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29 よく似た男
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そこには立派な服を着たラウルそっくりの男がいた。違いはラウルは髪がふわふわしているが、そいつはまっすぐハリネズミのように短い髪を立てている。髪の色は同じだ。
なぜかまだ帰らないはずのラウルがそいつの側にいて、苦虫を噛み潰したような顔をしている。他人から見たら無表情にしか見えないだろうが、俺にはわかる。
人垣を隔ててラウルと目が合う。
俺を見つけたラウルの表情が緩んだ。それを、ラウルもどきの偉そうな奴に見つかった。あいつがラウルの仕事を切り上げさせて連れてきたのか?
イラッときて睨みつけると、ニヤリと笑ってラウルに耳打ちをする。顔は似ているけれど、表情が全然違う。よく見ればラウルのほうが体格もいいし、性格も良さそうだ!
ラウルが男に向かって何かを言うと、一行はウードの材木屋の方向に向かっていった。
残された野次馬達は、あれは誰だとざわついている。
「あれはグロウル家の紋章じゃないか?」
「え? 新しい王様の?」
「王子様じゃないか?」
「なんでこんな田舎に」
「フローリア様の手がかりがあったとか?」
「王都から身一つで追い出されたのに、ここまで来れるはずないじゃないか」
「いや、歩けない距離じゃないし」
「それっぽい女の子はいないよなぁ」
「巻き毛の金髪なんていないな」
「この町の近くて亡くなってたりしたら……大丈夫なのか?」
「お、おれは石なんて投げてないぞ」
「あんたなんで急に。まさか、あんた」
「お前石を投げたのか!」
「だって手配書に」
俺の山に向かう道でフローリアは倒れていた。手配書には石を持って追い立てよと書いてあったから、この男に非はないのかもしれない。でも許せるはずもなく。
俺は野次馬の群れから逃げようとする男の首根っこを捕まえた。
「おい、逃げるな。心当たりがあるなら自分から申し出ろ」
「な、なんだよ、離せ!!」
ひょろっとした町の男が俺の力に敵うはずもなく。野次馬連中が袋叩きにする前に男を引きずり出した。助けようとしたんじゃない。俺だってこいつに石を投げつけたい。
俺は倒れていたフローリアの姿を忘れたことなどないから。
どうせならラウルに裁かれたらいい。そう、ケツに石をぶち込まれてしまえばいい。
なぜかまだ帰らないはずのラウルがそいつの側にいて、苦虫を噛み潰したような顔をしている。他人から見たら無表情にしか見えないだろうが、俺にはわかる。
人垣を隔ててラウルと目が合う。
俺を見つけたラウルの表情が緩んだ。それを、ラウルもどきの偉そうな奴に見つかった。あいつがラウルの仕事を切り上げさせて連れてきたのか?
イラッときて睨みつけると、ニヤリと笑ってラウルに耳打ちをする。顔は似ているけれど、表情が全然違う。よく見ればラウルのほうが体格もいいし、性格も良さそうだ!
ラウルが男に向かって何かを言うと、一行はウードの材木屋の方向に向かっていった。
残された野次馬達は、あれは誰だとざわついている。
「あれはグロウル家の紋章じゃないか?」
「え? 新しい王様の?」
「王子様じゃないか?」
「なんでこんな田舎に」
「フローリア様の手がかりがあったとか?」
「王都から身一つで追い出されたのに、ここまで来れるはずないじゃないか」
「いや、歩けない距離じゃないし」
「それっぽい女の子はいないよなぁ」
「巻き毛の金髪なんていないな」
「この町の近くて亡くなってたりしたら……大丈夫なのか?」
「お、おれは石なんて投げてないぞ」
「あんたなんで急に。まさか、あんた」
「お前石を投げたのか!」
「だって手配書に」
俺の山に向かう道でフローリアは倒れていた。手配書には石を持って追い立てよと書いてあったから、この男に非はないのかもしれない。でも許せるはずもなく。
俺は野次馬の群れから逃げようとする男の首根っこを捕まえた。
「おい、逃げるな。心当たりがあるなら自分から申し出ろ」
「な、なんだよ、離せ!!」
ひょろっとした町の男が俺の力に敵うはずもなく。野次馬連中が袋叩きにする前に男を引きずり出した。助けようとしたんじゃない。俺だってこいつに石を投げつけたい。
俺は倒れていたフローリアの姿を忘れたことなどないから。
どうせならラウルに裁かれたらいい。そう、ケツに石をぶち込まれてしまえばいい。
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