉しい……。どんなにいやらしくなっても見捨てられたりしないんだ。
香油を纏った指が中に埋め込まれる。ユーフォーンに着くまでにマテリオに散々に拓かれたそこは、簡単に交玉を呑み込んだ。むしろティアの指を喜んで受け入れている。もっと深くに来てと伝えたくて、腰を揺らした。
「あぁん、ん、はぁ」
「随分と柔らかいな。こんなに嬉しそうに吸いついて腰が揺れているなんて、マテリオにどれほど抱かれたんだ?」
「あ、あぅ……んん……そんなこと、言っちゃ、やぁ、あっ、あぁ」
「ここに、何度注がれた?」
「ぁん……やだ」
回数なんて分からない。だって、何度も何度も……いや、馬車で隠れて移動する間はずっとマテリオがナカにいて、隅々まで愛撫され続けていたなんて、言えない。
「言うんだ。教えてくれ。どんな風に抱かれた?」
「そんなこと、言えない! あっ、や、そこ、もっと……擦って。お願いだから」
良いところに触れたのに、わざと違う場所にずらして刺激される。
「ちゃんと教えくれたらシてやろう」
「うう……意地悪。……ずっと、シてただけ」
「どんな風に?」
続けろとばかりに内壁を擦られた。
「あぁっ、ん……後ろから、何度も、イきっぱなしで、突かれてた」
「ほう。あれも存外情熱的だな。では、溢れるほど注がれたんだな?」
「……ん、いっぱい中出しされた……。ティア、もう焦らさないでくれよぉ」
精一杯手を伸ばし、縋りついて引き寄せる。
「キスして、んっ、んんっ、はぁ……お願い……めちゃくちゃにして。ゆるして……」
「ああ、私もジュンヤを味わいたい。自分で膝を抱えるんだ」
自ら曝け出すように指示されて従うと、恥ずかしいところが丸見えだ。顔が熱い。
「目を閉じるなよ?」
腰の下にクッションを入れて固定されたせいで、交玉から溢れた潤滑油と香油でグショグショになった俺の陰茎がピクピクと震えているのがよく見える。あまりにいやらしい光景に、思わず目を背けた。
「だめだ。私達が一つになる瞬間を見ろ」
「はい……」
俺はティアに命令されるのが好きだ。この男になら支配されたいと思っている。切なく疼く場所に、ティアの熱く滾ったモノがグッと押し付けられた。
「ぅう、はぁ」
待ち望んでいたものが挿入されると、自然と声が漏れてしまう。
「ティアのおっきいの、イイ……」
「しばらく私が愛さないうちにこんなになって。さすがに妬けるな」
「ごめん……」
「気にするな。他の者達を上回るよう可愛がるだけだ。こうして、な」
「あぁう! あ、あ」
ズンッと奥まで突かれ、たまらず声が出てしまう。
最初は小刻みな抽送だったが、すぐに大きなグラインドで責められた。ティアの獰猛な亀頭で隘路をこじ開けられ、内壁が熱く痺れるようだ。
「くっ、うぅ。そんなに締めつけて、これが好きか?」
「はぁ、はぁ……すき……。大丈夫だから、もっと、めちゃくちゃに動いて」
ティアの動きに合わせて腰を揺らし、もっと奥まで挿入るよう抱えた脚をぐっと引き寄せる。俺のナカを蹂躙するティアが出入りする度、ぬらぬらと濡れていやらしい。
「ティアも、きもちいい?」
「ああ……お前のナカは、熱くて、蕩けそうだ」
額に汗を浮かべているティアが髪を掻き上げた。些細な仕草がセクシーで胸がときめく。もっと気持ち良くなってほしい。
激しく肌がぶつかり合い、水音がいやらしく響く。
「ティア、あうっ! 縛っても、いいよ。あっ、ぁん」
「引け目なら、感じなくて、いい」
「そんな、じゃ……はぁ……っそれ、だめぇ」
入り口から最奥の窄まりまで何度も行き来して抉られると、ビリビリとした快感が走った。
