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第四章 夏と花火と過去の亡霊
乱れる(後・☆)
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中身の入ったゴムが出ていく時の、あの何とも言えない感覚が今日はない。
失敗してたらどうしよう、という考えが頭をよぎる。周期的には一応大丈夫、なはずだけれど、それを信じると後で焦る羽目になるのは高校時代の先輩カップルの修羅場、妊娠疑惑騒動を通じてよく知っている。
枕から頭を起こせずにいる私の髪を、爽太が優しく撫でてくれる。
「大丈夫」
……じゃあ、さっきの違和感は何だったの?
「俺、まだイってないから」
息を呑んだ私の身体がくるりとひっくり返され、オレンジの常夜灯だけが点いている薄暗い天井が視界に映った。何がなんだかわからないままにもう一度貫かれ、目の前が白黒に瞬く。
色が戻ってきた視界の中で、爽太がとても楽しそうに笑っていた。
「美波、あんなに欲しそうにしてたのに一回イッただけで足りるわけないでしょ」
「え」
「――続き、するよ」
今日あまり構ってもらえなかったおなか側の弱いところを念入りに擦り上げられて、冷めかけていた熱があっという間に戻ってくる。
「ん、うぅ……っあぁあん」
「美波」
のしかかってきた爽太にキスをされ、口の中と身体の中を同時に掻き回される。
なにこれ。
してることはいつもと同じなのに、なんでこんなに気持ちいいの。
うまく受け止められずに小さく身体を捩ったら当たりどころが変わり、急に来た刺激に驚いて爽太の舌を噛みそうになってしまう。慌てて唇を離した私を見て、爽太が一瞬だけ眉を顰めた。
……今の、何?
「もう一回イかせてあげるから、逃げちゃダメ」
「逃げてなんかっ……うぅ、あぁあ」
奥を捏ねながらきつく抱きしめられ、私も爽太の背中に手を回してしがみついた。腕の中と身体の中の両方に、本物の爽太がいる。
「さっき一人で先にイっちゃった美波、すごくかわいかったけど」
揺さぶられながら囁かれ、そうなった瞬間の強烈な快感を思い出してしまっておなかの奥が疼く。あんなのがもう一回来たら自分がどうなっちゃうかわからない。でも。
「今度は、俺も一緒がいいな」
逃げるわけなんてない。一緒がいい。爽太と一緒がいい。
爽太とじゃなきゃ、一緒にイけない。
……喉、渇いた。
目を覚まして最初に思ったのはそれだった。帰ってきてから水分補給してなかったし、散々声を上げさせられたせいなのか微妙に喉がチリチリする。事を終えた後にベッドから起き上がれずにいた私を爽太が抱きしめてくれたことまでは覚えているのだけれど、どうやらそのまま寝てしまったらしい。
寝落ちするまで疲れさせた相手は、私を抱えて静かに眠っている。私の首だけじゃなくて爽太の腕にも悪いから腕枕のまま寝るのはナシって約束したのに。
爽太を起こさないように腕の中から抜け出し、ベッドの上で身体を起こす。肌触りのいいタオルケットが滑り落ち、肌に散らされた赤い痕が視界に入って思わず息を呑んだ。
痕が、寝る前よりも明らかに増えている。
……服で隠れるところにしかついていないとはいえ、これはちょっとやりすぎでしょ。
私は小さくため息をつき、お風呂上がりに使っていたバスタオルを探す。下に降りて何か飲みたいけれどさすがに何も着てない状態で人様の家をうろつくわけにはいかない。
タオルより先に、ヘッドボードの上に置かれたペットボトルが目に入った。
目を覚ました私が下まで行かなくてもいいように、という爽太の気づかいをありがたく受け取って喉を潤す。洗ってない髪とメイクを落としていない顔がべたついているのに身体がそこまで気持ち悪くないのも、きっと爽太が綺麗にしてくれたからだろう。
ペットボトルを元の位置に戻し、私は眠っている爽太を見つめる。
……さっきの爽太、すごかったな。
全身にべったべたに痕つけられて散々焦らされてから意識飛びそうになるくらい深くイかされること、二回……じゃない。爽太より先にもう一回私の限界が来たから、三回。寝る前にしたこと全部、今までの人生で一番濃厚で一番気持ちよかったけれど。
ちょっと、おかしかった。
こんなに痕を残されたのも、泣きたくなるくらい焦らされたのも、私だけを強制的に高いところへ押し上げるみたいなやり方も、最中に顰めた眉も。どれもこれもいつもの爽太と違っていた。
この間のくーちゃんとの会話が頭に浮かんできて、私は唇を噛みしめる。
『相手に他に好きな人ができた時って、なんとなーくアレの時の雰囲気変わる感じがするんだけど』
ねえ、爽太。
私としながらどんなこと――誰のこと、考えてた?
