111 / 208
番外編 1
居待月の宴
しおりを挟む
アンダルシュのTwitter企画に参加です。
ご注意。最終話まで未読の方にはネタバレ要素がありますのでお気をつけて! ストーリーには触れていませんがカップルはわかるので……
それと、このお話限定の設定を作っているので、そこはゆるりと読んでください。
番外編なので投稿当初のテンションです!
ーーーー
瘴気や狂信者の問題がようや落ち着き、余裕が出てきたころ。ベランダから空を見上げると、まもなく満月を迎えるところだった。
空を眺める余裕がなかったが、俺の心にもようやく執務以外を考える余裕ができたらしい。カルタス王国に月見の習慣がある変わらないが、食品フロアなどではお月見関連商品が並んでいるだろうなと考えていた。
そうだ! せっかくだから月見団子とか作ってみんなで月見をしよう!
「よし……! とりあえず団子と、ススキの代わりになりそうなもの……あるかな」
「ジュンヤ様? 何かお探しですか?」
エルビス! 独り言さえ聞き漏らさない優秀さよ……!
「あのさ、実は……」
俺の計画を話すと、月見の習慣はないが支度をしてくれることになった。ありがとうエルビス!
次の日、調理場でキールの実をひいて試作をしてみた。しかし、もちもちした食感はでない。くっ……そんなに甘くないか。俺の欲しいものにもち米が加わった瞬間だ。
ハンスに、もう少しもっちりした食感にしたいと相談すると粘りの強い芋を混ぜたらと言われ配合し、なんとかそれっぽくなった。
「ジュンヤ様……正直、俺は味がわからんです……」
白玉に近づいたが、みんなには物足りなく感じるだろう。
「まぁ、そうだよな」
それに、団子や餅は慣れないと喉に詰まらせてしまいそうだ。伝統に則っていなくても、雰囲気を楽しんでもらおうと思った。
そこで、食べる時はあんこ、ずんだなどをつけて食べてもらう方向にした。小豆に似た豆で作ったが、なかなかいい出来だと思う。あとはこし餡にするか粒あんにするかだが……
「おう、何してんだぁ?」
「あ、ダリウス。休憩?」
「おう。飯食いに帰ってきた」
「そうか、お疲れ……ん、んんーー!」
がっつりねっとりとキス攻撃をくらい、一瞬腰砕けになる……
「バカァ……、こんなところでするなよ」
「ん~~? パワー充填だから許せよ」
はい、俺様発言来ました!
「これ、何作ってんだ?」
「今度月見をしようと思ってさ。それで出す団子なんだ」
「ふ~ん。食っていいか?」
「いいよ」
月見団子というより餡だんごをクマに与える。
だが、いいんだ。俺よ、考えるな、感じろ……!! 雰囲気が味わえればオールOKだ!!
「ふむ……味はいいな」
「改良して欲しいところはあるか?」
「豆の皮がない方がいいかなぁ~」
「了解」
手間はかかるが、俺もこし餡派である。とりあえず味方が増えたので、独断でこし餡にすると決めた。
「改良しておくから、食事をしてこいよ」
「おう。これはもらっていくな~」
なんだかんだ言って、置いてあった小皿を一つ掻っ攫っていった。さりげない仕草なのに素早いな……
「ダリウス様、気づかないうちに持ってましたねぇ」
ハンスも目をぱちくりして驚いていた。
「まぁ、あいつはそんな奴だよ。でも、確かにこし餡の方がみんなに受ける気がするし、もうちょっと頑張ろう」
しばらくの間調理場で試行錯誤をし、月見に備えた。
◇◆◇
太陽が傾き始める前に庭に厚地のラグを敷く。クッションも置いてリラックススペースにした。普段は椅子に座ってすごす彼らだが、たまにはごろ寝をしながら月を見るのもいいと思う。
そして、収穫した果実などお供えの代わりも用意した。団子も皿に積み上げて見た目だけは月見っぽいぞ! ススキはなかったが、魔除けの意味を持つ別の植物で代用だ。
「さて……食べ物はみんなが揃ってからかな」
準備は完璧! お酒を飲みながらのんびりと月を眺めようとワクワクしていた。それに……今日は特別な格好をしている。みんなの感想が楽しみだ。
やがて、仕事を終えた面々が帰ってきて庭に集合した。そして、俺をみてフリーズしている。もっと反応があると思ったんだがなぁ。
「これ、好みじゃなかった? 日本では浴衣って言うんだけど……」
さすがに和柄は入手できないので既製の生地を使った。紺色の無地なので、この国の人間から見たら地味な印象かもしれない。それが好みじゃなかったのかな……?
