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5 俺の尊厳

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 逆立つ赤い髪は炎のようなのに、黒とも見紛うような深緑の瞳は静かで不思議な印象だった。
 寝台でダラダラしていた俺の顔を覗き込むと、顎髭を撫でて頷く。

「ふぅん、まあこれならイケるか」
「やめておけよダール、魔法使いだって話だぞ」
「封じられてんだろ。いっぺん帝国貴族をヤってみたかったんだよ。お前は出てろ」

 どれぐらいの間かわからないが、意識が目覚めてあっという間に投獄された俺に、臨機応変な対応ができるはずもない。ダールと呼ばれた赤毛男が、俺のズボンを引き裂く勢いで脱がせたのには少し焦った。服の替えなどないのだから破られるのは困る。

「まって」
「お、抵抗するか?」
「いや、抵抗は、しないから、破らないでほしい。これしかないから」

 狭い部屋で運動もできないし、そもそも何もする気が起きなかった俺に抵抗する力などない。抵抗して痛い思いをするよりは協力して、少しでも状況をマシにしたかった。
 だが、そんな俺の考え方は赤毛男ダールのお気に召さなかったらしく、思いっきり破られた。俺の尊厳が……何も言わなければ良かった。

「抵抗しろよ」
「ああっ」

 俺の悲鳴はズボンが破られ部屋の隅へ投げられた悲しみによるものだったが、情けない声はダールのお気に召したようでニイっと笑った。服が投げられた部屋の隅はトイレだ。

 床に穴が開いていて普段は板で塞がれているだけだが、綺麗な場所ではない。替えのない服を汚さぬように気を付けていたのにショックだった。悲しむ俺を笑うダールは少しだけ瞳の色が明るくなった。顔の下半分は髭に覆われて年齢がわかりにくいが、若いのかもしれない。

 隠すものをなくした俺の下半身は大きく広げられ、ダールがまじまじと見て「うんいける」なんて呟くから、何をする気かはすぐにわかった。俺も子供ではない。
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