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第二章 探り合い
探り合い(中・☆)
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身体の中から何かがなくなる感覚があって、私は視線だけを爽太に向ける。常夜灯の光を反射してぬるりと光っているのは爽太の。
「……ゆ、び?」
「そう。……薬指も、意外と悪くないでしょ」
怪我をしていない右手の薬指を見せつけるように動かしてから、爽太はその指でさっきまで舐めていた突起を撫でる。イったばかりで敏感になっているところに与えられた新しい刺激に私は声も出せずに身体を震わせた。指を使えないってあれだけ強調してたのにこういうことをしてくるなんて。
……完っ全に、遊ばれてるし。
「ほんっと、美波はいい反応してくれるね」
しかも、私が無理ってならないギリギリのラインを的確に探り当てて攻めてくるあたり。
「……ほんっと、イイ性格、してるよね……。爽太のばか」
抗議した直後におでこにキスをされる。
爽太は私にのしかかるようにしながら腕を伸ばし、ヘッドボードの抽斗を開けた。その拍子に脚に当たったのは、スウェットパンツ越しでもはっきりとわかるくらい存在を主張している、爽太のもの。
「……ね」
「ん?」
「指、そんなだけど、その、大丈夫……?」
抽斗から小箱を取り出し、薄っぺらい包みを手にした爽太が少し考えるような顔をする。
「破かないよう気をつけるけど……心配なら、今日はもうやめとく?」
「……無理」
「だよな。……俺も、ここでやめるとか無理だ」
爽太が残っていた服を脱ぎ、準備を始める。指先の絆創膏をゴムに引っかけないようにしながらいつもと変わらない速度で手を動かしているのだから本当に指が器用だ。
爽太がコントラバスを担当することになったのは、楽器未経験組の中で一番指がよく動くのを同じコントラバス弾きである顧問の先生が見込んだからだった。人体の構造的にうまく動かせないはずの薬指でああいうことをされて、その器用さを十年越しに身をもって思い知らされてしまった。
……なんか、色々負けてる感じがしてちょっと悔しい。
爽太の手が止まったところで私は身体を起こした。爽太に抱きつき、軽いキスをしながらじわじわと体重をかけていく。
「美波」
「ん?」
「もしかして、俺のこと押し倒そうとしてる?」
「うん」
「なんでまた」
「なんとなく」
爽太がくくっと笑って私の腰に腕を回し、そのままベッドに倒れ込む。おなか同士をぴったり合わせ、爽太が仰向け、私がうつ伏せになった体勢で抱きしめあう。
服着てるとわからないけど、爽太は意外と締まった体型だ。こうして触れ合って初めてわかることはたくさんある。
……ベッドの上ではほんのちょっと意地悪になるところとか、まさにそう。
「で、押し倒してからどうしたい?」
返事の代わりに、私は爽太のものと自分のとろけたところを触れ合わせて軽く滑らせる。
爽太のそれがひくりと反応するのがわかった。
「……さっきの、すっごく、びっくりしたんだからね」
「その仕返し?」
頷くと爽太が笑い出した。腹筋が動いて私のおなかを揺らすのがなんだが面白くてつられて笑ってしまう。
ひとしきり笑った後、爽太が甘い声で言う。
「何されるんだろうな」
仕返しの許可が出た。私は身体を起こして爽太に跨り、薄い膜に覆われたものに手を添える。
爽太が小さく喉を鳴らした。驚かせるのは成功したらしい。
「……そう来たか」
今度は、こっちが爽太のギリギリのラインを探る番。
「これ、嫌い?」
「嫌いなわけないし。あのさ、美波」
「なあに?」
「これ、どう考えても『仕返し』じゃないんだけど」
「じゃあ、何?」
「ご褒美」