「いや。そんなことはない。驚いただけだ。もっとよく見せてくれ」
ティアが近づいて、真剣な眼差しで上から下までじっくりと観察していく。そう、まさに観察、である。なんか怖い。
そんなにみられるとむず痒いな……
もじもじしている俺を、今度はダリウスが舐め回すようにみている。
「おい、これはヤバイだろ……」
「何が?」
「まぁ、いいや」
「なんだよ!」
気になるからちゃんと言えよな!
隣にいるエルビスは、手伝ってくれたので一足早くみているが、俺をみてずーっとニコニコしている。
「美しいです。毎日美しいですが、ジュンヤ様のお着替えも全部私が手がけていると思うと幸せでどうにかなりそうです」
エルビスの賛辞に思わず照れてしまう。
「…………」
マテリオも石像になってしまった……
「マテリオ? どうした?」
「けしからん姿だ……」
「あんたも何言ってんだ……? まぁいいや! ほら、みんなここに座って!」
みんなを座らせ、控えていたハンスがワゴンに乗せた団子を持ってきてくれた。ついでに、酒とつまみもだ。軽食を食べながら、みんなでゆったり過ごすんだ。
「ジュンヤ様、私も手伝います」
「今日はいいの!! エルビスもたまには休みなよ」
配膳しているとエルビスがそわそわしていて、それがとても可愛いんだ。日本酒はないのでワインとエールだが、それぞれに酒をついでやった。
「ジュンヤ」
そこまで終えると、ティアが隣をトントンとたたいたので隣にあぐらをかいて座る。
「――ジュンヤ。それは私達を誘っているのか?」
「へ?」
自分で確認したが、下着も見えてないし……普通だよな?
「あ、そうか。こっちではズボンだからはだけないもんなぁ。見苦しかったか」
正座は痺れるから体育座りにでもするかと腰を上げると、ティアがとめた。
「そのままでいい。私がニホンの文化を知らなかっただけだから、気にしなくて良い」
「そう? よかった」
正直、あぐらが1番楽なので助かる。
「あ、グラス空だね。はい、どうぞ」
ティアのグラスに白ワインを注ぐ。
「ジュンヤも飲め」
「うん。これ、フルーティーだから好きなんだ」
香りを楽しんでから口に含むと、柑橘系の香りが鼻を抜けていく。
「月、まだかなぁ」
「今夜は月が出るのが遅いのだ。それまで皆で宴を楽しもう」
「そうか~。あ、ダリウス意外はお団子初めてだよね。もちもちしてるから大丈夫かな……」
小さめに丸めたが、少しだけ心配だ。
「そういえば、月が出るまで団子は食べないでおいて。月への供物だから」
「月に供えるなんて、お前の国は面白いことをするなぁ。あ、俺は肉をいただき!」
串焼きを頬張りながら、酒を飲み始めたダリウスに思わず笑ってしまう。
「俺の国には、たくさんの神様がいるんだ。物にも神が宿る付喪神信仰ってのもあってさ。要は、物を大事にしましょうってことかなと俺は思うけど」
「そんなに神がいて、信仰問題はないのですか?」
「そうだ。1人の神に対しても考えが違うからあんなことが起きたのだぞ」
エルビスとマテリオも驚いているが、多分日本がイレギュラーなんだよな。
「他国はあるけど、日本はどの神様もみんな神様っていうところがあって寛容だと思う。だから俺も、メイリル神について何か言ったことないだろう?」
「そういえばお前に私が説明をしたときに神の否定はしなかったな」
マテリオは何度も頷きながら、1人で完結している……
「まぁ、つまりさ。揉めることもあるかもしれないけど、全部受け入れれば揉めることもないさ」
「はぁ……やっぱりジュンヤ様はすごいですね」
