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三上さんとメモ帳
ガチャガチャをしませんか? その2
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その後も俺たちは色々なガチャガチャを見ては感想を言い合ったり、実際にやってみたりした。
店内を大体半分くらい確認した頃、俺たちガチャガチャ探検隊は遂にお目当ての品を発見する。
「三上、あれじゃないか!?」
「専用のエリアがあったんですね」
俺たちが切望していたリアルな生き物シリーズは目玉商品なのだろう、店内真ん中の目立つところにデカデカと設置されていた。
トカゲだけでなくカブトムシ虫や蝶、微生物なんて変わり種もあり、見ているだけで既に楽しい。
三上は興奮した様子でトカゲの筐体に駆け寄り、指を刺す。
「私はこの、真っ白なトカゲ狙いでいきます」
「……確率は単純に考えて五分の一か。可能性は十分にあるな」
「ちょっと両替してきますね」
三上が狙っている真っ白なトカゲの他にも、黄色に黒い斑点のある個体やオレンジの個体など、全部で五種類のラインナップだ。
確認していると、こちらへ向かってくる足音が聞こえる。
戻ってきた三上は五百円玉を二枚入れると、よしと小さく声を漏らし、意を決してノブを回した。
「……あ、黄色いやつが出ました」
彼女が引き当てたのは、黄色に斑点のあるトカゲだった。
残念ながら、目当ての色を引き当てる事が出来なかったようだが、これもこれで可愛い。
でも、ここで諦めるのも納得がいかないというものだ。
「次は俺がやろうかな。両替行ってくる」
「待ってますね~」
両替機にたどり着き、千円札を食べさせる。
排出された小銭を手に両替から帰ろうと進むと、俺を待っている三上の姿に目が奪われる。
今日の彼女の服装は白いワンピース。
黒くて長い髪とワンピースの色がコントラストとなって、白い肌をより強調しているようだ。
「……三上のガチャガチャがあれば、無限に回すんだけどなぁ」
脳内には、色々な服装の三上が並んでいた。
「いや、やめておこう。まだ捕まりたくない」
本人には絶対に伝えられない気持ち悪い想像を萎ませながら、彼女の元へと戻る。
「ただいま、それじゃあ回すぞ」
「わくわくしますね」
五百円玉を投入し、ゆっくりと手を捻っていく。
出てきたカプセルの中には――。
「なんだ? 色素の薄い……」
「…………わぁ!」
「……白いやつだ!」
お互い予想外だった。
俺が引いたのは、三上が欲しがっていた白いトカゲだったのだ。
すごいぞ俺。土壇場で最高の引きをできた。
俺は、手の中に収まったばかりのカプセルを、三上の方に差し出す。
「ほら三上、良かったら受け取ってくれ」
「え……いいんですか?」
「だってこれが欲しかったんだろ? 綺麗な三上には、綺麗なトカゲが似合うしな。俺だと思って大切にしてくれ」
俺は特にどれが欲しかったとかはないからな。
トカゲであればなんでもよかった。
言葉だけ聞くとクズ男のようだが気にしないでほしい。
カプセルを渡すと、三上は目を大きくさせて喜んでいた。
うん。とりあえず、今日から三上に可愛がられるであろうこのトカゲが羨ましい。
視界の共有とかできないだろうか。
「あの、ありがとうございます。それに、き、綺麗っていうのも……」
「ん? ごめん、最後の方がよく聞き取れなくて」
三上の言葉を聞き逃してしまうなんて、俺もヤキが回ったな。
その言葉を聞いて、彼女は一瞬恥ずかしそうに目を逸らしたが、すぐにこちらに視線を戻す。
「なんでもないです。それで、代わりに私のを……」
「いいのか? ありがたく受け取るよ」
「いえ、こちらこそ嬉しいです。……ふふっ」
やった、思わぬ収穫だ。
まさか三上からトカゲをもらう事が出来るとは。
神棚を作って、その上に飾るとしよう。
三上も嬉しそうにしているし、その姿を見れただけで俺は満足だ。
「このトカゲを黒木くんだと思って大切にしますね」
「うん、そうしてほしい。それはもう大切にしてくれ」
「じゃあ今日から「ナオ」くんって呼ぶことにしますね」
「名前まで付けるの!?」
しかも名前呼び、俺もまだ呼ばれたことないのに!
