上 下
13 / 25

13 脱獄しなくても

しおりを挟む

 想いが通じ合ったその晩は、食事を取る余裕もなく抱き合った。激しすぎて粗末な寝台が壊れてしまった。

「あっ、ダール、ダールぅ、わた、私は、食事を、あぁぅ」
「コッチで俺のを食ってるだろ」
「あ、ああ、ひど、あああっ」

 すっかり開発された乳首は舐められ吸われて齧られ、性器と化した後孔はダールのものを迎えて歓喜している。俺は胸元のダールの頭を掻き抱いて、足はダールの腰に巻き付けてより深い結合を求めた。
 この男は間違いなく俺のものだという確信が、なによりも嬉しかった。





 俺たちが両想いとなった三日後、スャイハーラの船がガダクツク監獄にたどり着いた。ダールによく似た年嵩の一回り小さな男が接岸しようとする船の看板に立っている。

「親父!!」
「ダール!! 下手こきやがって!! 帰るぞ!」

 俺はその様子を監獄の上の方から見ていた。ダールの求婚以来、監獄内を自由に動けるようになったのだ。
 しかし俺を見る男の半分ほどが股間を押さえてそそくさと姿を消す。なぜなら、ダールが毎晩通っていたのはバレているし、どうも声が丸聞こえだったらしい。

 ダールのお気に入りの男がどんな顔をしているのかと興味津々だった奴らが、俺の顔を見て具体的に想像してしまうようだ。
 ダールは未だにはっきりと言わないが、やはり俺は美しいのだろう。ダール以外の男にどうこうされたいとは思わないが、娯楽の少ない監獄生活なのだから妄想ぐらいは許してやるつもりだ。
 しかし、もし襲ってきたら、不埒者のイチモツを魔法で斬り飛ばすつもりだ。

「親父ぃ、紹介する。俺の伴侶のヒューゴだ!」

「美人だけど男じゃねえか!!」

「いいだろ兄弟はほかにもいるんだから!!」

「しゃーねえな!!」

 え、それでいいのか? 

 驚くほどあっさりとダールと俺の関係を認めた親父さんは、乗れるだけの人間を船に乗せた。乗りたいやつはまた来るからなんて安請け合いをしている。帝国は大丈夫なのだろうか。

「えーっと、帝国の船が定期的にここに来ているはずなんですが」

「あれな、沈めた!!」

「え」

「航路は確保したからガダクツク監獄は俺たちのものだ!」

「やるな親父!」

「お前が監獄掌握してたから楽だったわ!! ガハハハ!」

 帝国は内部でゴタついているから、ガダクツク監獄周辺への注意がおろそかになっているらしい。
 あれかモブ顔の乙女。うまく帝国を堕落させているらしい。正直ざまあみろとしか思わない。

「ヒューゴはスャイハーラに着いたら枷外せるからな!!」

 ダールの親父さんは、俺の手枷について一瞥しただけでどういうものか理解した。スャイハーラにも優れた魔道具職人がいるらしく、その者なら外せるという。

「ありがとうございます。これでもそこそこ魔法が使えるので、必要になったら使ってください」

「おお! 期待してる!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL「いっぱい抱かれたい青年が抱かれる方法を考えたら」(ツイノベBL風味)

浅葱
BL
男という性しか存在しない世界「ナンシージエ」 青年は感じやすい身体を持て余していた。でも最初に付き合ったカレシも、その後にできたカレシも、一度は抱いてくれるもののその後はあまり抱いてくれなかった。 もうこうなったら”天使”になって、絶対に抱かれないといけない身体になった方がいいかも? と思ってしまい…… 元カレ四人×青年。 天使になってしまった青年を元カレたちは受け入れるのか? らぶらぶハッピーエンドです。 「抱かれたい青年は抱いてもらう方法を考えた」の別バージョンです。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

愛しの妻は黒の魔王!?

ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」 ――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。 皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。 身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。 魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。 表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます! 11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

【短編】眠り姫 ー僕が眠りの呪いをかけられた王子様を助けたら溺愛されることになったー

cyan
BL
この国には眠りの呪いをかけられ、眠り続ける美しい王子がいる。 王子が眠り続けて50年、厄介払いのために城から離れた離宮に移されることが決まった頃、魔法が得意な少年カリオが、報酬欲しさに解呪を申し出てきた。 王子の美しさに惹かれ王子の側にいることを願い出たカリオ。 こうして二人の生活は始まった。

メゴ ~追いやられた神子様と下男の俺~

てんつぶ
BL
ニホンから呼び寄せられた神子様は、おかしな言葉しか喋られない。 そのせいであばら家に追いやられて俺みたいな下男1人しかつけて貰えない。 だけどいつも楽しそうな神子様に俺はどんどん惹かれていくけれど、ある日同僚に襲われてーー 日本人神子(方言)×異世界平凡下男 旧題「メゴ」 水嶋タツキ名義で主催アンソロに掲載していたものです 方言監修してもらいましたがおかしい部分はお目こぼしください。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

信号六
BL
後宮のどの美女にも美少年にも手を出さなかった美青年王アズと、その対策にダメ元で連れてこられた屈強男性妃イルドルの短いお話です。屈強男性受け!以前Twitterで載せた作品の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

【短編】愛い花屋の子を揶揄っていたら美味しくいただかれたのは俺だった

cyan
BL
花屋のぽやぽやしたほんわか男子を揶揄っていたら翻弄され食べられちゃう話

処理中です...