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3章

恋人には甘いんです

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「殿下っ! ジュンヤ様っ!! これは興に乗りすぎです!!」

 俺とティアは、ソウガさんに絶賛叱られ中です。エルビスも隣にいて、こめかみに血管が浮いて肩もプルプルしていますよ。
 叱られている理由は、動けないのもありますが…。あのね、縛りプレイ楽しみすぎたんですよねぇ。痕があちこちにっ!

「殿下……ワタクシ、お小さい頃からお仕えしておりますが、この様なご無体をなさるとは嘆かわしい!! 侍従の身ではありますが、こればかりは見逃せませんっ!」
「ソウガよ、これはジュンヤの望みだから無体はしていないぞ」
「えっ? まさかっ?!」
「ソ、ソウガさんっ! あの、本当です! 俺が言いました!! だからティアを怒らないでください……」

 うーわーっ!! はーずーかーしーい!! これじゃ俺はドMです宣言じゃないか~!

 プレイはほどほどにっ!! 心から反省しましたよ……

「そ、そうですか。同意の上でしたら、私から言うことはございません。ですが、お御足は見えないとして、その手首は見えてしまいます。神官に治癒をお願いしましょうか?」
「いや。ジュンヤを癒すのは庇護者が一番だ。他の庇護者が癒せば治る。エルビスのキスが良いだろう」
「長袖と何かで隠せば良いよ。エルビスに悪いから」

 こんなティアとのエッチの後でエルビスに頼むのは酷くない? そのうち痕は消えると思うので、服で隠せば良い。

「いいえ! 私がさせて頂きます!」

 ずいっと前に出て来るエルビス 。

「エルビス?」
「クックック。この男も存外やきもち焼きなのだぞ?」

 相手がティアの時は極力気持ちを抑えているエルビスも、これは我慢が出来ないらしい。でも、ソウガさんがいるし、と思ったら、一瞬で消えていた。侍従長恐るべし。

「ジュンヤ様。私ではお嫌ですか?」
「そんな訳ないだろ? んっ、んぅ……はぁ」

 キスして、コクリと飲み干して。美味しい……もっと……

「朝からそんな可愛いお顔をして。これでは外にお連れ出来ないですよ?」
「なんでぇ? えるびしゅ、もっかい。あ~ん」
「ああ、もうっ!」

 ちゅっちゅっ……レロレロ……美味しいの、いっぱいほしい。

 唇が離れても寂しくて、ぼんやりと見つめている。

「ふむ……これは誰にも見せたくないな。エルビス、落ち着くまで様子を見て浄化を行う事とする。痕は少し薄れたな。これなら、時々口づけてやれば消えるだろう」
「畏まりました。皆には、ジュンヤ様は旅の疲れが出たと伝達しておきます」
「おれ、だいじょうぶだよ?」

 甘い力でふわふわしてるけど、多分大丈夫。

「レナッソーでは気が抜けませんでしたが、こちらなら安心出来そうですし、少しお休み下さい」
「でも、先に行かなきゃ……」
「ジュンヤ。午後まで休んでからにしよう。私も共に行きたいが仕事があるのだ。だから午後に一緒に街に出てくれるか? その方が都合が良いのだ」
「わかった」

 俺を気遣って、自分の都合に合わせくれって言ってくれてるんだな……優しい!!
 実際腰は抜けてるし、今日中に始めれば良いよな。どこかでマテリオと合流しなきゃ行けないし。

「さぁ、ではもう少し横になっていてください。食事もこちらにお持ちしますね」

 二人でベッドで食べると言う贅沢をして、ティアが午前の執務に向かって行った。食事が終われば、ふわふわは消えていていつも通りになり、ベッドでお茶をしていた。

「ジュンヤ様。実はダリウスが来ています。通しても良いですか?」

 ダリウス——多分何か言われるけど、断ったら多分凹んじゃうだろうな。オーケーして入ってきたダリウスは、明らかに拗ねていた。エルビスは隣で控えていると言う。

「ダリウス、そんな顔をするなよぉ」
「だってよ。昨夜はずいぶんエリアスとお楽しみだったそうじゃないか」
「それは……でも、ティアは圧倒的に俺といる時間が短いから、たまにだと、ちょっとハードになるみたいだなぁ」
「それは分かってるよ。でも妬けるんだよ。手ぇ、見せてみろよ」
「ん」

 エルビスとキスして少し赤みは減ったけど、やっぱり痕は残っている。

「俺ともキスしようぜ? 良いだろ?」
「しょうがないなぁ」

 ちゅっとキスして抱きしめられて……腕の中にすっぽり収まると落ち着くんだ。

「ダリウスとは結講エッチもキスもしてるだろ? ティアはせいぜいキスだけでさ。それに、痩せてたから心配だ」
「ああ……心労が続いたからな」
「だから見逃してよ」

 俺を抱き上げ膝に乗せ、がっしりとホールドして、ちょっと不満げに口を尖らせる。

「原因はエリアスだけじゃねぇよ。分かってるだろう?」
「——背中を押した癖に」
「それでも、あんなの見せられるとなぁ~。失敗したなぁ~って思うだろう?」

 あんなのって言うのは恋人宣言か。確かに大胆な事しちゃったな。

「あれさぁ——訳があるんだ」
「神官同士がヤってるって話、だろう?」
「知ってたのか?」
「良いや。あの後、移動中にウォーベルトに聞いた。あっちはあっちでめんどくせぇな」
「うん。その事で正直キレてたからさ」

 かなりめちゃくちゃした自覚がある。あんな……オープンスペースでエッチとか!