期待に応えるために、位置を合わせてほんの少しだけ腰を落とす。ぐぷ、と音を立てて入ってくる感覚に身震いする私の腰を爽太が支えて一気に奥まで行かないようにしてくれる。
じわじわと、私の中が爽太のかたちに拓かれていく。
どうにか奥まで納めて、今までの相手とは明らかに違うずっしりとした存在感に慣れようと大きく息を吐く。挿れるだけでへばってる場合じゃない。肝心なのはここからだ。
抜ける寸前まで腰を浮かせて、すとんと落として。処女じゃないんだからどうやって動けばいいのかはちゃんと知ってる。知ってるけど。
「……っ、ふぅっ」
今までと勝手が違いすぎる。浮かせるのも落とすのも、両方の動きを大きくしないと中途半端な抜き挿しになってしまうし、大きくすると今度は刺激が強すぎて動けなくなる。
爽太相手にこれをするのはちょっと無謀だったけど、仕掛けた以上は最後まで頑張らないといけないと思いながら私は懸命に身体を揺らす。
「美波」
「な、に?」
「動いてもらえるのすごく嬉しいんだけどさ、ひとつだけ、リクエストさせて」
リクエスト、と言われて私は身構える。こういう時にどう言われるのかも、ちゃんと知ってる。
――この後に続く言葉はきっと、『もっとちゃんと動いてくれないとイけない』だ。
「もっと好きなように動いて」
「……え?」
「すっごく頑張ってくれてるのはわかるけど、あんまり楽しそうに見えない。俺のこと一旦置いといて、自分が気持ちよくなることだけ考えてみて」
私の太ももに爽太の手が触れた。絆創膏が引っかからないように指先だけを少し浮かせて、優しく労わるような手つきで撫でられる。
過去に聞いた言葉が頭の中で響く。
『脚疲れたとか言わないの。いつも俺が上で頑張ってるんだから、たまにはミナも頑張ってくれたっていいじゃん』
「美波が俺に乗っかって気持ちよさそうにしてるところ、見てみたい」
『そうそう。そうやって俺のために頑張ってるところ、撮らせてよ。自分でする時に使うからさぁ』
二人目の元彼と四人目の爽太の言うことがあまりにも違いすぎて、どっちが正解なのかわからなくなってしまう。でも。
今の相手は、爽太だから。
「……ゆ、び?」
「そう。……薬指も、意外と悪くないでしょ」
怪我をしていない右手の薬指を見せつけるように動かしてから、爽太はその指でさっきまで舐めていた突起を撫でる。イったばかりで敏感になっているところに与えられた新しい刺激に私は声も出せずに身体を震わせた。指を使えないってあれだけ強調してたのにこういうことをしてくるなんて。
……完っ全に、遊ばれてるし。
「ほんっと、美波はいい反応してくれるね」
しかも、私が無理ってならないギリギリのラインを的確に探り当てて攻めてくるあたり。
「……ほんっと、イイ性格、してるよね……。爽太のばか」
抗議した直後におでこにキスをされる。
爽太は私にのしかかるようにしながら腕を伸ばし、ヘッドボードの抽斗を開けた。その拍子に脚に当たったのは、スウェットパンツ越しでもはっきりとわかるくらい存在を主張している、爽太のもの。
「……ね」
「ん?」
「指、そんなだけど、その、大丈夫……?」
抽斗から小箱を取り出し、薄っぺらい包みを手にした爽太が少し考えるような顔をする。
「破かないよう気をつけるけど……心配なら、今日はもうやめとく?」
「……無理」
「だよな。……俺も、ここでやめるとか無理だ」
爽太が残っていた服を脱ぎ、準備を始める。指先の絆創膏をゴムに引っかけないようにしながらいつもと変わらない速度で手を動かしているのだから本当に指が器用だ。
爽太がコントラバスを担当することになったのは、楽器未経験組の中で一番指がよく動くのを同じコントラバス弾きである顧問の先生が見込んだからだった。人体の構造的にうまく動かせないはずの薬指でああいうことをされて、その器用さを十年越しに身をもって思い知らされてしまった。
……なんか、色々負けてる感じがしてちょっと悔しい。
