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ハネムーン編
ハネムーン編 エリアス 5 最終話
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宿に到着した日、俺たちはエッチ三昧の時間を過ごしてしまった。ずっとエッチ。寝ても覚めてもエッチエッチエッチ——
目覚めた時は次の日になっていた。しかも昼過ぎで、ソウガさんが俺たちに食事を勧めて来て、ようやく服を着たという有様だった。
「ふぅ。もっとジュンヤと怠惰な時間を楽しみたかったのに」
「ん~。でも、おなかも空いたし。エッチもいいけど、ティアとデートがしたいなぁ。ダメか?」
「デートか……あの一度以来、それらしい時間は取れなかったな」
「だろう? な? 俺、ティアと二人でこの町の見物がしたいな」
「ああ、そうしよう。ただ、この美しい妻を他人に見られたくないが……見せびらかしたい気持ちもある。こんな気持ちは初めてだ」
俺たちは笑いあいながら食事をして、ティアも初めてみる新しい町を楽しみにしていた。
「ジュンヤ、手を繋ごう」
「いいよ」
えっへへ~!! 恋人つなぎですよ! 護衛が距離を置いているとはいえ、ダリウスたちもいない、初めての二人きりでデートだ!
とはいえ、まだ出来立てホヤホヤの町なので、ちょっと歩けば一周できてしまう。でも、あちこちに趣向を凝らした湯宿がたくさん立っていた。俺たちが泊まっているのは、当然だけど一番高級な宿だ。
「温泉街ってのが元の世界にあってさ。それに、湯治って言って、長期宿泊して体を癒やす場所もあるんだよ。関節痛なんかに効くお湯が沸いてたりするんだ」
「ほう。それは面白いな。国内が安定したら、観光地として海外からの客を呼び込むのもよ良いかもしれない」
「それいいね! あ~、温泉まんじゅう食べた~い! 甘いあんこが食べたいよ~」
「あんこ?」
「小豆っていう豆を甘く煮てつぶして漉すんだ。すっごく美味しいよ。小豆に変わる何かを探すか」
ディズを試食したけど、大豆に似ていた。だから、きっと小豆に似た豆も見つかるはずだ。白あんでもいいしな。ずんだという手もある……
「ふふふ。ジュンヤのそんな顔が好きだ」
「えっ? 俺、どんな顔してる?」
「ワクワクして、楽しくて仕方がないという顔だ。見ていて私もワクワクする。こんな風に気持ちが高揚するのは、おまえといる時だけだ」
「ティア……えへへ」
ギュッと手を握り直してほほ笑み合う。やばいよ、幸せだよ。俺の旦那様、イケメンで仕事ができて可愛いとか、完璧すぎない?
周囲の客たちは俺たちに気がついているけど、ハネムーンだと知っているからか、そっと礼をして遠巻きにしていてくれる。でもさ、みんなちょっと顔が赤くて、やっぱり俺の香りのせいかなぁ。
ラドクルトたちが距離を取るようにしてくれてるからいいけど、慣れないとフラフラ引き寄せられてしまう人がいるらしいんだ。
「んん? なんかいい匂い、というかピザっぽい香りがする」
「確かにそうだな」
屋台が並ぶ通りに出ると、小さいけれどたくさんの店があった。お客さんを退かすのは悪いので、普通にしてもらった。それに、買い物って人がいる中でするから楽しんだ。
食事の後だからたくさんは食べられないので、小さいものをもらって二人で食べてみた。
「うん、似てるけど微妙に味付けを変えて個性が出てるね」
「マネをしたと怒らないのか?」
「レシピを盗んだわけじゃないし怒らないよ。それに、このピザ生地はこの人のオリジナルだね。キールじゃない……もちっとしてて美味しい」
「わが国独特の食文化を発展させて、より良い貿易の先駆けとしたいな」
「俺の国もそうだったよ。他の国にないものを売りにしてた。輸出しても良いし、観光立国にしても良いよね」
俺たちはこの小さな町の逞しさに、今後の道標をもらった気がしていた。
「これまでは、国力が弱り始めていて国境も厳重に警備をしていた。今後は平和的な方法で各国と手を結び、互いに有益な発展をしていきたい。民が飢えず、幸せな生涯を送れる国にしていきたい」
「ティアならできる。俺も手伝うから、政治の事、もう少し勉強したい」
「では、教師がいるな。そうだ、バレットはどうだ? 必要に応じて専門家を選定するが、彼は広い知識がある」
「わぁ! 嬉しい! ありがとう!!」
俺もティアの役に立ちたい。その最初の一歩だ。
「一緒に頑張ろう!!」
「ああ。隣にジュンヤがいるだけで心強い」
ニコッとしたティアがキラキラして見えた。王子様オーラすごい!! もうすぐ王様オーラになるんだけどな!!