「ダメじゃないだろう? こんなに蕩けた顔をして」
見逃さないぞとばかりに、至近距離でティアが俺の顔を見つめている。
「イッちゃう、から、待って……ゆっくり、シて」
「くっ……締めすぎだ。搾り取る気か? やめないから我慢せずにイけ」
「一緒がいい。いっしょに、イこ?」
「また可愛いことを言う。ああ、一緒にイこう。どこに出してほしい?」
「ひぁうっ」
ナカをグルリと掻き回され、ビクビクと体が跳ねた。
「奥……奥に来てぇ……」
最奥の更に奥を獰猛なカリ首が拓き、深々と串刺しにされた。ナカにティアの力が流れてくる。マテリオとはまた違う、擦れ合う部分からじんわりと伝わる、熱く優しい力だ。
「あっ、あー、はぁぁ……ぅうん」
体がビクンビクンと痙攣し、無我夢中でティアに縋りつく。ナカに熱い迸りを注がれ、快感に震えた。
ティアの、熱いの、きた……
「はぁっ、はぁっ、ジュンヤ、綺麗だ。私の、ものだ」
「おれは、ティアの、だよ。あぁ、熱いのイイ……」
注がれた精液から、ティアの力が体の隅々に染み渡っていくのを感じる。行為を繰り返すうちに理解できるようになった。
「いやらしい顔だ。そんなに、精液を注がれるのが好きか?」
「あぅ……ん……すき……もっと」
「次は後ろからだ。マテリオと同じ体位で抱いてやろう」
ズルンと抜かれて、ナカが寂しくて震える。
「ぬいちゃ、やだ」
「ふふ。淫らな神子は可愛らしい。愛しているぞ」
「ティア、おれも、シてあげたい……」
「何をだ?」
「王子様に乗ってもいい?」
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「これがさっきまで挿入ってた……」
そっと握ると、ピクリと震えて、先端から透明な雫が溢れた。
「もったいない……」
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頭に手が乗せられ退かされそうになる。が、したくてやっているんだという証に、肉茎に舌を絡ませて愛撫した。わざと音を立ててしゃぶると、俺自身の興奮も高まっていく。
「うう……はぁ、ジュンヤ、早く、お前のナカに挿入りたい」
「もっとしたかったけど、俺も我慢できないや」
ティアの上で膝立ちになり、上向いた陰茎に手を添える。ゆっくり腰を下ろすが、気が急いているせいか、なかなかすんなり挿入らない。
「あれ、なんで……っ」
「ジュンヤ、無理しなくてもいいぞ」
「やだ。シてあげたい」
多分、イったせいで無意識に力が入ってるんだ……
呼吸を整え、息を吐きながら改めて腰を下ろしていく。すると、ようやく欲しかったものが挿入ってきた。
「ん、ふぅ……んん、はぁ、もう、少し」
ティアの腿に尻が密着し、全部が収まった。あまりの気持ち良さに我慢できず腰を揺らすと、ティアが楽しそうに笑う。
「いい眺めだ」
「ふふ。王子様は寝ていいよ」
お詫びのご奉仕タイムだ。ティアの胸に手をつき、ゆっくりと腰を上下させる。
「くっ……」
感じているのか、ティアは目を閉じて声を殺している。俺にリードされるなんて思ってもいなかっただろう。
締めつけながら腰を揺らすと、ティアが俺の腰に手を添え、リズムに合わせて突き上げてくる。
「はぁ、はぁ、ん、これ、好き?」
「ああ、イイ……」
いつも翻弄されてしまうから、じっくりと時間をかけて繋がっていると、愛しさが増す気がした。ティアの右手が俺の陰茎に触れ、ゆるゆると上下する。そんなことされたら、ゆっくりなんて無理なんだけど!