「ほら! エルビスもマテリオも難しいこと考えないで、月が出るまで食べていようよ! あ~んしな!」
肉は食べられないマテリオにはチーズを突っ込み、エルビスには焼き鳥を食べさせる。
「ムグ……おいひぃです」
「うむ……」
ふっふっふ……そうだろう!! タレはさらに改良した自信作だからな。
「ジュンヤ、私も」
「ん?」
振り向けば、口を開けて待つティアだ。
「まったく……何がいい?」
「チーズだ」
食べさせてやると満足そうに笑う。
「空、まだ明るいなぁ。雲もかかってる」
空を見上げると、暗くなり始めたものの雲が多い。
「だが、あと少しで一気に暗くなるぜ~。のんびり待とうや。ほら、飲むか」
「飲む!」
みんなでワイワイしながら時間を過ごすのが楽しくて仕方ない。月が見えなくてもいいかな?という気にさえなる。
「あ、急にきた!」
どんどん暗くなり始め、闇が深くなっていく。空を見つめる俺を、ティアが背後に周り抱き込んだ。
「今日は大陸では季節の変わり目の人されている。陰ると気温が下がるから、こうしていよう」
……上手いこと言って抱きつきたいだけでは? と思うがまぁいい。背中があったかいし、何よりティアの香りに包まれていい気分だ。
「ズルくねぇか? なぁ、ズルいだろ」
「殿下ばかり……私もジュンヤ様を抱っこしたいです」
「……私も」
ああ、もう! やきもち焼きばっかりだ。
「じゃあ、順番な」
こう答えれば、全員が高速で頷いた。
◇
「あ、雲がきれそう」
ほろ酔いでいい気分になった俺が抱かれているのはエルビスだ。この安定感……ママンしゅごい……
「そうですね。あ、月も見えてきましたよ」
雲の切れ間から、煌々と光を放ちながら月が覗く。
「へへ、ちゅき見っぽくらってひた~」
「そうですね、はい」
むぎゅっと抱きしめてくれるママンの腕の中で眠りたいね……
「おい、そろそろ交代だろ? な?」
「エロ団長は時間も守れないのか?」
「もう時間だって!」
「何? ……あぁ、残念です、ジュンヤ様」
「また後でな~、ひぁ?!」
エルビスの足の間から引っこ抜かれ、クマホールドを決められた。
「だりうしゅ、ちょっとらんぼうだぞ」
「悪りぃ。だって、早くこうしたかったからよぉ」
「もう~」
苦笑しながらわざと全体重をかけてやるが微動だにしない。さりげなく手がいやらしい動きになる……
「ヤラシイこと、らめ」
「ん? それはこういうのとか、こういうのか?」
「ふぁっ!」
乳首と陰茎を同時に擦られて、思わず声が出てしまった。
「エログマ、ハウス……」
「――いやか? 俺達、ずっと足がチラチラ見えてんのにお預けで、我慢してるんだぜ?」
話ながらも手の動きは止まらない。そこへ、また別の手が伸びてきた。
「おちゅきみ……」
「もう見たし、いいだろ。なぁ、エリアス」
「ああ、私も触れたかった。だめか?」
「ん、そこ、らめ……」
2人の手が胸や脇腹など、弱いところを愛撫し始めると、また手が加わった。
「あ、ふたりまで……」
「我慢していたんです、ずっと。気づいていたでしょう?」
知ってる。俺のお尻に、エルビスの欲望がずっと当たっていた。
「少しでも、触れていたい」
「あんたまで……」
「私は、いつも出遅れるから、今日は引かない」
4組の手で隅々まで弄られ、あられもない声が止まらなくなってしまう。
「そと、らめぁ、声、聞かれちゃう」
「人払いしてある」
ティア、最初からそのつもりだったのか?!
「あ、ぁあ、そんな、んあっ!」
あれ、これ本当にお月見?
もしかして、供物は俺……?
