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3 かわいそうと思ったら仕方がない

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 翌朝、俺よりも遅く目が覚めた令嬢は開き直っていた。

「拾ったからには面倒を見るのが人情でしょう」

 強気な言葉とは裏腹に身体は少し震えているし、腹も鳴っている。顔はやっぱり滅茶苦茶綺麗だ。どうしたらいいかわからない俺は、偉い人に対する態度を忘れてぶっきらぼうな対応をしてしまった。

「ああ、お貴族様のお口に合うかわからんが」

 寝台で上体を起こすのも辛そうだが、飯を食べるためには起きていてもらわなきゃならない。令嬢は薬草の味を紛らわすために濃い味をつけた具沢山スープを、無言で全て食べきった。味はともかく栄養満点だからほっとする。拾った以上すぐに弱って死んでしまったりしたら寝覚めが悪い。

「落ち着いたら服を替えろ。俺のものしかないが、洗ってあるから」

 死んだ親父の一張羅のシャツを渡すとじっと俺を見て黙っている。

「なんだ? 着替えろって言ってるんだが」
「着替えるところを見ているの?」

 今にも変態と叫ばれそうな言い方にむっとする。男の裸なんてどうでもいいのに、美少女にしか見えない顔は確かに着替えを見るのは悪いことのような気がする。
 俺がこの家の主なのに、一室しかないから部屋を出ることは家を出ることになるのが何とも言えない。

 仕方なく、外に出たついでに湯を沸かしてやることにした。
 家の外に簡易の風呂場があるから薪を大量にくべる。水はすぐ近くの崖から常に流れている水に樋をかけるだけで入れられる。
 父が母に嫁に来てもらうために作ったという風呂は、水を入れるのも簡単で沸かすのも簡単という優れものだ。この立地でしか通用しない仕掛けだから、山奥でも知人がたまに入りに来てくれて一人の生活でも寂しくない。
 湯加減が良くなったのを見計らって、家に戻る。

「入るぞ」
「あっ」

 家に入ると、床に落ちている汚れたドレスと、ぶかぶかのシャツの袖を持て余した令嬢がいた。似合わないだろうと思っていたが、似合う似合わない以前にやけに胸がぎゅっと絞られるような感覚に襲われる。俺の服を着た令嬢は、男のはずなのに庇護欲を掻き立てられる。
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