トカゲに負けて落ち込む俺をよそに、三上はカプセルを大事そうにしまう。
そしてカバンからメモ帳を取り出して、ペンを走らせている。
「三上、今日はなんて書いたんだ?」
「黒木くんは触手の一本一本まで丁寧に見ている。です」
「ちょっと変態っぽいな」
間違ってはいないんだけど、変態感が拭えない。
――――――――――――――――
帰宅した俺は早速、太陽のように光り輝いて見える今日の戦利品を組み立てた。
アマクサクラゲの他にも、カブトムシや蝶など、色々なガチャガチャをやってしまった。
どれもこれも本当にクオリティが高く、カブトムは飛んでいる姿で飾ることにした。
一瞬にして、俺の机の上は生態系を獲得したのだ。
さて、肝心の三上にもらったトカゲなのだが……。
何かの間違いで三上に部屋を見られたらドン引きされると思い、神棚制作は諦めてベッド横の小さいテーブルの上に飾ることにした。
これで朝起きたら一番に愛でる事ができる。
……あまりのリアルさに、夜トイレに起きた時に見かけ、驚きのあまり転びそうになった事は秘密にしておこう。
店内を大体半分くらい確認した頃、俺たちガチャガチャ探検隊は遂にお目当ての品を発見する。
「三上、あれじゃないか!?」
「専用のエリアがあったんですね」
俺たちが切望していたリアルな生き物シリーズは目玉商品なのだろう、店内真ん中の目立つところにデカデカと設置されていた。
トカゲだけでなくカブトムシ虫や蝶、微生物なんて変わり種もあり、見ているだけで既に楽しい。
三上は興奮した様子でトカゲの筐体に駆け寄り、指を刺す。
「私はこの、真っ白なトカゲ狙いでいきます」
「……確率は単純に考えて五分の一か。可能性は十分にあるな」
「ちょっと両替してきますね」
三上が狙っている真っ白なトカゲの他にも、黄色に黒い斑点のある個体やオレンジの個体など、全部で五種類のラインナップだ。
確認していると、こちらへ向かってくる足音が聞こえる。
戻ってきた三上は五百円玉を二枚入れると、よしと小さく声を漏らし、意を決してノブを回した。
「……あ、黄色いやつが出ました」
彼女が引き当てたのは、黄色に斑点のあるトカゲだった。
残念ながら、目当ての色を引き当てる事が出来なかったようだが、これもこれで可愛い。
でも、ここで諦めるのも納得がいかないというものだ。
「次は俺がやろうかな。両替行ってくる」
「待ってますね~」
両替機にたどり着き、千円札を食べさせる。
排出された小銭を手に両替から帰ろうと進むと、俺を待っている三上の姿に目が奪われる。
今日の彼女の服装は白いワンピース。
黒くて長い髪とワンピースの色がコントラストとなって、白い肌をより強調しているようだ。
「……三上のガチャガチャがあれば、無限に回すんだけどなぁ」
脳内には、色々な服装の三上が並んでいた。
「いや、やめておこう。まだ捕まりたくない」
本人には絶対に伝えられない気持ち悪い想像を萎ませながら、彼女の元へと戻る。
「ただいま、それじゃあ回すぞ」
「わくわくしますね」
五百円玉を投入し、ゆっくりと手を捻っていく。
出てきたカプセルの中には――。
「なんだ? 色素の薄い……」
「…………わぁ!」
「……白いやつだ!」
お互い予想外だった。
俺が引いたのは、三上が欲しがっていた白いトカゲだったのだ。
すごいぞ俺。土壇場で最高の引きをできた。
俺は、手の中に収まったばかりのカプセルを、三上の方に差し出す。
「ほら三上、良かったら受け取ってくれ」
「え……いいんですか?」
「だってこれが欲しかったんだろ? 綺麗な三上には、綺麗なトカゲが似合うしな。俺だと思って大切にしてくれ」
俺は特にどれが欲しかったとかはないからな。
トカゲであればなんでもよかった。
言葉だけ聞くとクズ男のようだが気にしないでほしい。
カプセルを渡すと、三上は目を大きくさせて喜んでいた。
うん。とりあえず、今日から三上に可愛がられるであろうこのトカゲが羨ましい。
視界の共有とかできないだろうか。
「あの、ありがとうございます。それに、き、綺麗っていうのも……」
「ん? ごめん、最後の方がよく聞き取れなくて」
三上の言葉を聞き逃してしまうなんて、俺もヤキが回ったな。
その言葉を聞いて、彼女は一瞬恥ずかしそうに目を逸らしたが、すぐにこちらに視線を戻す。
「なんでもないです。それで、代わりに私のを……」
「いいのか? ありがたく受け取るよ」
「いえ、こちらこそ嬉しいです。……ふふっ」
やった、思わぬ収穫だ。
まさか三上からトカゲをもらう事が出来るとは。
神棚を作って、その上に飾るとしよう。
三上も嬉しそうにしているし、その姿を見れただけで俺は満足だ。
「このトカゲを黒木くんだと思って大切にしますね」
「うん、そうしてほしい。それはもう大切にしてくれ」
「じゃあ今日から「ナオ」くんって呼ぶことにしますね」
「名前まで付けるの!?」
しかも名前呼び、俺もまだ呼ばれたことないのに!
トカゲに負けて落ち込む俺をよそに、三上はカプセルを大事そうにしまう。
そしてカバンからメモ帳を取り出して、ペンを走らせている。
「三上、今日はなんて書いたんだ?」
「黒木くんは触手の一本一本まで丁寧に見ている。です」
「ちょっと変態っぽいな」
間違ってはいないんだけど、変態感が拭えない。
――――――――――――――――
帰宅した俺は早速、太陽のように光り輝いて見える今日の戦利品を組み立てた。
アマクサクラゲの他にも、カブトムシや蝶など、色々なガチャガチャをやってしまった。
どれもこれも本当にクオリティが高く、カブトムは飛んでいる姿で飾ることにした。
一瞬にして、俺の机の上は生態系を獲得したのだ。
さて、肝心の三上にもらったトカゲなのだが……。
何かの間違いで三上に部屋を見られたらドン引きされると思い、神棚制作は諦めてベッド横の小さいテーブルの上に飾ることにした。
これで朝起きたら一番に愛でる事ができる。
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