でも、いいか。
今俺達を見ているのは、天に輝く月だけだから……
ご注意。最終話まで未読の方にはネタバレ要素がありますのでお気をつけて! ストーリーには触れていませんがカップルはわかるので……
それと、このお話限定の設定を作っているので、そこはゆるりと読んでください。
番外編なので投稿当初のテンションです!
ーーーー
瘴気や狂信者の問題がようや落ち着き、余裕が出てきたころ。ベランダから空を見上げると、まもなく満月を迎えるところだった。
空を眺める余裕がなかったが、俺の心にもようやく執務以外を考える余裕ができたらしい。カルタス王国に月見の習慣がある変わらないが、食品フロアなどではお月見関連商品が並んでいるだろうなと考えていた。
そうだ! せっかくだから月見団子とか作ってみんなで月見をしよう!
「よし……! とりあえず団子と、ススキの代わりになりそうなもの……あるかな」
「ジュンヤ様? 何かお探しですか?」
エルビス! 独り言さえ聞き漏らさない優秀さよ……!
「あのさ、実は……」
俺の計画を話すと、月見の習慣はないが支度をしてくれることになった。ありがとうエルビス!
次の日、調理場でキールの実をひいて試作をしてみた。しかし、もちもちした食感はでない。くっ……そんなに甘くないか。俺の欲しいものにもち米が加わった瞬間だ。
ハンスに、もう少しもっちりした食感にしたいと相談すると粘りの強い芋を混ぜたらと言われ配合し、なんとかそれっぽくなった。
「ジュンヤ様……正直、俺は味がわからんです……」
白玉に近づいたが、みんなには物足りなく感じるだろう。
「まぁ、そうだよな」
それに、団子や餅は慣れないと喉に詰まらせてしまいそうだ。伝統に則っていなくても、雰囲気を楽しんでもらおうと思った。
そこで、食べる時はあんこ、ずんだなどをつけて食べてもらう方向にした。小豆に似た豆で作ったが、なかなかいい出来だと思う。あとはこし餡にするか粒あんにするかだが……
「おう、何してんだぁ?」
「あ、ダリウス。休憩?」
「おう。飯食いに帰ってきた」
「そうか、お疲れ……ん、んんーー!」
がっつりねっとりとキス攻撃をくらい、一瞬腰砕けになる……
「バカァ……、こんなところでするなよ」
「ん~~? パワー充填だから許せよ」
はい、俺様発言来ました!
「これ、何作ってんだ?」
「今度月見をしようと思ってさ。それで出す団子なんだ」
「ふ~ん。食っていいか?」
「いいよ」
月見団子というより餡だんごをクマに与える。
だが、いいんだ。俺よ、考えるな、感じろ……!! 雰囲気が味わえればオールOKだ!!
「ふむ……味はいいな」
「改良して欲しいところはあるか?」
「豆の皮がない方がいいかなぁ~」
「了解」
手間はかかるが、俺もこし餡派である。とりあえず味方が増えたので、独断でこし餡にすると決めた。
「改良しておくから、食事をしてこいよ」
「おう。これはもらっていくな~」
なんだかんだ言って、置いてあった小皿を一つ掻っ攫っていった。さりげない仕草なのに素早いな……
「ダリウス様、気づかないうちに持ってましたねぇ」
ハンスも目をぱちくりして驚いていた。
「まぁ、あいつはそんな奴だよ。でも、確かにこし餡の方がみんなに受ける気がするし、もうちょっと頑張ろう」
しばらくの間調理場で試行錯誤をし、月見に備えた。
◇◆◇
太陽が傾き始める前に庭に厚地のラグを敷く。クッションも置いてリラックススペースにした。普段は椅子に座ってすごす彼らだが、たまにはごろ寝をしながら月を見るのもいいと思う。
そして、収穫した果実などお供えの代わりも用意した。団子も皿に積み上げて見た目だけは月見っぽいぞ! ススキはなかったが、魔除けの意味を持つ別の植物で代用だ。
「さて……食べ物はみんなが揃ってからかな」
準備は完璧! お酒を飲みながらのんびりと月を眺めようとワクワクしていた。それに……今日は特別な格好をしている。みんなの感想が楽しみだ。
やがて、仕事を終えた面々が帰ってきて庭に集合した。そして、俺をみてフリーズしている。もっと反応があると思ったんだがなぁ。
「これ、好みじゃなかった? 日本では浴衣って言うんだけど……」
さすがに和柄は入手できないので既製の生地を使った。紺色の無地なので、この国の人間から見たら地味な印象かもしれない。それが好みじゃなかったのかな……?
