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魔法学園のモブに転生、した? 6
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そーっと教室に入ったが、いつも話す下流貴族仲間は遠巻きにしている。
「おはよう」
「あ、おはよ。ちょっと手洗いに行ってくる」
「え、もう授業始まる、のに」
ぽつーん。
気持ちは分からなくもない。俺たち下流貴族と上流貴族の間には見えない大きな壁がある。平穏な生活のためにディアヴを避けていたのに、今や俺は……どういう立ち位置?
この世界の近親婚は親子と同父母兄弟までしか禁止されていない。叔父と甥はギリOKだ。数は少ないが、同性婚も法律で認められている。
今の王様が同性と結婚するために法律を変えたらしい。
でも俺、ディアヴと結婚なんかしないよ? あいつは確か婚約者がいるし、俺とやったのは何かの間違いのはずだ。お手つきしちゃったお詫びでネクタイを寄越したんだと思う。お詫びになるかどうかは別だけど。
「ビチュード、お前ハイクォーリのおじさんなんだ」
「え、あ、うん。姉が、ハイクォーリ家に嫁いでて」
「ふーん。じゃ、おじさんでいいよな」
「え?」
普段話さない中流貴族のモブ。俺は下流のモブだけど、似たようなものだ。特徴のない容姿に、抜きん出た能力もなく蟠ってるだけの人間。
話したこともなかったのに、突然「おじさん」呼ばわりされてゾッとした。この流れ、やばい気がする。
ディアヴや王子は教室にいない。
彼らは家の用事で欠席も珍しくないけど、今はいて欲しかった。プライドの高いディアヴなら、自分以外の人間が俺のことをおじさん呼ばわりするのを好まないだろうから。
王子には単純に、低能なところを見せたくないと誰もが思っている。王族は流石に貴族とは違う。別格だ。
「おじさーん、ちょっとパン買ってきてくれないか」
「教科書忘れたから貸してくれよ、おじさん」
パシリにされたり、同じ時間に同じ授業を受けるのに教科書を取り上げられたり、ディアヴと王子がいない時に始まった。
パシリの代金は支払われなくて、すぐにお金が尽きてくる。家にせびるのも嫌だし、直接的な暴力になれば被害として届けやすくなるから、腹をくくった。
「パンを」
「もう、お金がないから買えない。今までの分もできれば支払ってほしい。君たちは俺の家よりずっとお金持ちなんだか……っぐ」
腹パンきた。見えるところに傷をつけないようにするためだろう。暴力は怖い。逃げ出したい。最初からディアヴに相談していれば良かっただろうか。
「なんだよ、仲良くしようぜ、おじさん」
「おい、ハイクォーリにバレないようにやれよ」
「言えないようにしたらいいだろ」
俺に絡んできていた奴らは三人。ほかのクラスメイトは見て見ぬ振りをしている。一人は中流貴族だが、商売を大きく手がけている家の嫡男だからだ。
今は全ての授業が終わったあとで、三人以外は皆帰って誰もいない。なんで人がいるときに反撃しなかったんだ俺の馬鹿。
身の危険を感じて逃げようとしたけれど、突き飛ばされて床に押さえつけられた。
「おはよう」
「あ、おはよ。ちょっと手洗いに行ってくる」
「え、もう授業始まる、のに」
ぽつーん。
気持ちは分からなくもない。俺たち下流貴族と上流貴族の間には見えない大きな壁がある。平穏な生活のためにディアヴを避けていたのに、今や俺は……どういう立ち位置?
この世界の近親婚は親子と同父母兄弟までしか禁止されていない。叔父と甥はギリOKだ。数は少ないが、同性婚も法律で認められている。
今の王様が同性と結婚するために法律を変えたらしい。
でも俺、ディアヴと結婚なんかしないよ? あいつは確か婚約者がいるし、俺とやったのは何かの間違いのはずだ。お手つきしちゃったお詫びでネクタイを寄越したんだと思う。お詫びになるかどうかは別だけど。
「ビチュード、お前ハイクォーリのおじさんなんだ」
「え、あ、うん。姉が、ハイクォーリ家に嫁いでて」
「ふーん。じゃ、おじさんでいいよな」
「え?」
普段話さない中流貴族のモブ。俺は下流のモブだけど、似たようなものだ。特徴のない容姿に、抜きん出た能力もなく蟠ってるだけの人間。
話したこともなかったのに、突然「おじさん」呼ばわりされてゾッとした。この流れ、やばい気がする。
ディアヴや王子は教室にいない。
彼らは家の用事で欠席も珍しくないけど、今はいて欲しかった。プライドの高いディアヴなら、自分以外の人間が俺のことをおじさん呼ばわりするのを好まないだろうから。
王子には単純に、低能なところを見せたくないと誰もが思っている。王族は流石に貴族とは違う。別格だ。
「おじさーん、ちょっとパン買ってきてくれないか」
「教科書忘れたから貸してくれよ、おじさん」
パシリにされたり、同じ時間に同じ授業を受けるのに教科書を取り上げられたり、ディアヴと王子がいない時に始まった。
パシリの代金は支払われなくて、すぐにお金が尽きてくる。家にせびるのも嫌だし、直接的な暴力になれば被害として届けやすくなるから、腹をくくった。
「パンを」
「もう、お金がないから買えない。今までの分もできれば支払ってほしい。君たちは俺の家よりずっとお金持ちなんだか……っぐ」
腹パンきた。見えるところに傷をつけないようにするためだろう。暴力は怖い。逃げ出したい。最初からディアヴに相談していれば良かっただろうか。
「なんだよ、仲良くしようぜ、おじさん」
「おい、ハイクォーリにバレないようにやれよ」
「言えないようにしたらいいだろ」
俺に絡んできていた奴らは三人。ほかのクラスメイトは見て見ぬ振りをしている。一人は中流貴族だが、商売を大きく手がけている家の嫡男だからだ。
今は全ての授業が終わったあとで、三人以外は皆帰って誰もいない。なんで人がいるときに反撃しなかったんだ俺の馬鹿。
身の危険を感じて逃げようとしたけれど、突き飛ばされて床に押さえつけられた。
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