上 下
26 / 62

悪役王子だるまにされたけどとうとう一本取り戻す 1

しおりを挟む
 目が覚めると、机に向かうシャイオの背中が目に入った。伸びていた髭は剃ったようだ。おじさんからお兄さんぐらいまで若返っている。
 触手は満足したようで大人しくベッド下で眠っているようだ。

「できた」
「なにが?」

 文字と図形の混ざった不思議な文様が書かれた紙を、シャイオは持っている。なんな魔法陣みたいな……魔法陣?

「とりあえず俺に付けられた枷を外します。ドゥルマ様に少しだけご協力願いたいのですが」
「いいよ」

 変態でも研究所のたぶんエリート! 自力で枷を外せるようになるなんて流石だ。ヤられ損にならなくて良かった!!
 魔力を蓄えた魔石はたんまりあるけれど、発動のきっかけがないとうまく魔法陣が示す魔法を発動させられないらしい。スイッチをおれが入れるということだ。

「お願いします」
「うん」

 シャイオが両手に持った魔法陣の上に魔石を置いて、おれよ魔力を流した一瞬魔法陣が青く光った。ファンタジー!! 
 今更だけど魔法のある世界に感激する。前世の記憶を取り戻してから、ドゥルマとして生きた経験が薄れていて困る。前世の記憶がもっと少なかったら、今の境遇にもここまで抵抗しなかったかもしれないのに。

「解けました。ドゥルマ様の愛の力です。ありがとうございます!」

 ただの魔法だ。誰でもできるやつだし、そもそも魔法陣はシャイオが書いている。
 でもシャイオに機嫌よく手足への魔法を施してもらうために、余計なことは言わない。まだ手も足もないから、こいつの気が変わったら簡単にエロ展開にもつれこんでしまう。

「シャイオ、いつヨゥクォーリ公爵が戻ってくるかわからない。急いでおれの手足を癒してくれ」
「魔力が足りない場合はどちらを優先しますか?」

 あ……やっぱり一気に全部は無理か。どっちにするか。……イリアスに使った方便をここでも使うか。おれの頭はそんなに良くない。相手によって使い分けるとあとで訳がわからなくなりそうだ。

「ああ、まずは腕だ。お前を両腕で抱きしめたい。足も欲しいが……あれば、その……繋がっている時に離れないようにできるだろう?」

 わかるかな。だいしゅきホールドしてやるって言ってるんだけど。
 シャイオの顔がぱああっと明るくなった。エロに関することだけは察しが良い。おれ、ちょっとこの世界のコツを掴めたかな。

「すぐに始めさせて頂きます。これだけの魔石があれば」
「何をしている!!」

 誰何の声と同時にシャイオが吹っ飛ばされた。答えさせてやれよ! 声の主はいるはずのないあいつだ。いないからNTRに公爵が来たはずなんだが、あの後シャイオに犯されてひと眠りしたからどれだけ時間が経ったかわからない。

「イリアス」
「嫌な予感がしたから急いで戻ってみたら、これはどういうことだ。警備は何をしていた!!」

 怒髪天を突いた形相のイリアスは、めちゃくちゃ怖かった。警備兵がシャイオを回収してしまう。おれの手足!!

「イリアス待ってくれ。この男はおれに必要なんだ」
「必要ない」
「必要だ、この男は治癒魔法を使える。おれの手足を戻せるかもしれない!」

 警備兵がシャイオを捕えたまま動きを止めている。イリアスがおれを見た。

「必要ない」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

処理中です...