離れところからも、ティアの笑顔にやられた人々の野太い悲鳴が聞こえた。
(はぁ~。本当にティアは綺麗だ……)
「ジュンヤ、他の湯宿も視察をしてみないか? この町をさらに発展させるなら、もっと詳しく現状を知らねば」
(あ~あ。またお仕事モードになっちゃって。そんな真面目なところも好きなんだけどな)
「良いよ、見せてもらおう」
一軒目はいわゆるサウナだった。床の下に湯を引いてサウナっぽくしていた。
「おお~、考えたな」
「わが国はもともと、湯に浸かるのは貴族の嗜みとされていた。庶民は水浴びや清拭が多かったのだ。だから湯に浸かるのは慣れていない。こういった形であれば、湯あみに慣れない民も入りやすいと考えたのだな」
「なるほど」
確かに、巡行中は清拭になることも多かった。次に行ったのは、俺たちの宿よりずっとぬるい湯で、日本人としては追い焚きをしてくれ! と言いたくなった。元の湯はそこそこ熱いのだが、水で温くしていると言う。
ゆっくり温まって、マッサージしたりするんだって。
(入浴に慣れていないならこんなもんかぁ)
だがしかし! 熱い湯に入ってスッキリする快感も教えてやりたいなぁ。
「ジュンヤ。この町を任せても良いか?」
「えっ? そんな、大事業だよ!?」
「いや。いずれ、ジュンヤの力が必要になる。それならば、最初から任せたほうがいい。私は、道路の整備を大々的に行うつもりなのだ。仕事を失った民のための公共事業だが、病の後遺症で力仕事ができない者もいる。そんな彼らに商売を教えてやってくれ」
「そんな大事なことを任せてくれるんだな」
「信頼しているからだ」
ああ、こんなに嬉しいことがあるか? 俺たちの目指す新しい国の未来と、新しい町おこしを任されるなんて、愛だけじゃできやしない。
「俺、やるよ」
信頼に応えて見せる。
「そう言ってくれると思っていた」
——氷の王子。
その名前は、もう過去のものだ。俺がいる限り、ティアを悲しませたりしない。いや、きっと厳しい決断をするときは、心を凍らせなきゃいけないんだろう。
そんな時でも、俺は決してティアの心を凍らせたままでいさせない。
これが、俺の愛だ。
「きっと、もっともっと、良い国になるよ」
「そうだな。必ずやり遂げてみせる」
キリッと顔を引き締めた未来の王は、決意と覚悟に満ちていて誰とも違う強いオーラを放っている。
「いつも俺がついてるから。それと……早く、ティアに似た子が欲しいなぁ」
「っ?! 良いのか?」
「うん。きっとティアに似たかっこいい子じゃないかな」
「ジュンヤに似て欲しいが、虫が沸きそうだな……」
「あははっ!! 生まれてもないのに、もう親バカ?」
もう、覚悟を決めた。愛する人の子供を産むって……
「そうなると、ジュンヤを毎日愛してやらねばならないし、即位前が良いだろう……妊娠中に多数の儀礼をこなすのは酷だ。執務の調整もしなければ。それから——」
ティアは、ぶつぶつと脳内スケジュールを組み始める。しかも、めちゃくちゃ真剣な顔で!
(浮気の心配はまったくしてないけど、俺の最大のライバルは王国かもしれない)
二人きりの時間を楽しんでいたはずが、すぐに国の将来に思いを馳せている。
(真剣な顔が大好きなんだ。でも、優しくほほ笑むところもいっぱいみたい……)
「ふふふっ。ティーア! 今は、ハネムーンを楽しもう? なぁ、耳、貸して?」
屈んでくれたその耳に、口を寄せる。
「もう少しだけ待って。だってさ、イチャイチャする時間が欲しいんだ。でも、胎珠を準備しても良いよ……」
「ジュンヤッ!!」
ティアは感極まったように叫んで、俺を抱き上げた。
「楽しみだ。ジュンヤの黒を引き継いでくれたらどれほど嬉しいか。だが、元気ならばそれだけでいい!」
「うん。あのさ……そうしたら、いっぱいエッチしなきゃね」
こそっと囁くと、ティアが満面の笑みをたたえて俺を見つめた。
「皆がやきもちを焼いて怒り出すくらい可愛がってやる」
「お手柔らかにお願いします、旦那様」
喜びが抑え切れないのか、ティアの魔力が溢れて周囲に氷の粒がキラキラと舞っていた。俺はその魔力に、浄化と治癒を乗せた。
キラッ! パチパチッ! キラッ!
