上 下
11 / 62

悪役王子だるまにされて世界に復讐したかったのに触手が生えてしまう5

しおりを挟む
 エロBLゲームのモブ不憫受けとして散々な毎日を過ごしているが、生きているしちょっと体力も戻ってきた。移動は無理だけど、身体を起こせるようになっただけでも嬉しい。他人には見せられない姿だけど。

「シャイオ、おれの服はないのか」
「……あり……ます……」

 おれの問いに、シャイオは絞り出すような声を出した。ものすごく不本意そうに出してきたのは、袖の短いワンピースのような服だった。短パン履かせるよりはこっちのほうが楽ってことか。でも下着は必要だろう。めくれたら見たほうもトラウマものだろう。何せ足は切断面しかない。

「下着は?」
「……必要でしょうか」
「必要だ」

 おれに基本的人権を返せ。だるまで触手憑きなんていう有様だが、王籍が剥奪されていないと言っていたから、今でも身分は第二王子のままのはずだ。さすがに継承権はなくなっているだろうが。兄に万一のことがあって触手憑きだるまが王になるとか、全方位不幸だろう。おれもべつに王になりたい欲はない。責任のある仕事なんて死んでも御免だ。

 それがフラグになったのか。

 兄が死んだ。完全な不慮の事故だったそうだ。
 そして、間抜けな王家はおれの継承権を消していなかったそうで、王太子の地位が回ってきてしまった。おれはだるまの姿で人前に出たくない。だるまで大勢に輪姦されているところは父王も見ていたはずだ。

「まあ、こうなるよな」
「ドゥルマ様のことは私の命にかけてお守りします」

 いまは王家から暗殺者が送られてきたのを察知したシャイオが、おれを抱えて逃げている。絶倫なだけあって体力がある。
 人目を避けて森の中を進んでいると、廃村にたどり着いた。かろうじて屋根の残っている廃屋に潜りこんで、一息をついた。

「疲れていませんか? 水を探してきます」

 抱えられていただけのおれより疲れているはずのシャイオが頼もしい。崩れそうな扉に触れないように出て行く後ろ姿を見送った。
 ……酷い死に方じゃないなら諦めても良いじゃないか?
 シャイオは変態でどうしようもないが、それなりに優秀な魔術師だろう。死んでもおかしくない怪我を一瞬で跡形も無く治せる腕がある。

 このおかしな世界ではあいつが標準で、おれが異質だ。本当におれがこの世界の住人なら、シャイオに惚れて良いはずだ。BLなら犯されても相手に惚れてしまうなんてことは多い。
 でもおれは、未だに痛みもないのにあいつが憎い。おれの意志を確認しない人間が許せない。触手もそうだ。おれが喚んだからここにいられるのに、主人であるおれを犯してくるから便利さへの喜びも半減以下だ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

処理中です...