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番外編 1

居待月の宴 

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アンダルシュのTwitter企画に参加です。

ご注意。最終話まで未読の方にはネタバレ要素がありますのでお気をつけて! ストーリーには触れていませんがカップルはわかるので……
それと、このお話限定の設定を作っているので、そこはゆるりと読んでください。
番外編なので投稿当初のテンションです! 

ーーーー


瘴気や狂信者の問題がようや落ち着き、余裕が出てきたころ。ベランダから空を見上げると、まもなく満月を迎えるところだった。
空を眺める余裕がなかったが、俺の心にもようやく執務以外を考える余裕ができたらしい。カルタス王国に月見の習慣がある変わらないが、食品フロアなどではお月見関連商品が並んでいるだろうなと考えていた。

そうだ! せっかくだから月見団子とか作ってみんなで月見をしよう!

「よし……! とりあえず団子と、ススキの代わりになりそうなもの……あるかな」
「ジュンヤ様? 何かお探しですか?」

エルビス! 独り言さえ聞き漏らさない優秀さよ……!

「あのさ、実は……」

俺の計画を話すと、月見の習慣はないが支度をしてくれることになった。ありがとうエルビス!
次の日、調理場でキールの実をひいて試作をしてみた。しかし、もちもちした食感はでない。くっ……そんなに甘くないか。俺の欲しいものにもち米が加わった瞬間だ。
ハンスに、もう少しもっちりした食感にしたいと相談すると粘りの強い芋を混ぜたらと言われ配合し、なんとかそれっぽくなった。

「ジュンヤ様……正直、俺は味がわからんです……」

白玉に近づいたが、みんなには物足りなく感じるだろう。

「まぁ、そうだよな」

それに、団子や餅は慣れないと喉に詰まらせてしまいそうだ。伝統に則っていなくても、雰囲気を楽しんでもらおうと思った。
そこで、食べる時はあんこ、ずんだなどをつけて食べてもらう方向にした。小豆に似た豆で作ったが、なかなかいい出来だと思う。あとはこし餡にするか粒あんにするかだが……

「おう、何してんだぁ?」
「あ、ダリウス。休憩?」
「おう。飯食いに帰ってきた」
「そうか、お疲れ……ん、んんーー!」

がっつりねっとりとキス攻撃をくらい、一瞬腰砕けになる……

「バカァ……、こんなところでするなよ」
「ん~~? パワー充填だから許せよ」

はい、俺様発言来ました!

「これ、何作ってんだ?」
「今度月見をしようと思ってさ。それで出す団子なんだ」
「ふ~ん。食っていいか?」
「いいよ」

月見団子というより餡だんごをクマに与える。
だが、いいんだ。俺よ、考えるな、感じろ……!! 雰囲気が味わえればオールOKだ!!

「ふむ……味はいいな」
「改良して欲しいところはあるか?」
「豆の皮がない方がいいかなぁ~」
「了解」

手間はかかるが、俺もこし餡派である。とりあえず味方が増えたので、独断でこし餡にすると決めた。

「改良しておくから、食事をしてこいよ」
「おう。これはもらっていくな~」

なんだかんだ言って、置いてあった小皿を一つ掻っ攫っていった。さりげない仕草なのに素早いな……

「ダリウス様、気づかないうちに持ってましたねぇ」

ハンスも目をぱちくりして驚いていた。

「まぁ、あいつはそんな奴だよ。でも、確かにこし餡の方がみんなに受ける気がするし、もうちょっと頑張ろう」

しばらくの間調理場で試行錯誤をし、月見に備えた。


◇◆◇


太陽が傾き始める前に庭に厚地のラグを敷く。クッションも置いてリラックススペースにした。普段は椅子に座ってすごす彼らだが、たまにはごろ寝をしながら月を見るのもいいと思う。
そして、収穫した果実などお供えの代わりも用意した。団子も皿に積み上げて見た目だけは月見っぽいぞ! ススキはなかったが、魔除けの意味を持つ別の植物で代用だ。

「さて……食べ物はみんなが揃ってからかな」

準備は完璧! お酒を飲みながらのんびりと月を眺めようとワクワクしていた。それに……今日は特別な格好をしている。みんなの感想が楽しみだ。
やがて、仕事を終えた面々が帰ってきて庭に集合した。そして、俺をみてフリーズしている。もっと反応があると思ったんだがなぁ。

「これ、好みじゃなかった? 日本では浴衣って言うんだけど……」

さすがに和柄は入手できないので既製の生地を使った。紺色の無地なので、この国の人間から見たら地味な印象かもしれない。それが好みじゃなかったのかな……?