七色に輝くそれは、まるで星の輝きのようで、周囲から拍手と感嘆の声が聞こえた。
「ティア。俺、幸せだよ。この世界に来て良かった」
俺がキスをすると周囲から悲鳴のような歓声が上がる。ああ~もう! 見られてるけど、開き直ってやる!!
「ジュンヤ。この世界に来てくれてありがとう。——私を救ってくれてありがとう」
「そんな……」
俺はそんなつもりじゃなかったけど、ティアの心に開いた穴を埋めてあげられたんだろうか。もしもそうなら、こんなに嬉しいことはない。
「俺もティアに出会えて良かった。俺の方こそ、守り通してくれて感謝してる。ずっと一緒にいるからな」
言葉にしても、それだけじゃ全然足りない気がする。言いたいことはたくさんあるのに、言葉にして伝えるのは難しい。
出会えたこと。一緒にいられること。たったそれだけが、こんなに幸せをくれる——
それに、孤独に苛まれた王子様は、もう孤独じゃない。
(大好きだよ……)
もう一度キスをして、改めてティアを幸せにするんだと決意した。
ティアの信頼に応えて、町と一緒に俺も成長しよう。愛する人を支えていくって決めたんだから——
ーーーー
殿下編は終わりです。S方面に走らずに、初めてこんなにイチャイチャさせてあげた気がします。ついでにフラグが立ったかも。続編を書いたら、延々とエッチシーンになりそうですね。
次はエルビスファンの方、お待たせしました~。甘々スイートなハネムーンをお送りします。とはいえ、絶賛執筆中です!
でも、エルビスのお話は、きっとスイスイかけるはず……では、最後のハネムーン編でお会いしましょう。
目覚めた時は次の日になっていた。しかも昼過ぎで、ソウガさんが俺たちに食事を勧めて来て、ようやく服を着たという有様だった。
「ふぅ。もっとジュンヤと怠惰な時間を楽しみたかったのに」
「ん~。でも、おなかも空いたし。エッチもいいけど、ティアとデートがしたいなぁ。ダメか?」
「デートか……あの一度以来、それらしい時間は取れなかったな」
「だろう? な? 俺、ティアと二人でこの町の見物がしたいな」
「ああ、そうしよう。ただ、この美しい妻を他人に見られたくないが……見せびらかしたい気持ちもある。こんな気持ちは初めてだ」
俺たちは笑いあいながら食事をして、ティアも初めてみる新しい町を楽しみにしていた。
「ジュンヤ、手を繋ごう」
「いいよ」
えっへへ~!! 恋人つなぎですよ! 護衛が距離を置いているとはいえ、ダリウスたちもいない、初めての二人きりでデートだ!
とはいえ、まだ出来立てホヤホヤの町なので、ちょっと歩けば一周できてしまう。でも、あちこちに趣向を凝らした湯宿がたくさん立っていた。俺たちが泊まっているのは、当然だけど一番高級な宿だ。
「温泉街ってのが元の世界にあってさ。それに、湯治って言って、長期宿泊して体を癒やす場所もあるんだよ。関節痛なんかに効くお湯が沸いてたりするんだ」
「ほう。それは面白いな。国内が安定したら、観光地として海外からの客を呼び込むのもよ良いかもしれない」
「それいいね! あ~、温泉まんじゅう食べた~い! 甘いあんこが食べたいよ~」
「あんこ?」
「小豆っていう豆を甘く煮てつぶして漉すんだ。すっごく美味しいよ。小豆に変わる何かを探すか」
ディズを試食したけど、大豆に似ていた。だから、きっと小豆に似た豆も見つかるはずだ。白あんでもいいしな。ずんだという手もある……
「ふふふ。ジュンヤのそんな顔が好きだ」
「えっ? 俺、どんな顔してる?」
「ワクワクして、楽しくて仕方がないという顔だ。見ていて私もワクワクする。こんな風に気持ちが高揚するのは、おまえといる時だけだ」
「ティア……えへへ」
ギュッと手を握り直してほほ笑み合う。やばいよ、幸せだよ。俺の旦那様、イケメンで仕事ができて可愛いとか、完璧すぎない?
周囲の客たちは俺たちに気がついているけど、ハネムーンだと知っているからか、そっと礼をして遠巻きにしていてくれる。でもさ、みんなちょっと顔が赤くて、やっぱり俺の香りのせいかなぁ。
ラドクルトたちが距離を取るようにしてくれてるからいいけど、慣れないとフラフラ引き寄せられてしまう人がいるらしいんだ。
「んん? なんかいい匂い、というかピザっぽい香りがする」
「確かにそうだな」
屋台が並ぶ通りに出ると、小さいけれどたくさんの店があった。お客さんを退かすのは悪いので、普通にしてもらった。それに、買い物って人がいる中でするから楽しんだ。
食事の後だからたくさんは食べられないので、小さいものをもらって二人で食べてみた。
「うん、似てるけど微妙に味付けを変えて個性が出てるね」
「マネをしたと怒らないのか?」
「レシピを盗んだわけじゃないし怒らないよ。それに、このピザ生地はこの人のオリジナルだね。キールじゃない……もちっとしてて美味しい」
「わが国独特の食文化を発展させて、より良い貿易の先駆けとしたいな」
「俺の国もそうだったよ。他の国にないものを売りにしてた。輸出しても良いし、観光立国にしても良いよね」
俺たちはこの小さな町の逞しさに、今後の道標をもらった気がしていた。
「これまでは、国力が弱り始めていて国境も厳重に警備をしていた。今後は平和的な方法で各国と手を結び、互いに有益な発展をしていきたい。民が飢えず、幸せな生涯を送れる国にしていきたい」
「ティアならできる。俺も手伝うから、政治の事、もう少し勉強したい」
「では、教師がいるな。そうだ、バレットはどうだ? 必要に応じて専門家を選定するが、彼は広い知識がある」
「わぁ! 嬉しい! ありがとう!!」
俺もティアの役に立ちたい。その最初の一歩だ。
「一緒に頑張ろう!!」
「ああ。隣にジュンヤがいるだけで心強い」
ニコッとしたティアがキラキラして見えた。王子様オーラすごい!! もうすぐ王様オーラになるんだけどな!!
離れところからも、ティアの笑顔にやられた人々の野太い悲鳴が聞こえた。
(はぁ~。本当にティアは綺麗だ……)
「ジュンヤ、他の湯宿も視察をしてみないか? この町をさらに発展させるなら、もっと詳しく現状を知らねば」
(あ~あ。またお仕事モードになっちゃって。そんな真面目なところも好きなんだけどな)
「良いよ、見せてもらおう」
一軒目はいわゆるサウナだった。床の下に湯を引いてサウナっぽくしていた。
「おお~、考えたな」
「わが国はもともと、湯に浸かるのは貴族の嗜みとされていた。庶民は水浴びや清拭が多かったのだ。だから湯に浸かるのは慣れていない。こういった形であれば、湯あみに慣れない民も入りやすいと考えたのだな」
「なるほど」
確かに、巡行中は清拭になることも多かった。次に行ったのは、俺たちの宿よりずっとぬるい湯で、日本人としては追い焚きをしてくれ! と言いたくなった。元の湯はそこそこ熱いのだが、水で温くしていると言う。
ゆっくり温まって、マッサージしたりするんだって。
(入浴に慣れていないならこんなもんかぁ)
だがしかし! 熱い湯に入ってスッキリする快感も教えてやりたいなぁ。
「ジュンヤ。この町を任せても良いか?」
「えっ? そんな、大事業だよ!?」
「いや。いずれ、ジュンヤの力が必要になる。それならば、最初から任せたほうがいい。私は、道路の整備を大々的に行うつもりなのだ。仕事を失った民のための公共事業だが、病の後遺症で力仕事ができない者もいる。そんな彼らに商売を教えてやってくれ」
「そんな大事なことを任せてくれるんだな」
「信頼しているからだ」
ああ、こんなに嬉しいことがあるか? 俺たちの目指す新しい国の未来と、新しい町おこしを任されるなんて、愛だけじゃできやしない。
「俺、やるよ」
信頼に応えて見せる。
「そう言ってくれると思っていた」
——氷の王子。
その名前は、もう過去のものだ。俺がいる限り、ティアを悲しませたりしない。いや、きっと厳しい決断をするときは、心を凍らせなきゃいけないんだろう。
そんな時でも、俺は決してティアの心を凍らせたままでいさせない。
これが、俺の愛だ。
「きっと、もっともっと、良い国になるよ」
「そうだな。必ずやり遂げてみせる」
キリッと顔を引き締めた未来の王は、決意と覚悟に満ちていて誰とも違う強いオーラを放っている。
「いつも俺がついてるから。それと……早く、ティアに似た子が欲しいなぁ」
「っ?! 良いのか?」
「うん。きっとティアに似たかっこいい子じゃないかな」
「ジュンヤに似て欲しいが、虫が沸きそうだな……」
「あははっ!! 生まれてもないのに、もう親バカ?」
もう、覚悟を決めた。愛する人の子供を産むって……
「そうなると、ジュンヤを毎日愛してやらねばならないし、即位前が良いだろう……妊娠中に多数の儀礼をこなすのは酷だ。執務の調整もしなければ。それから——」
ティアは、ぶつぶつと脳内スケジュールを組み始める。しかも、めちゃくちゃ真剣な顔で!
(浮気の心配はまったくしてないけど、俺の最大のライバルは王国かもしれない)
二人きりの時間を楽しんでいたはずが、すぐに国の将来に思いを馳せている。
(真剣な顔が大好きなんだ。でも、優しくほほ笑むところもいっぱいみたい……)
「ふふふっ。ティーア! 今は、ハネムーンを楽しもう? なぁ、耳、貸して?」
屈んでくれたその耳に、口を寄せる。
「もう少しだけ待って。だってさ、イチャイチャする時間が欲しいんだ。でも、胎珠を準備しても良いよ……」
「ジュンヤッ!!」
ティアは感極まったように叫んで、俺を抱き上げた。
「楽しみだ。ジュンヤの黒を引き継いでくれたらどれほど嬉しいか。だが、元気ならばそれだけでいい!」
「うん。あのさ……そうしたら、いっぱいエッチしなきゃね」
こそっと囁くと、ティアが満面の笑みをたたえて俺を見つめた。
「皆がやきもちを焼いて怒り出すくらい可愛がってやる」
「お手柔らかにお願いします、旦那様」
喜びが抑え切れないのか、ティアの魔力が溢れて周囲に氷の粒がキラキラと舞っていた。俺はその魔力に、浄化と治癒を乗せた。
キラッ! パチパチッ! キラッ!
七色に輝くそれは、まるで星の輝きのようで、周囲から拍手と感嘆の声が聞こえた。
「ティア。俺、幸せだよ。この世界に来て良かった」
俺がキスをすると周囲から悲鳴のような歓声が上がる。ああ~もう! 見られてるけど、開き直ってやる!!
「ジュンヤ。この世界に来てくれてありがとう。——私を救ってくれてありがとう」
「そんな……」
俺はそんなつもりじゃなかったけど、ティアの心に開いた穴を埋めてあげられたんだろうか。もしもそうなら、こんなに嬉しいことはない。
「俺もティアに出会えて良かった。俺の方こそ、守り通してくれて感謝してる。ずっと一緒にいるからな」
言葉にしても、それだけじゃ全然足りない気がする。言いたいことはたくさんあるのに、言葉にして伝えるのは難しい。
出会えたこと。一緒にいられること。たったそれだけが、こんなに幸せをくれる——
それに、孤独に苛まれた王子様は、もう孤独じゃない。
(大好きだよ……)
もう一度キスをして、改めてティアを幸せにするんだと決意した。
ティアの信頼に応えて、町と一緒に俺も成長しよう。愛する人を支えていくって決めたんだから——
ーーーー
殿下編は終わりです。S方面に走らずに、初めてこんなにイチャイチャさせてあげた気がします。ついでにフラグが立ったかも。続編を書いたら、延々とエッチシーンになりそうですね。
次はエルビスファンの方、お待たせしました~。甘々スイートなハネムーンをお送りします。とはいえ、絶賛執筆中です!
でも、エルビスのお話は、きっとスイスイかけるはず……では、最後のハネムーン編でお会いしましょう。
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