「いや。そんなことはない。驚いただけだ。もっとよく見せてくれ」
ティアが近づいて、真剣な眼差しで上から下までじっくりと観察していく。そう、まさに観察、である。なんか怖い。
そんなにみられるとむず痒いな……
もじもじしている俺を、今度はダリウスが舐め回すようにみている。
「おい、これはヤバイだろ……」
「何が?」
「まぁ、いいや」
「なんだよ!」
気になるからちゃんと言えよな!
隣にいるエルビスは、手伝ってくれたので一足早くみているが、俺をみてずーっとニコニコしている。
「美しいです。毎日美しいですが、ジュンヤ様のお着替えも全部私が手がけていると思うと幸せでどうにかなりそうです」
エルビスの賛辞に思わず照れてしまう。
「…………」
マテリオも石像になってしまった……
「マテリオ? どうした?」
「けしからん姿だ……」
「あんたも何言ってんだ……? まぁいいや! ほら、みんなここに座って!」
みんなを座らせ、控えていたハンスがワゴンに乗せた団子を持ってきてくれた。ついでに、酒とつまみもだ。軽食を食べながら、みんなでゆったり過ごすんだ。
「ジュンヤ様、私も手伝います」
「今日はいいの!! エルビスもたまには休みなよ」
配膳しているとエルビスがそわそわしていて、それがとても可愛いんだ。日本酒はないのでワインとエールだが、それぞれに酒をついでやった。
「ジュンヤ」
そこまで終えると、ティアが隣をトントンとたたいたので隣にあぐらをかいて座る。
「――ジュンヤ。それは私達を誘っているのか?」
「へ?」
自分で確認したが、下着も見えてないし……普通だよな?
「あ、そうか。こっちではズボンだからはだけないもんなぁ。見苦しかったか」
正座は痺れるから体育座りにでもするかと腰を上げると、ティアがとめた。
「そのままでいい。私がニホンの文化を知らなかっただけだから、気にしなくて良い」
「そう? よかった」
正直、あぐらが1番楽なので助かる。
「あ、グラス空だね。はい、どうぞ」
ティアのグラスに白ワインを注ぐ。
「ジュンヤも飲め」
「うん。これ、フルーティーだから好きなんだ」
香りを楽しんでから口に含むと、柑橘系の香りが鼻を抜けていく。
「月、まだかなぁ」
「今夜は月が出るのが遅いのだ。それまで皆で宴を楽しもう」
「そうか~。あ、ダリウス意外はお団子初めてだよね。もちもちしてるから大丈夫かな……」
小さめに丸めたが、少しだけ心配だ。
「そういえば、月が出るまで団子は食べないでおいて。月への供物だから」
「月に供えるなんて、お前の国は面白いことをするなぁ。あ、俺は肉をいただき!」
串焼きを頬張りながら、酒を飲み始めたダリウスに思わず笑ってしまう。
「俺の国には、たくさんの神様がいるんだ。物にも神が宿る付喪神信仰ってのもあってさ。要は、物を大事にしましょうってことかなと俺は思うけど」
「そんなに神がいて、信仰問題はないのですか?」
「そうだ。1人の神に対しても考えが違うからあんなことが起きたのだぞ」
エルビスとマテリオも驚いているが、多分日本がイレギュラーなんだよな。
「他国はあるけど、日本はどの神様もみんな神様っていうところがあって寛容だと思う。だから俺も、メイリル神について何か言ったことないだろう?」
「そういえばお前に私が説明をしたときに神の否定はしなかったな」
マテリオは何度も頷きながら、1人で完結している……
「まぁ、つまりさ。揉めることもあるかもしれないけど、全部受け入れれば揉めることもないさ」
「はぁ……やっぱりジュンヤ様はすごいですね」
「ほら! エルビスもマテリオも難しいこと考えないで、月が出るまで食べていようよ! あ~んしな!」
