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悪役王子だるまにされたけど四肢を取り戻した 1
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動かないおれの肩を抱いたイリアスだったが、なにもエロいことを仕掛けてこなかった。今なら何してもいいと思ったのに、むしろお前の嫌な思い出で上書きしてくれると……。
いちいち癪に障るやつだ。おれの気持ちを全部わかっているみたいな態度に腹が立つ。
「イリアスの馬鹿」
「ドゥルマほどじゃない」
「頭のいい奴は嫌いだ」
「馬鹿で良いということにしてやる」
両手もある。イリアスの力はそう強くない。振り払おうと思えば簡単に振り払えるだろう。
でも、べつにエロいことを仕掛けられているわけじゃない……。カリデュカに降られて傷心すぎて、イリアスの体温にさえ慰められてしまう。
「……本気で好きだった」
「そのようだな」
「ど、童貞のままで死にたくない」
ぐすぐすと泣いてしまった。手足がなくなったのはショックだったし、今でもたまに夢に見て飛び起きるけれど、本当に悲しかったのは誰もおれを愛してくれないということだ。
本気で愛し合ったと信じたカリデュカでさえ、インキュバスの部分――ちんこでおれに惚れてくれていた。結局は穴なんだ。女の子もいるのに、BLから抜け出せない。抜け出せないなら……。
「ドゥルマ、シャイオが来たようだ」
「あ、うん。ちょっと待って」
流れた涙をぬぐおうとしたら、イリアスがハンカチをさっと出して拭いてくれた。間近で見る真面目な顔のイリアスは、さすが攻略対象と言えるだけの美貌を持っている。中身もただのヤンデレではなく、緩急つけた絶妙なバランスで心を崩しにかかってくる。
「これで大丈夫だ」
「ありがと……」
イリアスが入室を許可すると、魔石を持ったシャイオが入ってきた。どことなく元気がない。おれにふられたからだろう。ふられるのって悲しいよな。
よく考えなくても、だるまの刑になったのはシャイオの責任じゃない。むしろおれが受ける苦痛を最低限にするように尽力してくれたのはシャイオだ。最初の無理やりだって、シャイオが履修した本が悪かっただけで……だけかな。うーん、そこは難しい判定ポイントだ。
変態だけど悪いやつじゃない。こうしてふられても足を生やすために準備をしてくれた。
「シャイオ、頼む」
「はい」
おれが声をかけるだけでぱっと表情を明るくして、隣にイリアスがいることに肩を落とす。もとはと言えば、おれが気を持たせるようなことを言ってこいつを操ろうとしたのもある。
魔法が終わって、シャイオがふらふらのまま退出しようとするのは引き留めた。
「イリアス、見てるか、出るかどうする」
おれはシャイオの腕を掴んで、イリアスに選択を迫った。このままシャイオを退出させたら、二度と会えない予感がしたからだ。シャイオが王宮を辞するか、イリアスがシャイオを始末するか。
どちらも嫌だった。
この世界は嫌いだけれど、二人ともおれに嫌なことばかりしたけれど。……誰からも顧みられなかったおれを見つけたのも、この二人だけだ。
いちいち癪に障るやつだ。おれの気持ちを全部わかっているみたいな態度に腹が立つ。
「イリアスの馬鹿」
「ドゥルマほどじゃない」
「頭のいい奴は嫌いだ」
「馬鹿で良いということにしてやる」
両手もある。イリアスの力はそう強くない。振り払おうと思えば簡単に振り払えるだろう。
でも、べつにエロいことを仕掛けられているわけじゃない……。カリデュカに降られて傷心すぎて、イリアスの体温にさえ慰められてしまう。
「……本気で好きだった」
「そのようだな」
「ど、童貞のままで死にたくない」
ぐすぐすと泣いてしまった。手足がなくなったのはショックだったし、今でもたまに夢に見て飛び起きるけれど、本当に悲しかったのは誰もおれを愛してくれないということだ。
本気で愛し合ったと信じたカリデュカでさえ、インキュバスの部分――ちんこでおれに惚れてくれていた。結局は穴なんだ。女の子もいるのに、BLから抜け出せない。抜け出せないなら……。
「ドゥルマ、シャイオが来たようだ」
「あ、うん。ちょっと待って」
流れた涙をぬぐおうとしたら、イリアスがハンカチをさっと出して拭いてくれた。間近で見る真面目な顔のイリアスは、さすが攻略対象と言えるだけの美貌を持っている。中身もただのヤンデレではなく、緩急つけた絶妙なバランスで心を崩しにかかってくる。
「これで大丈夫だ」
「ありがと……」
イリアスが入室を許可すると、魔石を持ったシャイオが入ってきた。どことなく元気がない。おれにふられたからだろう。ふられるのって悲しいよな。
よく考えなくても、だるまの刑になったのはシャイオの責任じゃない。むしろおれが受ける苦痛を最低限にするように尽力してくれたのはシャイオだ。最初の無理やりだって、シャイオが履修した本が悪かっただけで……だけかな。うーん、そこは難しい判定ポイントだ。
変態だけど悪いやつじゃない。こうしてふられても足を生やすために準備をしてくれた。
「シャイオ、頼む」
「はい」
おれが声をかけるだけでぱっと表情を明るくして、隣にイリアスがいることに肩を落とす。もとはと言えば、おれが気を持たせるようなことを言ってこいつを操ろうとしたのもある。
魔法が終わって、シャイオがふらふらのまま退出しようとするのは引き留めた。
「イリアス、見てるか、出るかどうする」
おれはシャイオの腕を掴んで、イリアスに選択を迫った。このままシャイオを退出させたら、二度と会えない予感がしたからだ。シャイオが王宮を辞するか、イリアスがシャイオを始末するか。
どちらも嫌だった。
この世界は嫌いだけれど、二人ともおれに嫌なことばかりしたけれど。……誰からも顧みられなかったおれを見つけたのも、この二人だけだ。
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