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魔法学園のモブに転生、した? 1

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 ああ、これはありきたりな転生の序章。

「……ぉい、おい! ビチュード、起きろ!」
「んあ!?」

 パコンと頭をはたかれて目が覚めると、そこにはファンタジーな世界が広がっていた。俺は今、三十の誕生日を迎えて、工事現場で建材に潰されそうになっていた子供を助けて……。
 いや、おれは超ギリギリ貴族ビチュード家の末っ子ロン・ビチュードだ。ギリギリ貴族とは、一番下流貴族ってこと。
 俺の通っている学校は、一部の例外をのぞいて貴族しか入れない。

「どこか具合でも悪いのか? 医務室に行け」
「はぁ……そうさせていただきます。すいません」

 ぼーっと魔法歴史学の教師を見上げている俺に、教師が態度を軟化させた。俺自身、自分の状態がわかっていなくて、整理する時間が欲しかった。
 医務室は、と二つ分の人生が混ざって混乱した頭から情報を取り出す。歩き方も忘れそうな混乱でふらふらと向かっていると、腕を掴まれた。

「様子がおかしいから、付き添う」
「ディアヴ……」

 そうだ、こいつはディアヴ、ハイクォーリ侯爵家の嫡男で、俺の甥っ子だ。
 甥と言っても年の離れた姉の子だから同い年だ。身体がふらつくから、腕を掴まれているのは助かった。さっきまで、、、、、三十の大人の身体だったのに、やけに動きの軽い身体に違和感がある。空回りするような感じだ。

 社畜生活で疲れ切った身体は、こんなに軽くなかった。運動もしていなかったから下腹はゆるゆるになっていたのに、今はぺったんこだ。薄すぎるぐらいの腹は、思春期の体型としては残念だ。男らしく腹筋が割れていたかった。

 この身体も運動は得意じゃない。むしろ運動が壊滅的に得意じゃないから、肉がなくて身体が軽いんだ。
 だからと言って、この世界の皆が薄いんじゃない。
 俺の腕を掴んで引きずるように歩くディアヴは倍ほどの厚みがある。この世界の遺伝子はどうなっているんだろう、叔父と甥、従兄弟よりも近いはずなのに血縁者には見えない。

 たぶんクラスメイトも気付いていないだろう。ディアヴが俺を気にかけるのはノブレス・オブリージュ、高貴さの現れだと思っている節がある。
 単に幼少期からの付き合いというだけなのに。

 親戚の贔屓目を抜きにしてもディアヴはメインキャラ、俺はモブだろう。そこに文句はない。
 目立たず地味に平穏に生きることの素晴らしさを俺は知っている。最期にヒーローになれたならそれなりにいい人生だったんじゃないか。

 魔法のある世界、面白そうだ。何故前世の記憶が蘇ったのかわからないけれど、世界の片隅のおだやかなモブ人生を楽しもう。
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