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32 おまえがいなけりゃ

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「まてまて落ち着け。私はラウルが幸せならそれでいい。サクとやら、お前とラウルの住居が見たい」
「山奥なんで、偉い方が来るようなところじゃありません」

 ラウルが行かないならこいつに用はない。
 俺にとって、ウードのところは安全な場所だった。ラウルが自分からどこかに行きたいと言いだしても納得ができると思っていた。だけど、本当は自立させなきゃと言いつつも、自分の目の届くところに置いておきたかっただけなのかもしれない。
 実際にラウルが手の届かないところに行くなら、どうなってもいいと思うほど俺はラウルを……。
 ああもう認めよう。いないと生きていけないのは俺の方だ。それぐらい、ラウルの存在はおれのすべてになっていた。

 ディールやお付きの奴らが何かを言う前に、俺はラウルに向かって言った。

「ラウル、結婚しよう」
「はい!」

 ぱあっと満面の笑顔になったラウルが即答する。

 何故かディールが拍手をして、周りがそれに倣っていく。

「おめでとう。次期国王として祝福する」

 お前に認めて貰わなくてもいい……いや、実はいいやつなんだな。ラウルの弟だよな? 乱暴者じゃないのか。そうか、いいやつか。
 そう思うと似ている顔も可愛げがあるように見えてくる。ラウルの弟なら俺の弟みたいなもんだ。

「ラウルよかったなあ!!」
「おめでとう!!」
「今日は酒盛りだ!」

 材木屋の奴らが盛り上がっている。ラウルの背中をばんばん叩いている奴もいる。いつの間にそんなに仲良くなってたんだ。ウードなんて涙ぐんでいる。

「サクが鈍感すぎてどうなることかと思ったよ。収まるところに収まって良かった!!」
「ありがとうございます、ウードさん」

 俺の肩を抱いたラウルがにこにこと答えている。
 お付きの奴に耳打ちされたラウルの弟ディールが、また今度と言ってさっさと去っていき、どんちゃん騒ぎは収拾がつかなくなっていった。
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