拾った悪役令嬢にはアレがついていました

爺誤

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23 ラウルの想い

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 ウードとシテムが町に帰っていったのを見届けて、俺たちは家族会議をすることにした。といっても、俺とラウルの二人だけだが。
 目の前にはシテムが置いていった婚姻届がある。神官はこういうものを常備しているのだろうか。いや、聞きたいのはそこじゃなくて、なんで俺とラウルがそういうことになるのかってことだけど。

「婚姻届って……なんで」
「神官は常に証明書の雛形をもっていて、一部書き加えるだけで婚姻届にも出生届にも死亡届にもなるの」
「へえ。よく知ってるな」

 さすが元令嬢、こういうことに詳しい。披露する知識が昔のものだからか、口調も令嬢に戻ってしまっている。
 そうじゃなくて、聞きたいのは何で俺がラウルと結婚する流れになっているかということなのに。

「王妃候補としての教育があったから……」

 それは知ってる。三年経っても言葉遣いが抜け切らないほど染み付いた教育な。そうじゃなくて。

「なんで俺とお前が結婚する話になるんだ? お前、ほんとうは"お嫁さん"が夢だったとか」

 俺よりでかくて女にモテそうなお嫁さん……。うーん。嫌悪感はないが、かえって嫌悪感がないことに戸惑う。いくら顔が良くても男の嫁はないだろう。子供できないし。木も山もどうしたらいいか困るだろう。

「まさか!」
「じゃあ俺と結婚ってどういうことなんだ?」
「サクが好きで、一生一緒にいたいの。愛しているのよ」

 口調が女になって、手が震えている。取り繕うこともできなくなっているなら、本気なのだろうか。いつからラウルはそう思っていたのだろう。

「ラウルは男が好きなのか?」
「誰かに恋愛感情を抱いたのはサクが初めて……。お願い、追い出さないで。サクが嫌なら指一本触れないし、外で寝てもいい。サクが女の人と結婚しても絶対に邪魔しないから、そばにいさせて」

 優しくされて勘違いしているだけじゃないか?
 町にいって女の子にモテモテになったら考えも変わりそうだ。婚姻届けは、書いても神殿に出さなければいいかもしれない。フローリアの髪のように、あとからやらなくて良かったってなるんじゃないか。

「令嬢じゃなくなってから、ほかに人を知らないからそう思い込んでいるんじゃないか? 普通、男は女を愛するもんだろ。家族になりたいなら夫婦? じゃなくても。なんかやりようはあるだろ」

 男同士でも夫婦と言うのだろうか。ややこしい。
 婚姻届けは、少し書き替えれば他の書類にできるなら、養子にする書類にもなるんじゃないか? 俺がラウルを養子にすれば家族になる。わざわざ届け出なくてもすでに家族なんだけど、ラウルが証明がなければ不安だと言うなら神殿に届を出したらいい。

「婚姻届じゃないと、サクはいつか結婚しちゃうでしょう?」
「さっきと言ってることが違う」

 俺が結婚しても傍にいたいと言っていたのに、俺が誰かと結婚するのは嫌だと言う。養子ではなく婚姻関係を望んだのは、もしかして計算があったのか?
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