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2 アレがついていたよ悪役令嬢
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足首が握り潰されそうな恐怖と、片手に石を抱いたまま俺を見上げる天使のような美貌に頭の中が大混乱だ。声は女性にしては低く、外れかけているチョーカーの下に喉仏が見える。手配書通りの令嬢のはずなのに、どう見ても男だ。
「お、俺の家は森の奥で」
「職業は?」
「きこりです」
「とりあえず連れて行って」
令嬢(?)の目が俺をカモだと言っている。取り繕うような令嬢言葉もなくなり、完全に下僕認定されている。
手を貸して立ち上がらせようとしたが、「この足で歩けって?」と言われて背負うことになる。いつも薪を背負っているから苦にはならないんだが、こんなぼろぼろなのに埃といい匂いが混ざっていて切ない。いい匂いだけど、身体はやっぱり男みたいで、俺よりは柔らかいが胸も尻も厚みがない。
俺の肩にかかる指先は真新しい傷でいっぱいで、しばらく歩いていたらぐっと重さが増した。眠ってしまったようだ。
手配書の物語が事実なら、悪役令嬢フローリアは十四歳。まだ十五の成人も迎えていないのに、石を投げられて歩けなくなるまで裸足で逃げ惑うなんて、たとえ男でも可哀想だ……。
山奥の家に帰って、一つしかない寝台にそうっと令嬢を下ろしたが目覚めない。
顔は完璧な美少女だ。淡い金色の髪は縦にゆるく巻いていて、同じ色の睫毛は長くやはり上向きにくるりと巻いている。手配書には、瞳は青みがかった紫とあったから、色合いも美しいのだろう。
胸はないが、十四という年齢を考えたらこれからという可能性もある。だけど声は低かったし……俺は思い切って令嬢のスカートをめくった。中に長ズボンのような下着をつけていたから、少し迷ってから股間に手を当てた。
「ある……」
こんな森の中に住んでいたんじゃ出会いはない。たとえ罪人でも優しくしたら嫁にできるんじゃないかと期待したのは仕方ない。平民のように髪を切り、粗末な服を着せたらわからなくなるんじゃないかとも思った。
でもこんな美形が髪を切るぐらいで隠せるはずもないし、何より男じゃ嫁にはならない。
「どうしたらいいんだこれ」
俺は悶々と眠れない夜を……過ごさなかった。いつでも眠ろうと思えばすぐに眠れるのが俺のとりえだ。
「お、俺の家は森の奥で」
「職業は?」
「きこりです」
「とりあえず連れて行って」
令嬢(?)の目が俺をカモだと言っている。取り繕うような令嬢言葉もなくなり、完全に下僕認定されている。
手を貸して立ち上がらせようとしたが、「この足で歩けって?」と言われて背負うことになる。いつも薪を背負っているから苦にはならないんだが、こんなぼろぼろなのに埃といい匂いが混ざっていて切ない。いい匂いだけど、身体はやっぱり男みたいで、俺よりは柔らかいが胸も尻も厚みがない。
俺の肩にかかる指先は真新しい傷でいっぱいで、しばらく歩いていたらぐっと重さが増した。眠ってしまったようだ。
手配書の物語が事実なら、悪役令嬢フローリアは十四歳。まだ十五の成人も迎えていないのに、石を投げられて歩けなくなるまで裸足で逃げ惑うなんて、たとえ男でも可哀想だ……。
山奥の家に帰って、一つしかない寝台にそうっと令嬢を下ろしたが目覚めない。
顔は完璧な美少女だ。淡い金色の髪は縦にゆるく巻いていて、同じ色の睫毛は長くやはり上向きにくるりと巻いている。手配書には、瞳は青みがかった紫とあったから、色合いも美しいのだろう。
胸はないが、十四という年齢を考えたらこれからという可能性もある。だけど声は低かったし……俺は思い切って令嬢のスカートをめくった。中に長ズボンのような下着をつけていたから、少し迷ってから股間に手を当てた。
「ある……」
こんな森の中に住んでいたんじゃ出会いはない。たとえ罪人でも優しくしたら嫁にできるんじゃないかと期待したのは仕方ない。平民のように髪を切り、粗末な服を着せたらわからなくなるんじゃないかとも思った。
でもこんな美形が髪を切るぐらいで隠せるはずもないし、何より男じゃ嫁にはならない。
「どうしたらいいんだこれ」
俺は悶々と眠れない夜を……過ごさなかった。いつでも眠ろうと思えばすぐに眠れるのが俺のとりえだ。
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