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28 口説かれています

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 ラウルがウードのところで働き始めて三ヶ月が経ったが、会えば俺に蕩けるような笑顔で愛を囁いてくる。信じてほしいから、と山で暮らしていた時よりもずっと情熱的に口説かれ続けている。

「逃げ場がない……」
「なんだ、お前、逃げたかったのか?」
「…………どうなんだろ。ラウルを、俺から逃がしてやるつもりだったのに……」
「どう見てもラウルのほうがお前にぞっこんだぞ?」
「う……」

 今回はラウルが二日がかりで隣街まで荷運びをしていると聞いて、ウードと酒を飲んでいた。まだ婚姻届を出していないことは話してある。

「ラウルのやつ、お前と結婚してるって言ってるから、男にも粉かけられてるんだぞ」
「はぁ!?」
「荒い奴もいるから、強引にって奴もいるみたいだけど、叩きのめして済ませてるみたいだ。二度とそんな気が起きないようにって……かなりエゲツない」

 他人と関わらないでいたから、町にそういう危険があるのを忘れていた。俺よりも体格のいいラウルを無理やりとか……。男同士で無理矢理何をするんだろう。触るのか? 触って楽しいのか?

 生理現象としてそういう衝動があるのは知っているが、禁欲生活が続いていて、俺自身のそういう欲望はなくなっていた。ラウルがどうなのかも気にしていなかった。なんとなく外見が整っているから、そういうのはない気がする。
 自分に関しては目の前に魅力的な女性が現れたら復活するだろうと気にもしていなかった。だけど、世の中の男は下半身に支配されがちだ。
 ちゃんと自力で回避できたなら良かった。

「べつに半年にこだわらなくても、お前さえ良いって言えば元サヤだろ? 何拗らせてるんだ?」

 変にこだわっているのは俺だけなのか?
 男同士で今までと変わらない、のんびりした生活でラウルが満足するならいいのか? あいつが言うようにきこりの仕事を伝えていきたいなら養子を取るなりして……。

 町まで出てきたのにラウルの顔を見ずに帰るのか、と歩けなくなる前に立ち上がって会計をしていた。その時、町の入り口が騒がしい。

 野次馬がわらわらと集まり始めていたから、酒で回らない頭の中、俺もふらふらと見に行った。

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