「それ、ダメ、ゆっくりしたい、んんぁ!」
強い突き上げに言葉が続かない。
「まっ、て……できな、く、ぅ」
必死に訴えると、閉じていたティアの目が開いて不敵に笑った。左手が俺の乳首をキュッと摘み刺激する。三ヶ所同時に責められ、動けなくなってしまった。
「あ、はぅ、や、俺が、シたい、のにぃ」
「お返しだ。されっぱなしでは、悔しいからな」
「あっ、はっ、はぁ、あ、あ」
ガツガツと突き上げられ、もう何も考えられない。
「ん、あぁ、や、イ、ちゃ……う。やめ、て」
「イけば良い」
「や、いっしょ、いっしょが、いい……あぅ!」
ティアが腹筋だけで起き上がり、俺を抱きしめた。繋がったところから衝撃が響く。
「私の首に手を回せ」
言われた通りに手を回し、ティアの鎖骨にキスした。自重でつながりが深くなる。
「深い、よぉ……」
宥めるように唇にキスして、ティアが突き上げを再開する。どこもかしこも触れ合っていて熱く、気持ちいい。
「ひぅ……あぁあ……ん、ん~~っ」
達してガクガクと痙攣する粘膜にティアの熱い精液を注がれ、快感と甘い力に溺れそうだ。
「あいしてる……」
「私も愛している。今日はここで眠っていいか?」
「ん。いっしょに、いたい」
あらゆる液でドロドロのまま抱きしめ合い、キスを繰り返す。
「ティア」
「なんだ?」
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「うん……」
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「ああ。護衛がいたので私は無事だった。だが、ジュンヤを置いて逃げろと言われ……離れざるを得なくなった。ギリギリまで合流することを検討したのだが、すまなかった」
視察先での襲撃の件がずっと気になっていた。いつも冷静なティアが怒鳴っていたという報告があったし、かなり危険な状況だったはずだ。だけど、それ以上のことを説明してくれない。
「ああ、昨夜、ナカから出すのを忘れてしまった。出してやらないと」
「えっ? ああ、だめ。まだしなくていいよぉ」
誤魔化すように話題を変えた上、体を起こそうとするティアを慌てて止める。
「体内に残しておくと体調を崩すと聞いた。そんな状態にさせたくない」
「ん……それ、根拠はないけど、無理に出さなくても大丈夫な気がするんだ」
「どういう意味だ?」
ティアが心配そうに見つめてくる。神子は精液から力をもらえるから、具合は悪くならないと思う……なんて、恥ずかしい理由を言えるか? でも、多分これは言わなきゃ納得してもらえない奴だ。
「だって……ナカにあるのが、まだ力をくれてる。これまでも腹痛は起きなかったし、むしろ出さないほうが調子良いんだと思う……」
「そうなのか? では、もう一度抱いてもいいか?」
え、そっちに持っていく?
「あっ、エッチな触り方、だめ! 今日も仕事があるんじゃないのか?」
「ある。あるが……たまにはサボってもいいと思わないか?」
「そうだけど、今日はまずくない? まだディックのことも片付いてないし、バタバタするだろ。今度ゆっくりイチャイチャしよう? ……あっ⁉」
グルンと視界が回り、のしかかってきたティアに口内を散々に舐められ、唾液を流し込まれる。
これ、なし崩し的に致してしまう流れだ。
「んん……だめ、だ」
コンコンッ。
その時、外から扉がノックされた。気づいているだろうに、ティアは無視している。
コンコンッ……コンコンッ!
だが、相手もめげずにノックを続ける。さすがにまずいよな。少し強めにティアの胸元を叩いた。
「む……時間切れか。あれは多分ソウガだ。ジュンヤを湯に入れてやるつもりだったのに」
「俺は後でいいから、ティアもここで湯浴みしてから行ったら?」
「確かにこれでは行けないな」
ティアが改めて自分達の姿を確認し、苦笑する。
「このままのジュンヤも部屋から出したくない。こんな官能的で美しい姿、誰にも見せたくない」
コンコンッ!
