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悪役王子だるまにされたけどとうとう一本取り戻す 2

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「え……?」
「その男を牢に戻せ」

 聞き間違いだと思いたかった。イリアスはおれ(の身体)に惚れているのだと信じていた。おれのほうから惚れていたつもりはないけれど、胸が苦しい。

「イリアス……なんで」
「お前に手足があったら俺の元から逃げることができてしまう。ここにいれば安全だ」
「安全なんかじゃない!! お前の父親が、ヨゥクォーリ公爵はおれに!!」

 言ってはならないことを言ったはずのおれに、イリアスは顎を上げて薄ら笑いを浮かべて見せた。

「父はうまいだろう? 痛い思いなどしなかったはずだ。正統な血筋があるのだから穢れにはならない」

 この世界は狂っている。バグじゃない。俺に対するエロにだけ、全く倫理観が適用されない。断罪から始まるからか?

「お、おれは嫌だった……。身体と、心は別だ」

 辛うじて反論を絞り出したが、イリアスは嬉しそうだ。おれを抱き寄せてうっとりと笑う。目がイっちゃってて怖い。

「可哀想なドゥルマ。心は嫌がっていても、身体は悦んでしまうんだろう? 俺はそんなお前を堪らなく美しく感じている」
「おれの手足のために、魔石を集めてくれたんじゃないのか?」

 ぼろっと涙が落ちてしまった。この世界の理不尽さは十分に味わっているのに、イリアスに期待してしまった自分が悔しい。
 頬に残る涙の痕をイリアスが舐める。今までの猫を被った貴公子然とした顔はなく、肉食獣が獲物を食らうような表情になっている。最難関ルートの攻略者が一筋縄でいくはずがなかった!

「ドゥルマの望みなら叶えてやりたい。だが、私の目の届かないところで勝手なことをするのは困る。――お仕置きが必要だな?」
「もうしない。いやだ、怖いことも、痛いのも嫌だ」
「私がドゥルマに痛みを与えたことなどないだろう? と比べている?」

 舐められた側と逆側の頬に添えられていた手が、おれの首を掴んだ。ヤンデレなんていう大事な設定を忘れていたおれの馬鹿――!!
 小さい脳みそをフル回転しろ! ヤンデレは心中エンドが多い! おれは今世で童貞を解消して死ぬって決めたんだ! そのための手足だ。そのための魔石だ。
 シャイオもイリアスも手足を取り戻すために必要だから、攻略するんだ。所詮ゲームの中の登場人物、なにかフラグがあるはずだ。目指せ誰にも束縛されないハーレムルート。

「イリアスは誰とも比べものになんてできなかった……だけど、おれを物のように扱うなら、他の奴らと変わらない」

 おれの尊厳を返せ。おれは人間なんだ。生きたオナホじゃない。

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