「いや。そんなことはない。驚いただけだ。もっとよく見せてくれ」

ティアが近づいて、真剣な眼差しで上から下までじっくりと観察していく。そう、まさに観察、である。なんか怖い。

そんなにみられるとむず痒いな……

もじもじしている俺を、今度はダリウスが舐め回すようにみている。

「おい、これはヤバイだろ……」
「何が?」
「まぁ、いいや」
「なんだよ!」

気になるからちゃんと言えよな!
隣にいるエルビスは、手伝ってくれたので一足早くみているが、俺をみてずーっとニコニコしている。

「美しいです。毎日美しいですが、ジュンヤ様のお着替えも全部私が手がけていると思うと幸せでどうにかなりそうです」

エルビスの賛辞に思わず照れてしまう。

「…………」

マテリオも石像になってしまった……

「マテリオ? どうした?」
「けしからん姿だ……」
「あんたも何言ってんだ……? まぁいいや! ほら、みんなここに座って!」

みんなを座らせ、控えていたハンスがワゴンに乗せた団子を持ってきてくれた。ついでに、酒とつまみもだ。軽食を食べながら、みんなでゆったり過ごすんだ。

「ジュンヤ様、私も手伝います」
「今日はいいの!! エルビスもたまには休みなよ」

配膳しているとエルビスがそわそわしていて、それがとても可愛いんだ。日本酒はないのでワインとエールだが、それぞれに酒をついでやった。

「ジュンヤ」

そこまで終えると、ティアが隣をトントンとたたいたので隣にあぐらをかいて座る。

「――ジュンヤ。それは私達を誘っているのか?」
「へ?」

自分で確認したが、下着も見えてないし……普通だよな?

「あ、そうか。こっちではズボンだからはだけないもんなぁ。見苦しかったか」

正座は痺れるから体育座りにでもするかと腰を上げると、ティアがとめた。

「そのままでいい。私がニホンの文化を知らなかっただけだから、気にしなくて良い」
「そう? よかった」

正直、あぐらが1番楽なので助かる。

「あ、グラス空だね。はい、どうぞ」

ティアのグラスに白ワインを注ぐ。

「ジュンヤも飲め」
「うん。これ、フルーティーだから好きなんだ」

香りを楽しんでから口に含むと、柑橘系の香りが鼻を抜けていく。

「月、まだかなぁ」
「今夜は月が出るのが遅いのだ。それまで皆で宴を楽しもう」
「そうか~。あ、ダリウス意外はお団子初めてだよね。もちもちしてるから大丈夫かな……」

小さめに丸めたが、少しだけ心配だ。

「そういえば、月が出るまで団子は食べないでおいて。月への供物だから」
「月に供えるなんて、お前の国は面白いことをするなぁ。あ、俺は肉をいただき!」

串焼きを頬張りながら、酒を飲み始めたダリウスに思わず笑ってしまう。

「俺の国には、たくさんの神様がいるんだ。物にも神が宿る付喪神信仰ってのもあってさ。要は、物を大事にしましょうってことかなと俺は思うけど」
「そんなに神がいて、信仰問題はないのですか?」
「そうだ。1人の神に対しても考えが違うからあんなことが起きたのだぞ」

エルビスとマテリオも驚いているが、多分日本がイレギュラーなんだよな。

「他国はあるけど、日本はどの神様もみんな神様っていうところがあって寛容だと思う。だから俺も、メイリル神について何か言ったことないだろう?」
「そういえばお前に私が説明をしたときに神の否定はしなかったな」