「殿下、ソウガでございます。恐れながら、ヒルダーヌ様、ザンド様との会談の時間が迫っております」
扉の外から遠慮がちに声をかけてきたのは、やはりソウガさんだった。これだけ無視されてもノックをやめずに声もかけてくるんだから、本気の限界なんだろう。俺の王子様はたくさんの人に必要とされているから、仕方ない。
「仕事頑張って。俺は動けないけど、ティアは大丈夫か?」
「ふふっ……ジュンヤが乗って動いてくれたから大丈夫だ。また是非頼む。いつでも歓迎だ」
コンコンッ!
「殿下、どうかお返事をくださいませ」
甘い時間は、もう終わりだ。
「……ふぅ。ソウガ、起きている。こちらで身支度するが、準備はできているか?」
「はい。いつでもどうぞ」
「ジュンヤも綺麗にしてやりたいが」
「大丈夫だって。自分で拭くから」
エルビスを呼ぶと言うティアを止める。
「自分がエルビスなら、こんな俺を見たい?」
「ふむ……そうだな。では、ノーマとヴァインならどうだ? 一人で湯に入るのは無理だろう?」
「うん、そうしようかな。二人には悪いけど」
「それが彼らの仕事だ」
コンコン!
俺は上掛けで体を隠した。それを見て、ティアが扉のほうに顔を向ける。
「ソウガ、入っていいぞ」
ソウガさんが入室し、俺から顔を背けてティアの体を拭き始める。本当は数人がかりでやるそうだが、今日は俺がいるからソウガさん一人みたいだ。
「ジュンヤ。今日は無理をするなよ」
「ん。いってらっしゃい」
準備を整えて名残惜しそうに去っていく背中を見送り、自分の惨状を確認すると、顔に熱が集まる。今までは抱かれて翻弄されるばかりだったけど、昨夜は自分から乗っかって腰を振りまくってしまった……!
だってさ、ティアが襲われて……最悪の事態だって起きていたかもしれない。そう思ったら、どうにも我慢できなくて、されるだけじゃなく、俺からもシたいんだって分かってもらいたくなった。それにしても、相当がっついちゃったな。
マテリオとシまくった余韻が続いていて……あの時間が終わったことが寂しくて、ずっと体が疼いていた。でも、マテリオは馬車を出たらもう俺に触らないって言ってたな。ティアに命じられてキスこそしたけど……もう、二度とマテリオの意思では触れてこない? 本当に?
いやいや、落ち着け俺。なぜ急にこんなこと考えているんだ? ティアとのエッチは今までで一番優しくて激しくて気持ち良かったし、この後はダリウスとエルビスもエッチで癒してあげなきゃいけない。三人の相手でいっぱいいっぱいだろ?
このローテーションにマテリオが入るのか? 四人でされても、マテリオの治癒効果で俺もバテなくなって、終わりがないじゃないかっ! こわっ!
いや、でも……そうなると、全員が満足するまで抱かせてあげられる?
おいおい、何が抱かせてあげられるだよ。湊潤也、しっかりしろっ! そりゃあみんなとのエッチは気持ち良くて好きだけど……いや、むしろ、エッチは好き、かも。ずっとしていたいとさえ思う。なんていやらしい体になっちゃったんだ!
その時、またノックが響いた。
「ジュンヤ様、ノーマとヴァインです。湯の準備ができました。入ってもよろしいですか?」
「いいよ」
あちこちドロドロで恥ずかしいけど仕方ない。
「二人とも、何も言わないで……」
「もちろんです」
「私が浴場までお抱きしてもよろしいですか?」
頷くと、ヴァインが新しい布で俺の体を包んで抱き上げてくれる……のだが、中からドロリとしたものが溢れてきた。
「ヴァイン! 下ろして! ちょっと、マズいっ」
「浴場のほうが色々楽ですよ。大丈夫ですから」
「ううぅ」
いっそ黙っていたほうが良かったかも。でも、包まれた布にも垂れて濡れているし、どちらにせよバレたな……
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