失敗してたらどうしよう、という考えが頭をよぎる。周期的には一応大丈夫、なはずだけれど、それを信じると後で焦る羽目になるのは高校時代の先輩カップルの修羅場、妊娠疑惑騒動を通じてよく知っている。
枕から頭を起こせずにいる私の髪を、爽太が優しく撫でてくれる。
「大丈夫」
……じゃあ、さっきの違和感は何だったの?
「俺、まだイってないから」
息を呑んだ私の身体がくるりとひっくり返され、オレンジの常夜灯だけが点いている薄暗い天井が視界に映った。何がなんだかわからないままにもう一度貫かれ、目の前が白黒に瞬く。
色が戻ってきた視界の中で、爽太がとても楽しそうに笑っていた。
「美波、あんなに欲しそうにしてたのに一回イッただけで足りるわけないでしょ」
「え」
「――続き、するよ」
今日あまり構ってもらえなかったおなか側の弱いところを念入りに擦り上げられて、冷めかけていた熱があっという間に戻ってくる。
「ん、うぅ……っあぁあん」
「美波」
のしかかってきた爽太にキスをされ、口の中と身体の中を同時に掻き回される。
なにこれ。
してることはいつもと同じなのに、なんでこんなに気持ちいいの。
うまく受け止められずに小さく身体を捩ったら当たりどころが変わり、急に来た刺激に驚いて爽太の舌を噛みそうになってしまう。慌てて唇を離した私を見て、爽太が一瞬だけ眉を顰めた。
……今の、何?
「もう一回イかせてあげるから、逃げちゃダメ」
「逃げてなんかっ……うぅ、あぁあ」
奥を捏ねながらきつく抱きしめられ、私も爽太の背中に手を回してしがみついた。腕の中と身体の中の両方に、本物の爽太がいる。
「さっき一人で先にイっちゃった美波、すごくかわいかったけど」
揺さぶられながら囁かれ、そうなった瞬間の強烈な快感を思い出してしまっておなかの奥が疼く。あんなのがもう一回来たら自分がどうなっちゃうかわからない。でも。
「今度は、俺も一緒がいいな」
逃げるわけなんてない。一緒がいい。爽太と一緒がいい。
爽太とじゃなきゃ、一緒にイけない。
……喉、渇いた。
目を覚まして最初に思ったのはそれだった。帰ってきてから水分補給してなかったし、散々声を上げさせられたせいなのか微妙に喉がチリチリする。事を終えた後にベッドから起き上がれずにいた私を爽太が抱きしめてくれたことまでは覚えているのだけれど、どうやらそのまま寝てしまったらしい。
寝落ちするまで疲れさせた相手は、私を抱えて静かに眠っている。私の首だけじゃなくて爽太の腕にも悪いから腕枕のまま寝るのはナシって約束したのに。
爽太を起こさないように腕の中から抜け出し、ベッドの上で身体を起こす。肌触りのいいタオルケットが滑り落ち、肌に散らされた赤い痕が視界に入って思わず息を呑んだ。
痕が、寝る前よりも明らかに増えている。
……服で隠れるところにしかついていないとはいえ、これはちょっとやりすぎでしょ。
私は小さくため息をつき、お風呂上がりに使っていたバスタオルを探す。下に降りて何か飲みたいけれどさすがに何も着てない状態で人様の家をうろつくわけにはいかない。
タオルより先に、ヘッドボードの上に置かれたペットボトルが目に入った。
目を覚ました私が下まで行かなくてもいいように、という爽太の気づかいをありがたく受け取って喉を潤す。洗ってない髪とメイクを落としていない顔がべたついているのに身体がそこまで気持ち悪くないのも、きっと爽太が綺麗にしてくれたからだろう。
ペットボトルを元の位置に戻し、私は眠っている爽太を見つめる。
……さっきの爽太、すごかったな。
全身にべったべたに痕つけられて散々焦らされてから意識飛びそうになるくらい深くイかされること、二回……じゃない。爽太より先にもう一回私の限界が来たから、三回。寝る前にしたこと全部、今までの人生で一番濃厚で一番気持ちよかったけれど。
ちょっと、おかしかった。
こんなに痕を残されたのも、泣きたくなるくらい焦らされたのも、私だけを強制的に高いところへ押し上げるみたいなやり方も、最中に顰めた眉も。どれもこれもいつもの爽太と違っていた。
この間のくーちゃんとの会話が頭に浮かんできて、私は唇を噛みしめる。
『相手に他に好きな人ができた時って、なんとなーくアレの時の雰囲気変わる感じがするんだけど』
ねえ、爽太。
私としながらどんなこと――誰のこと、考えてた?
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