悪役王子だるまにされてエロBL世界を生き抜いていく

悪役王子だるまにされたけどとうとう一本取り戻す ３

 首を掴まれたままイリアスを睨みつけていたが、ふっとイリアスが微笑んで首を解放された。狭められていた気道が解放されて咳き込みながら、新鮮な空気を吸う。ギリギリセーフ？

「俺は他の奴らと違う？」
「そうだ……認めたくはないけど」
「やっとドゥルマの本音を聞いた気がする」

　いい笑顔だ。主役級の奴が笑うと破壊力がすさまじい。心臓がドキドキしているのは命の危険があったからだろう。おれは女の子がいいんだ。おっぱいの大きい可愛い子がいい。
　動揺するおれを優しく抱きしめて、イリアスが警備兵を呼ぶ。

「さっきの男を連れてこい」
「え？　シャイオをどうするんだ？」
「気が変わった。俺もドゥルマに抱きしめられたい」

　おおおおお！！！　とうとう、おれに両腕を取り戻すチャンスが！！
　思えば長く苦しいだるま人生だった。一生ぶん突っ込まれたと思う。ナニを。本数的には狂った囚人の檻にぶち込まれたときが一番多かっただろうが、回数はシャイオとイリアスが多いし、触手も……、ふぅ、このへんは記憶の底に封印しよう。
　だるまのおれとは今日でお別れだ。頑張ってよかった。

「ドゥルマ様……」

　顔がぼこぼこにされたシャイオが引き出されて、ちょっと可哀そうだ。自分で癒せるはずだけど、魔法が使えないふりをしているのだろうか。

「貴様ごときが王子の名を気安く呼ぶな」
「ぐっ」

　イリアスがシャイオの頭を踏む。痛そうだけど、人間の頭を踏むイリアスはゲームなら特殊フラグを積み上げてやっとみられるスチルだろう。それぐらいかっこいい。

「ドゥルマ王子の両腕を癒せ」
「イリアス、頭を踏んでいたらできない」
「ふん。ドゥルマの優しさに感謝するんだな」

　シャイオは頭を垂れたまま無言だ。おれの立場わかってくれよ……。

「魔石と、あとは何が必要だ？」
「ドゥルマ殿下の腕に魔法陣を描かせて頂ければ、治癒魔法は使えましょう」
「お前が描くのか」
「私にしか描けません」

　イリアスがふんと鼻を鳴らして、おれをシャイオの前に置いた。インクと筆を持ってこさせている。
正式な魔法陣を描くにはインクも筆も特別なものでしか発動させられない。普通のインクとペンで魔法陣を描き、魔法を成功させたシャイオは、魔法の才能が超一流なんだろう。
　無言でシャイオが魔法陣をおれの腕の切断面に描いていく。
　切断されたときは衝撃だったが、すぐに治癒魔法を施されたから痛みはほんの少しだけだった。精神的な苦痛のほうが大きかったし、そのあとに散々犯されたほうが印象深かった。良かったのか悪かったのか……。

「できました」
「あとは魔力を流すだけか」
「はい」
「ドゥルマ、これで俺を抱きしめられるな」

　表情のなかったシャイオが、ギラっとおれを見た。冷汗が背を伝う。シャイオのくちびるが音を出さずに動いた「ビッチ」。ああああ、畜生認めてやる。仕方ないじゃないか、おれは手足を取り戻したかったんだ！！
　もう開き直るしかない。すべては両腕を取り戻してから。だいしゅきホールドもイリアスに使ってやる！　見てろよシャイオ、おれは目的のためには手段を択ばない男だ。転がって穴を提供するだけのオナホじゃない！

「う……ん、早く、イリアスを抱きしめたいから」
「早く魔法を施せ」
「かしこまりました」

　シャイオがもごもごと何事か呟いて、魔力が集まるのを感じる。魔石を間に通してから魔法陣に魔力が集まるのは、レンズを通して光が集約されて強まる実験に似ている。
　しばらく魔力を注いでいると、魔法陣がぼこぼこと蠢きはじめた。おれの腕の断面やばい。思わずびくっと逃げ腰になったが、イリアスが支えているから動かずに済んだ。
　沸騰する水面のように断面がぼこぼこと反応して、一気にズボーっと腕が生えた。
　恐る恐る指を動かすと、思った通りに動く。

「あ……動く、おれの腕、おれの腕！！　シャイオ！　イリアス！　ありがとう！！」