爽太の手が止まったところで私は身体を起こした。爽太に抱きつき、軽いキスをしながらじわじわと体重をかけていく。
「美波」
「ん?」
「もしかして、俺のこと押し倒そうとしてる?」
「うん」
「なんでまた」
「なんとなく」
爽太がくくっと笑って私の腰に腕を回し、そのままベッドに倒れ込む。おなか同士をぴったり合わせ、爽太が仰向け、私がうつ伏せになった体勢で抱きしめあう。
服着てるとわからないけど、爽太は意外と締まった体型だ。こうして触れ合って初めてわかることはたくさんある。
……ベッドの上ではほんのちょっと意地悪になるところとか、まさにそう。
「で、押し倒してからどうしたい?」
返事の代わりに、私は爽太のものと自分のとろけたところを触れ合わせて軽く滑らせる。
爽太のそれがひくりと反応するのがわかった。
「……さっきの、すっごく、びっくりしたんだからね」
「その仕返し?」
頷くと爽太が笑い出した。腹筋が動いて私のおなかを揺らすのがなんだが面白くてつられて笑ってしまう。
ひとしきり笑った後、爽太が甘い声で言う。
「何されるんだろうな」
仕返しの許可が出た。私は身体を起こして爽太に跨り、薄い膜に覆われたものに手を添える。
爽太が小さく喉を鳴らした。驚かせるのは成功したらしい。
「……そう来たか」
今度は、こっちが爽太のギリギリのラインを探る番。
「これ、嫌い?」
「嫌いなわけないし。あのさ、美波」
「なあに?」
「これ、どう考えても『仕返し』じゃないんだけど」
「じゃあ、何?」
「ご褒美」
期待に応えるために、位置を合わせてほんの少しだけ腰を落とす。ぐぷ、と音を立てて入ってくる感覚に身震いする私の腰を爽太が支えて一気に奥まで行かないようにしてくれる。
じわじわと、私の中が爽太のかたちに拓かれていく。
どうにか奥まで納めて、今までの相手とは明らかに違うずっしりとした存在感に慣れようと大きく息を吐く。挿れるだけでへばってる場合じゃない。肝心なのはここからだ。
抜ける寸前まで腰を浮かせて、すとんと落として。処女じゃないんだからどうやって動けばいいのかはちゃんと知ってる。知ってるけど。
「……っ、ふぅっ」
今までと勝手が違いすぎる。浮かせるのも落とすのも、両方の動きを大きくしないと中途半端な抜き挿しになってしまうし、大きくすると今度は刺激が強すぎて動けなくなる。
爽太相手にこれをするのはちょっと無謀だったけど、仕掛けた以上は最後まで頑張らないといけないと思いながら私は懸命に身体を揺らす。
「美波」
「な、に?」
「動いてもらえるのすごく嬉しいんだけどさ、ひとつだけ、リクエストさせて」
リクエスト、と言われて私は身構える。こういう時にどう言われるのかも、ちゃんと知ってる。
――この後に続く言葉はきっと、『もっとちゃんと動いてくれないとイけない』だ。
「もっと好きなように動いて」
「……え?」
「すっごく頑張ってくれてるのはわかるけど、あんまり楽しそうに見えない。俺のこと一旦置いといて、自分が気持ちよくなることだけ考えてみて」
私の太ももに爽太の手が触れた。絆創膏が引っかからないように指先だけを少し浮かせて、優しく労わるような手つきで撫でられる。
過去に聞いた言葉が頭の中で響く。
『脚疲れたとか言わないの。いつも俺が上で頑張ってるんだから、たまにはミナも頑張ってくれたっていいじゃん』
「美波が俺に乗っかって気持ちよさそうにしてるところ、見てみたい」
『そうそう。そうやって俺のために頑張ってるところ、撮らせてよ。自分でする時に使うからさぁ』
二人目の元彼と四人目の爽太の言うことがあまりにも違いすぎて、どっちが正解なのかわからなくなってしまう。でも。
今の相手は、爽太だから。
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