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十年後夏

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 今日は暑い。
 子供たちは小学校、祐志は仕事。
 俺しかいないのにクーラー付けるのはもったいない。
 涼みと買い物のためにスーパーに行った後は、家でタンクトップに短パンと扇風機で暑さをしのいだ。


 今日は唐揚げだ。
 熱い時に揚げ物なんて馬鹿じゃないかと思うが、今日は祐志が出張から直帰で早く帰れるという連絡を受けているから、夕食の手を抜くわけにはいかない。
 ちょうど鶏肉が安かったのもメニューの決め手になった。

 祐志からの連絡で子供達と帰る時間が同じぐらいになりそうだから、帰ってきたら出来立てを食べられるように料理を始めた。
 あと三十分ほどで皆が帰ってくるだろう。首に引っ掛けたタオルで汗を拭って、クーラーをつけた。冷風が体に心地いい。


 祐志の給料は同期に比べれば多いが、年々かかる子供たちの習い事代もあるし節約は大事だ。
 結婚当初の体が弱っている状態はなくなり、すっかり健康体なのだけど、祐志が嫌がるから働いていない。
 これは納得している。慣れると専業主夫生活も楽しい。

 祐志は電気代ぐらいと言うが、主夫として少しでも節約できるとこはしていきたい。
 玄関のドアが開く音がする。

「ただいまー。下で父さんと一緒になったよ」
「ただいま。今日のご飯何?」
「ただいま」

 三人一緒になったようだ。
 汗は引いてきたから首のタオルを洗濯機に放り込んで、三人を出迎えに行った。


「ちょっ、健吾!?」
「健吾、ちゃんと服着ろよ」
「健吾。それ裸エプロンって言うんだよ」

 祐志、啓一、光一が俺を驚いた目で見ている。
 タンクトップと短パンの上にエプロンをしていたから、下に何も来ていないように見えたらしい。

「着てるって。今日は暑かったから」

 後ろを向いて服があることをアピールする。
 それよりも、裸エプロンって何だ。光一、どこで知った。お前まだ小学生だろう。
 子供達に与えるコンテンツには気をつけてているつもりだけど、何もかもをチェックしていられるわけでもない。学校で仕入れてくる知識もあるから、思いもよらない知識を披露してくれる。それが良いことばかりじゃないのが悩みの種だ。

「我慢しないでクーラー付けろって言ってるだろう」
「健康にはいいんだよ」

 祐志が赤い顔で文句を言うのに反論しながら、その反応にあれ、と思う。
 子供たちに荷物を置いて手を洗うように言って、こっそり祐志に身を寄せた。

「裸エプロン、する?」
「……する」

 明日は出張後の休日だ。
 平日だから子供たちは学校がある。
 祐志との予定が決まった。


 結婚して十年になるが、祐志も俺も三十を過ぎたばかりでまだ枯れていない。
 子供達がどんどん手を離れていくから、二人の時間も増えた。
 仕事のキャリアも積んで男としての魅力を増す祐志が愛しくて堪らない。

 オメガとしての発情期はないけれど、代わりに理性を保って抱き合えるから。最近は色々なシチュエーションプレイを楽しんでいる。
 祐志が耳付きのカチューシャを仕入れてきた時は驚いたが、それなりに面白かった。
 以前貰ってしまいっぱなしにしていたフリル付きのエプロンを取り出して、明日は新婚さんごっこかと楽しい気分で眠りに就いた。

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