肉は食べられないマテリオにはチーズを突っ込み、エルビスには焼き鳥を食べさせる。
「ムグ……おいひぃです」
「うむ……」
ふっふっふ……そうだろう!! タレはさらに改良した自信作だからな。
「ジュンヤ、私も」
「ん?」
振り向けば、口を開けて待つティアだ。
「まったく……何がいい?」
「チーズだ」
食べさせてやると満足そうに笑う。
「空、まだ明るいなぁ。雲もかかってる」
空を見上げると、暗くなり始めたものの雲が多い。
「だが、あと少しで一気に暗くなるぜ~。のんびり待とうや。ほら、飲むか」
「飲む!」
みんなでワイワイしながら時間を過ごすのが楽しくて仕方ない。月が見えなくてもいいかな?という気にさえなる。
「あ、急にきた!」
どんどん暗くなり始め、闇が深くなっていく。空を見つめる俺を、ティアが背後に周り抱き込んだ。
「今日は大陸では季節の変わり目の人されている。陰ると気温が下がるから、こうしていよう」
……上手いこと言って抱きつきたいだけでは? と思うがまぁいい。背中があったかいし、何よりティアの香りに包まれていい気分だ。
「ズルくねぇか? なぁ、ズルいだろ」
「殿下ばかり……私もジュンヤ様を抱っこしたいです」
「……私も」
ああ、もう! やきもち焼きばっかりだ。
「じゃあ、順番な」
こう答えれば、全員が高速で頷いた。
◇
「あ、雲がきれそう」
ほろ酔いでいい気分になった俺が抱かれているのはエルビスだ。この安定感……ママンしゅごい……
「そうですね。あ、月も見えてきましたよ」
雲の切れ間から、煌々と光を放ちながら月が覗く。
「へへ、ちゅき見っぽくらってひた~」
「そうですね、はい」
むぎゅっと抱きしめてくれるママンの腕の中で眠りたいね……
「おい、そろそろ交代だろ? な?」
「エロ団長は時間も守れないのか?」
「もう時間だって!」
「何? ……あぁ、残念です、ジュンヤ様」
「また後でな~、ひぁ?!」
エルビスの足の間から引っこ抜かれ、クマホールドを決められた。
「だりうしゅ、ちょっとらんぼうだぞ」
「悪りぃ。だって、早くこうしたかったからよぉ」
「もう~」
苦笑しながらわざと全体重をかけてやるが微動だにしない。さりげなく手がいやらしい動きになる……
「ヤラシイこと、らめ」
「ん? それはこういうのとか、こういうのか?」
「ふぁっ!」
乳首と陰茎を同時に擦られて、思わず声が出てしまった。
「エログマ、ハウス……」
「――いやか? 俺達、ずっと足がチラチラ見えてんのにお預けで、我慢してるんだぜ?」
話ながらも手の動きは止まらない。そこへ、また別の手が伸びてきた。
「おちゅきみ……」
「もう見たし、いいだろ。なぁ、エリアス」
「ああ、私も触れたかった。だめか?」
「ん、そこ、らめ……」
2人の手が胸や脇腹など、弱いところを愛撫し始めると、また手が加わった。
「あ、ふたりまで……」
「我慢していたんです、ずっと。気づいていたでしょう?」
知ってる。俺のお尻に、エルビスの欲望がずっと当たっていた。
「少しでも、触れていたい」
「あんたまで……」
「私は、いつも出遅れるから、今日は引かない」
4組の手で隅々まで弄られ、あられもない声が止まらなくなってしまう。
「そと、らめぁ、声、聞かれちゃう」
「人払いしてある」
ティア、最初からそのつもりだったのか?!
「あ、ぁあ、そんな、んあっ!」
あれ、これ本当にお月見?
もしかして、供物は俺……?
でも、いいか。
今俺達を見ているのは、天に輝く月だけだから……
66
お気に入りに追加
12,854
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。