上 下
40 / 79

触手な王子様をお持ち帰り 7

しおりを挟む
 鼻がむずむずして、くしゃみをして目が覚めた。
 ここはどこだ。狭いけれどやけに高級そうな丁度品……ってすぐに記憶が蘇る。ここはディアヴの部屋だ!

 ばっと起き上がったけれど、ディアヴはおろか従者の気配もない。起き上がった拍子に何かが俺の膝にぼたっと落ちて、恐る恐る見ると見覚えのある触手……もといボウ王子だ。ちょっと大きくなっている。針金みたいだったのが、小指ぐらいの太さになっていて気持ち悪さが出てきた。まじまじ見たい感じではない。

「ボウ王子……服、着ませんか?」

 返事はないが、俺はサイドテーブルに綺麗に畳んで置かれていた自分の制服からハンカチを出した。触手なボウ王子をハンカチに包む。直接触るのは抵抗がある。とりあえず自室に戻って今後の対応を考えるべきだろう。
 昨日はディアヴにヤり倒されて気絶したのだろう。誰とやっても意識はだいたい保っているんだが、ディアヴだけは保てない。相当相性がいいんだろう。……あいつと結婚か。一生生活が楽なら悪くないのかもしれないが、きっとそうならない。
 昨日は優しくなったかと思ったら、とんだ焦らしプレイで死にそうだった。毎晩あんな目に合ったらエロ廃人になりそうだ。身体はエロ好きだけど、普段の生活も楽しみたい。

 前世の記憶が蘇ったから、魔法のある世界には心ときめくものがある。貴族社会には馴染めそうにないから、庶民として生きていけるだけの仕事をして第二の人生を満喫したいんだ。
 ボウ王子をハンカチごとポケットに入れて、ディアヴの部屋のドアを開けようとしたが。
 開かない。

「鍵がかかっているのか? なんで鍵が縦でも横でも開かないんだ?」

 ドアノブをガチャガチャと押しても引いても開かない。こうなったら窓から? と見たが、ここは五階建ての最上階だし、侵入防止のための柵がしっかり窓を覆っている。貴族のための学園の寮だから仕方がない。学生でも貴重品を持ち込んでいる人間は多いから。現にディアヴの部屋も高級なものが揃っている。

「もしかして監禁……まさかな。俺の存在を忘れて鍵をかけてっただけだ。あいつら俺の人権無視してるし」

 名残惜しくドアノブを握って額をドアに当ててぶつぶつ言っていると、ポケットからシュルっと出たボウ王子が俺の腕を伝って手の甲までやってきた。うぇ。細い時は気にならなかった、表面のぼこぼことした模様が気持ち悪い。
 俺の手の甲に胴体の三分の一を載せたまま立ち上がったボウ王子は、ゆらゆらと揺れて少しだけ発光した。動けないでじっと見ていると、パッとフラッシュがたかれるように光った。目がぁ!!
 すると、さっきまで押しても引いても開かなかったドアが、開いた。

「もしかして魔法!? 王子、ありがとうございます」

 心なしかふんぞり返っているような雰囲気のボウ王子に礼を言うと、また俺のポケットの中にシュルっと入っていった。魔法生物のペットだと思えば可愛い……かもしれない。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...