11 / 37
11 不穏な気配
しおりを挟む
俺とラウルの生活は驚くほど順調だった。ラウルは自分のやれる範囲を見つけるのがうまく、そこから少しずつ発展させていった。
一年が経つ頃にはラウルの身長は俺を抜かした。まだ厚みが出ないから大きめの服の出番はない。この調子だとあと一年……もしかしたら半年ほどで必要になるかもしれない。毎日身体が痛いと言っていたが、たぶんそれは一気に大きくなると痛いやつだ。父に成長期には体中が痛くなってぐんぐん大きくなるって聞いていたけれど、俺にはその痛みは来なかった。悲しい。
きこりの仕事は長年の勘も必要だから理解するのに時間がかかっているが、素材採集なんかはもう俺よりも見つけるのが早い。
町のほうは少しざわついているようだが、木材と素材を売りに行くために月に二回ほど出入りしているだけの俺には細かい内容は伝わってこない。だけど、塩やら香辛料の値段が上がっているから少し不安だ。ラウルに話したら、次に行ったら塩を多めに買っておくように言われた。
「多め?」
「うん、一年か……何年か山にこもっていられるぐらい。種芋とかもあったら便利かも」
「わかった」
何年も山にこもるなら、その間はラウルは出ていかない。次に町に行ったときにはいうとおりにして持ち金全部を使って塩と種芋を買った。
買い方も教えられていて、一か所で大量に買うのではなく、何か所かで少しずつたくさん買うように言われた。さらには、人目につかないように町を出るように言われたから、一時だけ行商の荷馬車に乗せてもらった。
帰り道は真っ直ぐ帰るのではなく、迂回して俺しか知らないような道を早足で通り、行きにかけておいた岩場を通るためのロープも帰りに落とした。誰も追ってきていないようだが、これほど念入りに隠れなければならないのは不穏だ。
一年が経つ頃にはラウルの身長は俺を抜かした。まだ厚みが出ないから大きめの服の出番はない。この調子だとあと一年……もしかしたら半年ほどで必要になるかもしれない。毎日身体が痛いと言っていたが、たぶんそれは一気に大きくなると痛いやつだ。父に成長期には体中が痛くなってぐんぐん大きくなるって聞いていたけれど、俺にはその痛みは来なかった。悲しい。
きこりの仕事は長年の勘も必要だから理解するのに時間がかかっているが、素材採集なんかはもう俺よりも見つけるのが早い。
町のほうは少しざわついているようだが、木材と素材を売りに行くために月に二回ほど出入りしているだけの俺には細かい内容は伝わってこない。だけど、塩やら香辛料の値段が上がっているから少し不安だ。ラウルに話したら、次に行ったら塩を多めに買っておくように言われた。
「多め?」
「うん、一年か……何年か山にこもっていられるぐらい。種芋とかもあったら便利かも」
「わかった」
何年も山にこもるなら、その間はラウルは出ていかない。次に町に行ったときにはいうとおりにして持ち金全部を使って塩と種芋を買った。
買い方も教えられていて、一か所で大量に買うのではなく、何か所かで少しずつたくさん買うように言われた。さらには、人目につかないように町を出るように言われたから、一時だけ行商の荷馬車に乗せてもらった。
帰り道は真っ直ぐ帰るのではなく、迂回して俺しか知らないような道を早足で通り、行きにかけておいた岩場を通るためのロープも帰りに落とした。誰も追ってきていないようだが、これほど念入りに隠れなければならないのは不穏だ。
26
お気に入りに追加
196
あなたにおすすめの小説

金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!
華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる