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11 気持ちは大きくなるばかり

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「何言ってるんだ」

「手枷を取れば魔法が使えるから、ここから出してやると言っている。私の腕を切り落とせ」

「ふざけんな。お前は俺のものだ。腕も俺のものだ。勝手に切るな」

「だからお前に切ってほしいと」
「嫌だ」

 いつもなら一緒に寝ていくのだが、ダールは立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
 スパッと切ってくれれば、うまくいけば繋がると言わなかったからだろうか。
 ……俺は気が利かない。ダールが俺のことを気に入ってくれているのは感じている。

 しかし、もともと男に欲情しない人間なのだから、ガダクツク監獄から元の世界に戻れば目が覚めるだろう。
 俺は後ろの快楽にハマりすぎて戻れる気がしないが、ダール以外の男にどうこうされたいわけではないから我慢するしかない。
 それは死んでもいいというほどではないつもりだったけれど、もしかして俺はダールに捨てられたら死んでもいいと思っているんだろうか。
 俺はそんなに弱い人間だっただろうか。

 いやしかし、スャイハーラでそれなりの立場にいたなら、もしかしたら妻子持ちかもしれない。監獄という特殊な環境でのことだから黙っていればバレないだろうし、ダールの経歴に瑕疵をつけるのは嫌だ。
 俺は俺の唯一の男は最高の男であってほしい。

 魔力を取り戻せばダールの側にいることは叶うかもしれないが、それで彼が後ろ指を指されるのは駄目だ。

「最後にめちゃくちゃにヤりたいな……」

 独房の小窓に姿を現した月を眺めて、俺はポツリとつぶやいた。
 ほとんどの人間にとって絶望的なガダクツク監獄だろうが、俺には一生の出逢いを得られた大切な場所になった。
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