【完結】婚活オメガはNTRれアルファと結ばれる

爺誤

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「えっと、僕はテディ・バーリと申します。19歳、平民出の、法務省三年目で無位無官の下っ端で……ええと、結婚を前提に付き合っていただきたく、お願いに参りました」
「はは、礼儀正しいんだね。気持ちは嬉しいけど、ごめんね」

 慣れた断り文句に、悲しみよりもホッとした。それよりも僕みたいなのが告白したということに、猛烈な恥ずかしさが込み上げてくる。勢いとはいえ、僕はなんてことを。

「で、ですよね……。僕なんて」
「君じゃなくて俺の問題なんだ。好みが、まあ普通じゃないから、絶望的な片想いをしてる」
「エミル様が?」

 困ったように笑うエミル様が、内緒だよ、と前置きをした。

「ああ、でも個人的に以前よりお近づきになれたから幸せだよ。遊びなら付き合ってもいいけど、結婚を前提にしたい付き合いはノーと言わせてもらう」
「誠実なんですね。ありがとうございます」
「誠実かな? 誠実さを求めるならクラースのほうがいい」
「クラース様は、僕が好みというわけじゃない、でしょう?」

 油断していたところに出てきたクラース様の名前に顔が熱くなってドキドキする。

「俺はまだギリギリ貴族の出だからマシだけど、平民出で近衛騎士隊長になるのは、遊んでいる人間には無理だよ」
「……でも、恋人に振られてヤケになっているんじゃ」

「そんないきなり器用にはならないだろう」
「僕に都合が良すぎてしまいます……」
「君は美形じゃないけど、代わりにほっとする雰囲気を持ってるから、卑下しなくていいよ」
「あはは」

 はっきり美形じゃないって言われたけど、嫌な感じはない。事実だから。
 クラース様が、僕とのことを本気で考えてくれる……ダメダメ尻が軽すぎるよ僕!!
 僕はエミル様に時間をいただいたことのお礼を言って、仕事に戻った。


 〇


 ここしばらく雲上のアルファの方々に縁がありすぎて疲れた僕は、上司に見合いをセッティングしてもらおうと決意した。フリーだから色々考えすぎてしまうんだ。
 ちょうどほかの職員が出払っているとき、上司の机に呼ばれた。ちょうどいいから、上司の話を聞いてから切り出そう。
 上司は一枚の書類をじっと睨んでいた。紙質からしてかなり身分の高い方が使うものだ。

「バーリ、お前に勅命が出た」
「辞令ですか?」

 僕は上司が言い間違えをしたんだと思った。だって僕みたいな下っ端官僚が国王陛下に認識されるはずがない。
 だけど、上司は間違えていないと言い張った。

「勅命、だ」
「あの、王様が出すやつだと思うんですけど」
「そうだ。だけど悪い話じゃない」
「悪い話じゃない王様の命令?」
「縁談だ。近衛騎士団第五隊のエミル・マケラ隊長と結婚しろ」
「へ!? なんで!」

 勅命というだけでもおかしいのに、僕の気持ちを見透かしたような都合のいい采配は意味が分からない。振られたとこなのに、申し訳なさすぎるし、クラース様は……。

「……お前がトール・ディクスゴード様の愛人だという噂がある」
「ありえないでしょ!」

 つい上司に向かって失礼な物言いをしてしまった。

「わたしもそう思う。だけど、いままで浮いた噂のなかったディクスゴード様がフリーのオメガに優しくしたとあっては、ステファン殿下も穏やかでいられなかったようだ。タイプが違うことも警戒心を抱くきっかけになったようだ」

 ディクスゴード様の好みがおかしいって疑ったってこと!? お二人は仲良いのでは!?

「す、ステファン殿下が、ぼ、僕のことを? し、死んでお詫びしたほうが良くないですか!」
「落ち着け。驚いたけど、悪い話じゃないだろう。お前はオメガにしては頑張ってるが、ずっと結婚もしないままいたいわけじゃないだろ?」
「それは……そうですけど、それセクハラじゃないです?」

 上司に縁談を頼もうとしていたことを棚に上げて僕は文句を言った。

「陛下にそれ言えるのか?」
「ひぇっ」
「聞かなかったことにしてやる。エミル・マケラ隊長なら身分は高いが、家柄はお前よりちょっといい程度だ。身分差が激しいというほどじゃない。いいんじゃないか?」
「それ……実は振られたとこなんですよ……」
「まじか」
「まじです」

 二人で頭を抱えてしまった。
 これはいったいどうしたらいいものなのか。
 ただの役人ではどうにもできないと上司が謝ってくれて、僕は頭が爆発しそうな気分でなんとか仕事をこなした。

 色んな話があるけど、どう見てもこれはモテ期ではないことが悲しい。
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