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触手な王子様をお持ち帰り 1

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 目覚めるとカイン王子はいなくて、ディアヴが窓際で静かに本を読んでいた。絵画のような光景だ。外見だけは美しい甥。中身は悪魔寄り。
 表情筋を持ち合わせていますかと聞きたくなるほどの鉄面皮だが、家柄と優秀さで一目も二目も置かれている。なんで俺に執着した様子を見せているのかわからない。

 王様が男と結婚しているのを忘れていた俺が悪いが、男同士は一般的じゃない……たぶん。排泄不要処理の魔法はファンタジーならではの衛生意識だろう。男同士のあれこれのための処置ではないと信じたい。ちょっと疑わしいが……。ちなみに小は出る。そっちから出ないようにすると子供ができなくなるからだろう。

「ディアヴ、どうして俺なんだ。お前なら相手はいくらでも選べるはずだ」
「……可哀想なおじさんを引き取ってやろうという、可愛い甥心だ」

 可愛い!? それなら今指に絡んでいるボウ王子のほうがかわ……ってなんでいるの?

「かわ!? それより、カイン王子が忘れ物をしていったみたいだけど」
「物とは何だ。ボウ王子をおじさんにおれとおじさんに預けていっただけだ」
「預け? 意味が分からないんだけど。なんで?」
「王宮に置いておいてボウ王子が見つかったら処分される恐れがあるから、王子が自分で自分の身を守れるようになるまで育てるように、とのことだ」
「それってディアヴが、だよね」
「オレとおじさんは婚約者同士だから予行練習に、とのことだ」

 表情は変わらないが、能面が光の当たり方で表情が変わって見えるようにディアヴが顎をくっと上げるから、非常に馬鹿にされている雰囲気だ。いやあからさまに馬鹿にされている。ディアヴに比べたら誰だって馬鹿に見えるだろう。ディアヴとカイン王子は常に成績上位者として講堂に名前が掲示されている。各学年で十名が出されている。
 王子の名前知らないと思ってたけど、ディアヴといつも並んでいる人だった。今思い出してもしょうがない。はは。

 ボウ王子の飼育が婚約者だから予行練習? ディアヴとの間に子供ができたらってこと? 男同士で子供というのはいい加減理解したからあるのかもしれないが、子供が触手はないだろう!! 王様はきっと魔法でこれを作り出したに違いない。王様っていうぐらいだから、きっと魔法もすごいんだろう。
 指に絡むミミズ……もといボウ王子を眺めていると、なんとなくご機嫌なように見える。俺に懐いているのか? さっきとんでもないところに入り込んでいたけど……。

「エサ……じゃない、食事もわからないのに育てるとか」
「食事はさっき与えただろう。もう少し真面目に勉強したほうがいい」
「しょ、触手の食事が何とか知らなくても生きていけるし」

 ファンタジーの触手といったら人間の体液というのが前世での常識だったが、それはBL世界での常識だったはずだ。まさかだろう。

「おじさんは淫乱だからボウ王子の食事に困ることはないだろう」

 そのまさかだった!!
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