「キレると結講無茶するよな? ハハハッ!」
「あー。今回は無茶したねぇ」
「そんなところが好きなんだけどな。今日は午前は休むが、午後は動けそうか? マテリオ達が追いつくまでは、移動は調整しながらだしな。とんでもない所で野営で待つのは避けるつもりだ」
「そうだね。村に滞在も迷惑をかけるし。」
「とはいえ、グスタフの治癒がスパッと終われば三日遅れくらいだろうさ。ところで……俺にもご褒美あるだろう?」

 やっぱりおねだりか。うん。あると思ってましたけどね。

「なぁ。巡行が終わってからで良いから、色々使って良いか?」
「つっ、使うって……アナトリーサクって奴!?」
「そうそう。評判が良ければ販売もするらしいぜ」
「販売っ?!」
「当然だ。あいつの開発費はパッカーリア商会から出てるから、基本的に販売目的だからな。夜のアイテムはなかなかの作品だぞぉ?」

 ニヤニヤと俺を見つめて、悪戯っ子の様だ。からかってるな? まったくもう!

「まぁ良いよ。俺のお願い聞いてくれたから、使っても良い。良いけど!! あまりにも変なのは嫌だからなっ!」
「よっしゃぁ~~!! 楽しみにしてろよ? あ、心配すんな。イク時は俺のでイかせてやるからな?」
「ばか! エロ団長! エロしかないのか?!」
「へっへ~! 約束だからなぁ~? よっしゃ!! 約束もしたし、午後出かけても良いように警備計画立てて来るぜ。もうちょい休んでな?」
「んっ?! んん~~!!」

 ディープキスで散々口腔を嬲り倒してから、サッと切り替えて出て行った。

「あのやろ……」
「ジュンヤ様? 入っても良いですか?」
「うん、大丈夫」
「あの男、ずいぶん浮かれていましたが、変な事はされませんでしたか? 大丈夫ですか?」
 
 いやぁ、エルビスのエロ団長への信頼は空っぽですね。確かに変な約束はしたけど、忘れてくれないかなぁと期待しておこう。

「多分大丈夫。えっと、動けるようになったら浄化に行きたいなぁ。自業自得で申し訳ないけど」
「いずれは、殿下に抱き潰されていたでしょうから、今か後かの違いです。殿下も馬車より、ベッドをお望みでしたしね」
「うっ! そう言う話をするんだ?」
「もちろん。私はよく殿下に羨ましがられます。侍従の私を王子が羨むなんて。ふふふ、不思議ですよね」
「ハハハッ! そんな事があったんだ~」
「侍従で苦しい時もありましたが、やはり私は一番得をしていますね」

 トクン……と鼓動が早くなり、温かい気持ちが湧き上がる。蕩けるような笑顔を向けられて、本当に、エルビスがいてくれて幸せだ。これであいつも揃っていたら。——
「俺も、エルビスが侍従で運が良かった。違う人だったら、どうなっていたかな」
「もしも陛下が選定した者だったら——考えたくもありませんね」
「そうだな。暗い話はやめだ! この街の現状を分かってる範囲で教えてくれるかな?」

 午後になればどうにか動ける筈。頑張っている人達がいるのに、ただ横になっているなんて勿体ない。エルビスに頼んでソファに移動させて貰い、資料に目を通したり汚染をいかにして抑えるかのポイントを探る事に時間を費やした。

「話が聞ける人、いるかな」
「街の人間ではありませんが、この街に詳しい男がいるにはいます。しかし」

 歯切れの悪い返答に違和感を感じた。

「何か不都合があるのか?」
「ロドリゴ様の兄、レミージョです」
「ああ。」

 あのゴリマッチョか。レイプ後の全裸を見られてますね。

「正直、今のジュンヤ様を身内以外に見せたくありません。下手をすると襲いかかりかねませんし」
「俺、そんな感じ?」
「はい。出来るなら、動けるようになってもお外に出したくありません。それくらい、艶やかで良い香りで、慣れていても、時折くらりとします」
「うう~ん。それは困るなぁ。レミージョさんか。午後の浄化に帯同くらいなら大丈夫かな? 護衛もいるし」
「それならば、どうにか。ダリウスに伝えます。ウォーベルトとラドクルトと神兵は確定ですが、追加と周辺の警護組と。ちょっと行ってきます。ここは二人に任せますね」

 エルビスが出て行って、いろいろな手筈をしてくれた。午後は動ける様になって、短い間だが近い場所をチェックする事になった。
 そして、とうとうあのレミージョとまた対面する。あの時の俺の姿は忘れて欲しいな。

「神子様。今日は同道を許してくださりありがとうございます」

 膝をついて礼をするレミージョは一般的なチュニックだった。本当に一般市民なんだな。

「そなたを帯同するが、ジュンヤが怯えぬ様に一定の距離は保て。良いな?」

 ティアが先に釘を刺して、彼の頭は更に下がる。

「はい。ご指示に従います」
「今日はよろしくお願いします。街に詳しいそうですね」
「各地を巡った経験からです。このピパカノでは製品を各地に運ぶ際の護衛を務めていました。帰りも金を持っているので、往復の際は強盗対策は必須なんですよ」
「そうなんだ。どこにでも短絡的な犯罪者はいるもんだな」

 思ったよりもまともに話しが出来た。ほっとしてとりあえず目的地に向かう。ここは染色した生地を洗う用水路があり、職人はそこに入って作業をする。用水路に瘴気があれば、どうしても瘴気が蓄積してしまうだろう。
 そこで、まずは職人を癒やしてから水の浄化をする事にしたんだ。水は魔石でも済むしな。職人の技術は一朝一夕で身につくものじゃない。そんな彼らは国の宝だ。だからこそ、直接浄化するべきだと思う。

 職人、というだけで少しワクワクしてしまう気持ちと、どんな状態なのか不安を抱えながら、馬車は職人街を目指し進んで行った。
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