マテリオは何度も頷きながら、1人で完結している……

「まぁ、つまりさ。揉めることもあるかもしれないけど、全部受け入れれば揉めることもないさ」
「はぁ……やっぱりジュンヤ様はすごいですね」
「ほら! エルビスもマテリオも難しいこと考えないで、月が出るまで食べていようよ! あ~んしな!」

肉は食べられないマテリオにはチーズを突っ込み、エルビスには焼き鳥を食べさせる。

「ムグ……おいひぃです」
「うむ……」

ふっふっふ……そうだろう!! タレはさらに改良した自信作だからな。

「ジュンヤ、私も」
「ん?」

振り向けば、口を開けて待つティアだ。

「まったく……何がいい?」
「チーズだ」

食べさせてやると満足そうに笑う。

「空、まだ明るいなぁ。雲もかかってる」

空を見上げると、暗くなり始めたものの雲が多い。

「だが、あと少しで一気に暗くなるぜ~。のんびり待とうや。ほら、飲むか」
「飲む!」

みんなでワイワイしながら時間を過ごすのが楽しくて仕方ない。月が見えなくてもいいかな?という気にさえなる。

「あ、急にきた!」

どんどん暗くなり始め、闇が深くなっていく。空を見つめる俺を、ティアが背後に周り抱き込んだ。

「今日は大陸では季節の変わり目の人されている。陰ると気温が下がるから、こうしていよう」

……上手いこと言って抱きつきたいだけでは? と思うがまぁいい。背中があったかいし、何よりティアの香りに包まれていい気分だ。

「ズルくねぇか? なぁ、ズルいだろ」
「殿下ばかり……私もジュンヤ様を抱っこしたいです」
「……私も」

ああ、もう! やきもち焼きばっかりだ。

「じゃあ、順番な」

こう答えれば、全員が高速で頷いた。





「あ、雲がきれそう」

ほろ酔いでいい気分になった俺が抱かれているのはエルビスだ。この安定感……ママンしゅごい……

「そうですね。あ、月も見えてきましたよ」

雲の切れ間から、煌々と光を放ちながら月が覗く。

「へへ、ちゅき見っぽくらってひた~」
「そうですね、はい」

むぎゅっと抱きしめてくれるママンの腕の中で眠りたいね……

「おい、そろそろ交代だろ? な?」
「エロ団長は時間も守れないのか?」
「もう時間だって!」
「何? ……あぁ、残念です、ジュンヤ様」
「また後でな~、ひぁ?!」

エルビスの足の間から引っこ抜かれ、クマホールドを決められた。

「だりうしゅ、ちょっとらんぼうだぞ」
「悪りぃ。だって、早くこうしたかったからよぉ」
「もう~」

苦笑しながらわざと全体重をかけてやるが微動だにしない。さりげなく手がいやらしい動きになる……

「ヤラシイこと、らめ」
「ん? それはこういうのとか、こういうのか?」
「ふぁっ!」

乳首と陰茎を同時に擦られて、思わず声が出てしまった。

「エログマ、ハウス……」
「――いやか? 俺達、ずっと足がチラチラ見えてんのにお預けで、我慢してるんだぜ?」

話ながらも手の動きは止まらない。そこへ、また別の手が伸びてきた。

「おちゅきみ……」
「もう見たし、いいだろ。なぁ、エリアス」
「ああ、私も触れたかった。だめか?」
「ん、そこ、らめ……」

2人の手が胸や脇腹など、弱いところを愛撫し始めると、また手が加わった。

「あ、ふたりまで……」
「我慢していたんです、ずっと。気づいていたでしょう?」

知ってる。俺のお尻に、エルビスの欲望がずっと当たっていた。

「少しでも、触れていたい」
「あんたまで……」
「私は、いつも出遅れるから、今日は引かない」

4組の手で隅々まで弄られ、あられもない声が止まらなくなってしまう。

「そと、らめぁ、声、聞かれちゃう」
「人払いしてある」

ティア、最初からそのつもりだったのか?!

「あ、ぁあ、そんな、んあっ!」

あれ、これ本当にお月見?
もしかして、供物は俺……?

でも、いいか。
今俺達を見ているのは、天に輝く月だけだから……


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