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悪役王子だるまにされたけど手が生えたから脱走することにした 3
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イリアスの追手が来ることもなく、王宮からの暗殺者もないまま、カリデュカとの生活は一カ月ほど経過した。
「カリデュカ、これは?」
「あら、混ざっていたのね、シンタは目が良いから助かるわ」
おれはカリデュカが採集してきた薬草を細かく分類する仕事を任されている。彼女はおおらかな性格をしているようで、ちょいちょい不純物が混ざって薬をだめにしてしまうのだ。薬がだめになってもやり直せばいいと笑う彼女に手伝いを申し出た。おれの仕事は彼女の助けになったようで、喜んでもらえている。おれも自分がやれることがあって嬉しい。
触手は度重なるエロ生活で性欲が増してしまったおれの処理を毎晩することで、生命維持をしてもらっている。この家に来てからは主人であるおれの意志を尊重してくれているようで、非常に大人しい。
カリデュカの家には小さな風呂がついていて、彼女はおれを三日に一度風呂に入れてくれる。結構な重労働だが、意外に力があっておれを厚い布に乗せてずるずると運んでくれるんだ。洗ってくれようとするんだが、それはさすがに恥ずかしくて左腕一本でがんばってやっている。腕があるって素晴らしい。
彼女の風呂も三日に一度で、湯上りの彼女は壮絶に色っぽい。外出用の服では分かりにくかったが、彼女の胸はかなりの大きさだ。世話をしてくれるときに、ぽよんぽよんあちこちに触れる幸せを噛みしめている。
毎晩触手に処理してもらっているから、彼女のおっぱいが当たる程度で勃起しないのも有難い。おれは、だんだん彼女のことを女神か聖女かと信仰するようになっていた。じゅうぶんにおっぱいの幸福感を頂いたから、もう童貞のままでも構わない。
正直に言えば、カリデュカがその気になった時におれを選んでくれたら嬉しいけれど、彼女が幸せならそこは重要じゃない。彼女を大事にしてくれる男と結婚するなら、潔く身を引こう。
カリデュカは、月に一度街まで薬を卸しに行く。今日はその日らしく、家にひとり置いていくおれを心配してくれている。一カ月間におれを拾ったのはその帰り道だったそうだ。神はおれを見捨てていなかった!
「シンタ、ほんとうに、一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。カリデュカが用意してくれたこの台車のおかげでいろんなことができるんだ。ありがとう」
おれは自分が乗っている台車を指さした。おれがこういうのが欲しいと説明したら、カリデュカが作ってくれたものだ。台車といっても板切れに小さな車輪がついているだけの代物だが、自身の身体を引きずるより楽になった。
一人暮らししているだけあって、カリデュカは何でもできる。おれは完全にヒモだ。
「なるべく早く帰るからね」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関から見送っていると、何度も振り返りながら驢馬にたくさんの薬を積んで出かけて行った。あの驢馬は放すと勝手にこの家に戻るらしくて、前回はカリデュカより先に帰ってしまっていたそうだ。ゲームのキャラがいつも定位置にいるようなアレかもしれない。忘れかけた頃に世界の設定を思い出させられて不思議な気分になる。
よいしょよいしょと台車と左腕を駆使して家の中に戻り、暇つぶし用にカリデュカが置いて行ってくれた大量の薬草を選り分けようとした。すると最近大人しかった触手が出てきて薬草をちょんちょんと触っている。こうして見ると触手もただの可愛いペットだ。
「なんだ、手伝ってくれるのか」
穏やかな時間だった。断罪から始まったおれの物語も、この森深くの家で静かに終わりを迎えるのだろうか。それも悪くない。
「カリデュカ、これは?」
「あら、混ざっていたのね、シンタは目が良いから助かるわ」
おれはカリデュカが採集してきた薬草を細かく分類する仕事を任されている。彼女はおおらかな性格をしているようで、ちょいちょい不純物が混ざって薬をだめにしてしまうのだ。薬がだめになってもやり直せばいいと笑う彼女に手伝いを申し出た。おれの仕事は彼女の助けになったようで、喜んでもらえている。おれも自分がやれることがあって嬉しい。
触手は度重なるエロ生活で性欲が増してしまったおれの処理を毎晩することで、生命維持をしてもらっている。この家に来てからは主人であるおれの意志を尊重してくれているようで、非常に大人しい。
カリデュカの家には小さな風呂がついていて、彼女はおれを三日に一度風呂に入れてくれる。結構な重労働だが、意外に力があっておれを厚い布に乗せてずるずると運んでくれるんだ。洗ってくれようとするんだが、それはさすがに恥ずかしくて左腕一本でがんばってやっている。腕があるって素晴らしい。
彼女の風呂も三日に一度で、湯上りの彼女は壮絶に色っぽい。外出用の服では分かりにくかったが、彼女の胸はかなりの大きさだ。世話をしてくれるときに、ぽよんぽよんあちこちに触れる幸せを噛みしめている。
毎晩触手に処理してもらっているから、彼女のおっぱいが当たる程度で勃起しないのも有難い。おれは、だんだん彼女のことを女神か聖女かと信仰するようになっていた。じゅうぶんにおっぱいの幸福感を頂いたから、もう童貞のままでも構わない。
正直に言えば、カリデュカがその気になった時におれを選んでくれたら嬉しいけれど、彼女が幸せならそこは重要じゃない。彼女を大事にしてくれる男と結婚するなら、潔く身を引こう。
カリデュカは、月に一度街まで薬を卸しに行く。今日はその日らしく、家にひとり置いていくおれを心配してくれている。一カ月間におれを拾ったのはその帰り道だったそうだ。神はおれを見捨てていなかった!
「シンタ、ほんとうに、一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。カリデュカが用意してくれたこの台車のおかげでいろんなことができるんだ。ありがとう」
おれは自分が乗っている台車を指さした。おれがこういうのが欲しいと説明したら、カリデュカが作ってくれたものだ。台車といっても板切れに小さな車輪がついているだけの代物だが、自身の身体を引きずるより楽になった。
一人暮らししているだけあって、カリデュカは何でもできる。おれは完全にヒモだ。
「なるべく早く帰るからね」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関から見送っていると、何度も振り返りながら驢馬にたくさんの薬を積んで出かけて行った。あの驢馬は放すと勝手にこの家に戻るらしくて、前回はカリデュカより先に帰ってしまっていたそうだ。ゲームのキャラがいつも定位置にいるようなアレかもしれない。忘れかけた頃に世界の設定を思い出させられて不思議な気分になる。
よいしょよいしょと台車と左腕を駆使して家の中に戻り、暇つぶし用にカリデュカが置いて行ってくれた大量の薬草を選り分けようとした。すると最近大人しかった触手が出てきて薬草をちょんちょんと触っている。こうして見ると触手もただの可愛いペットだ。
「なんだ、手伝ってくれるのか」
穏やかな時間だった。断罪から始まったおれの物語も、この森深くの家で静かに終わりを迎えるのだろうか。それも悪くない。
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