10 / 44
幕間
ある休日 1
しおりを挟む
祐志との結婚生活が落ち着いてきて、子供たちを連れてよくお出かけをするようになった。
今日は遊園地に来ている。
子供達は絶賛アズキパンマンに夢中なお年頃だから、アズキパンマンパークに来ている。
入場券と一緒に貰えるオモチャで、子供達はすでにご機嫌だ。
でも、中に入った途端、新しい獲物を見つける。
「あーっ。まんと! まんと!」
「こーほしい。けんご、こーほしい!」
キャラクターのマントを付けている子がいて、二人とも欲しいアピールが激しくなる。光一の言う「こー」は自分の事だ。どこかに飛んで行かないように乗せたベビーカーから、出たくて暴れるから壊れそうだ。
慌ててマップを取り出すけれど、よくわからない。
「えっと、マントはどこで買えるのかな」
「あっちのゲームコーナーの景品みたいだ。ベビーカーは置いておくみたいだな。子供達を先に連れて行くから、ベビーカー置いて来てくれるか?」
「わかった。祐志、一人で大丈夫?」
「コーナー自体はそう広くないから行っちゃえば大丈夫だろ。健吾はゆっくり来いよ」
俺は順調に回復していて、もうそんなに弱くないのに、いつまでも過保護な祐志に苦笑するしかない。
祐志は子供達にも甘くて、欲しがるオモチャはみんな与えようとしてしまうから早く合流しないと。
双子用のベビーカーは場所を取るから置くのに少し苦労して、ようやく行ったゲームコーナーでは、既に子供達が手に持ちきれない程のオモチャを持っていた。もちろんマントも着用済みだ。
「けんご! みて! みて!」
「こーのも、こーのも!!」
俺の姿を見つけて、二人ともが戦利品を見せてくれる。
遅かった。すでにほぼ全てのコーナーを制覇したようだ。
キラキラした二人がとても可愛い。思わず笑み崩れて、良かったね、と二人を抱きしめた。
何故かその上から祐志が抱きしめてくる。
「わ、何?」
「ん? うん。感激したんだ。俺の嫁と子供達は世界一可愛い」
真顔で呟く祐志に恥ずかしくて慌てていると、子供達が祐志の手を取って、あっち! とグイグイ行ってしまった。
こういう場で、誰が自分達の欲望を満たしてくれるか、よくわかっている。
アルファだからかな、それとも子供ってこんなものなのかな。
人垣の向こうにアズキパンマンがいるようで、祐志が子供達を二人とも抱え上げて見せている。
さすがに俺はあれはできないから、子供達は大喜びだ。
子供達は三歳になったばかりだ。結婚してからは四年、俺がまともに覚えているのは二年だ。
祐志の仕事も少し落ち着いて、やっと休日にのんびりできるようになった。
パークに来ているお母さんの中には、明らかに妊娠中といった人も多い。
皆、幸せそうにお腹を撫でながら、子供と話している。
妊娠中か、幸せだよな……。
ひたすら穏やかで、子供達と自分だけの世界があって。
二人を妊娠中の時は、確か、絵本をたくさん読んだんだ。
声は聞こえるというから、ネットで色んな物語を探してずっと読んでたなぁ。
「けんごきて!」
「こっちー!」
二人に呼ばれて行くと、アズキパンマンと子供達と祐志と全員で写真を撮って貰えた。
そのまま写真は売りつけられて、高いと思ったけど、家族で撮った写真は少ないから、すごく嬉しかった。
勢い余って、アズキパンマンの写真立てまで買ってしまった。
閉園ギリギリまで遊んで、パーク近くのリゾートホテルへ向かう。
子供達は閉園の声かけに大泣きして、何とかベビーカーに乗せたらすぐに眠ってしまった。
俺もかなり疲れてしまったから、正直、ホテルに泊まるのは有り難かった。最初、泊まりと聞いた時は、日帰りできる距離なのにと文句を言ってしまったのに。
祐志の手の平の上で転がされているようで、少し悔しい。
子供達を起こしてご飯を食べさせてお風呂に入れたらすぐに眠ってしまった。
昼間の暴れん坊っぷりが嘘のように、天使の寝顔だ。
「可愛い。天使だよね……」
「健吾も」
子供達を眺めて幸せを噛み締めていると、祐志が後ろから抱きしめてくる。
祐志は見えない眼鏡でもかけていて、ピントがずれてるんじゃないかと思う。俺に対して可愛いとか綺麗とか言いすぎだ。
祐志みたいに格好良い奴に言われると身の置き所がない。
「相変わらず目がおかしいんじゃないか? 番的補正とか……」
「おかしくない。健吾と番になる前から、そう思ってたよ」
至近距離で真剣な目で言われて、今更なのに心臓がキュンときた。俺も大概だ。
恥ずかしいので、祐志の顔を両手で挟んでキスをした。目を閉じればましかと思ったからだ。
そのまま長いキスになって、ベッドに押し倒された。
今日は遊園地に来ている。
子供達は絶賛アズキパンマンに夢中なお年頃だから、アズキパンマンパークに来ている。
入場券と一緒に貰えるオモチャで、子供達はすでにご機嫌だ。
でも、中に入った途端、新しい獲物を見つける。
「あーっ。まんと! まんと!」
「こーほしい。けんご、こーほしい!」
キャラクターのマントを付けている子がいて、二人とも欲しいアピールが激しくなる。光一の言う「こー」は自分の事だ。どこかに飛んで行かないように乗せたベビーカーから、出たくて暴れるから壊れそうだ。
慌ててマップを取り出すけれど、よくわからない。
「えっと、マントはどこで買えるのかな」
「あっちのゲームコーナーの景品みたいだ。ベビーカーは置いておくみたいだな。子供達を先に連れて行くから、ベビーカー置いて来てくれるか?」
「わかった。祐志、一人で大丈夫?」
「コーナー自体はそう広くないから行っちゃえば大丈夫だろ。健吾はゆっくり来いよ」
俺は順調に回復していて、もうそんなに弱くないのに、いつまでも過保護な祐志に苦笑するしかない。
祐志は子供達にも甘くて、欲しがるオモチャはみんな与えようとしてしまうから早く合流しないと。
双子用のベビーカーは場所を取るから置くのに少し苦労して、ようやく行ったゲームコーナーでは、既に子供達が手に持ちきれない程のオモチャを持っていた。もちろんマントも着用済みだ。
「けんご! みて! みて!」
「こーのも、こーのも!!」
俺の姿を見つけて、二人ともが戦利品を見せてくれる。
遅かった。すでにほぼ全てのコーナーを制覇したようだ。
キラキラした二人がとても可愛い。思わず笑み崩れて、良かったね、と二人を抱きしめた。
何故かその上から祐志が抱きしめてくる。
「わ、何?」
「ん? うん。感激したんだ。俺の嫁と子供達は世界一可愛い」
真顔で呟く祐志に恥ずかしくて慌てていると、子供達が祐志の手を取って、あっち! とグイグイ行ってしまった。
こういう場で、誰が自分達の欲望を満たしてくれるか、よくわかっている。
アルファだからかな、それとも子供ってこんなものなのかな。
人垣の向こうにアズキパンマンがいるようで、祐志が子供達を二人とも抱え上げて見せている。
さすがに俺はあれはできないから、子供達は大喜びだ。
子供達は三歳になったばかりだ。結婚してからは四年、俺がまともに覚えているのは二年だ。
祐志の仕事も少し落ち着いて、やっと休日にのんびりできるようになった。
パークに来ているお母さんの中には、明らかに妊娠中といった人も多い。
皆、幸せそうにお腹を撫でながら、子供と話している。
妊娠中か、幸せだよな……。
ひたすら穏やかで、子供達と自分だけの世界があって。
二人を妊娠中の時は、確か、絵本をたくさん読んだんだ。
声は聞こえるというから、ネットで色んな物語を探してずっと読んでたなぁ。
「けんごきて!」
「こっちー!」
二人に呼ばれて行くと、アズキパンマンと子供達と祐志と全員で写真を撮って貰えた。
そのまま写真は売りつけられて、高いと思ったけど、家族で撮った写真は少ないから、すごく嬉しかった。
勢い余って、アズキパンマンの写真立てまで買ってしまった。
閉園ギリギリまで遊んで、パーク近くのリゾートホテルへ向かう。
子供達は閉園の声かけに大泣きして、何とかベビーカーに乗せたらすぐに眠ってしまった。
俺もかなり疲れてしまったから、正直、ホテルに泊まるのは有り難かった。最初、泊まりと聞いた時は、日帰りできる距離なのにと文句を言ってしまったのに。
祐志の手の平の上で転がされているようで、少し悔しい。
子供達を起こしてご飯を食べさせてお風呂に入れたらすぐに眠ってしまった。
昼間の暴れん坊っぷりが嘘のように、天使の寝顔だ。
「可愛い。天使だよね……」
「健吾も」
子供達を眺めて幸せを噛み締めていると、祐志が後ろから抱きしめてくる。
祐志は見えない眼鏡でもかけていて、ピントがずれてるんじゃないかと思う。俺に対して可愛いとか綺麗とか言いすぎだ。
祐志みたいに格好良い奴に言われると身の置き所がない。
「相変わらず目がおかしいんじゃないか? 番的補正とか……」
「おかしくない。健吾と番になる前から、そう思ってたよ」
至近距離で真剣な目で言われて、今更なのに心臓がキュンときた。俺も大概だ。
恥ずかしいので、祐志の顔を両手で挟んでキスをした。目を閉じればましかと思ったからだ。
そのまま長いキスになって、ベッドに押し倒された。
4
お気に入りに追加
484
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
試情のΩは番えない
metta
BL
発情時の匂いが強すぎる体質のフィアルカは、オメガであるにもかかわらず、アルファに拒絶され続け「政略婚に使えないオメガはいらない」と家から放逐されることになった。寄る辺のなかったフィアルカは、幼い頃から主治医だった医師に誘われ、その強い匂いを利用して他のアルファとオメガが番になる手助けをしながら暮らしていた。
しかし医師が金を貰って、オメガ達を望まない番にしていたいう罪で捕まり、フィアルカは自分の匂いで望まない番となってしまった者がいるということを知る。
その事実に打ちひしがれるフィアルカに命じられた罰は、病にかかったアルファの青年の世話、そして青年との間に子を設けることだった。
フィアルカは青年に「罪びとのオメガ」だと罵られ拒絶されてしまうが、青年の拒絶は病をフィアルカに移さないためのものだと気づいたフィアルカは献身的に青年に仕え、やがて心を通わせていくがー一
病の青年α×発情の強すぎるΩ
紆余曲折ありますがハピエンです。
imooo(@imodayosagyo )さんの「再会年下攻め創作BL」の1次創作タグ企画に参加させていただいたツイノベをお話にしたものになります。素敵な表紙絵もimoooさんに描いていただいております。
あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を
羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。
番外編を開始しました。
優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。
αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。
そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。
αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。
たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。
ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。
僕はもういらないんだね。
その場からそっと僕は立ち去った。
ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。
他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる