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おっさんと和のダンジョン
河童
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「……つまり、あなたは私に危害を加える気はないと?」
「もろんですとも! 見てくださいあっしのこの身体、虫も殺せなさそうでしょう?」
目の前の生物をよく観察してみるが、言う通り弱そうだ。
背丈は160くらいで、緑色の皮膚は若干湿っているように見える。
先ほどの言葉を述べながら魔物はくるりと回ったが、その時に背中に甲羅がついているのが確認できた。
水中を進む時に意味があるのか、または戦闘における盾の役割を持っているのかもしれない。
視線を上げると、くりくりとした丸い目玉と黄色い嘴が目に入ってくる。
腹の中はわからないが、目だけを見れば純粋そのもの。
嘴は顔の半分ほどの面積があり、鋭利に尖っていた。
さらに頭頂部には、真っ白な円形の皿が乗せられていて、正直意味がわからない。
「……というか、本当に河童を見たことがないので?」
「ないですね……魔物なんですよね?」
人間と魔物が融合した結果、人の言葉を持ち越せる事例は知っているが、もとから言葉を喋る魔物とは出会ったことがない。
この河童という生き物、本当に魔物なのだろうか?
「いや、あっしたち河童は魔物というか……人間ではないですけど、また別の生き物だと思います。はい」
「また別の生き物ねぇ……」
人間の成り立ちからして不明なことが多いわけだし、河童が同じような固有の種だと否定することはできない。
「それで、河童さんはどうして俺に近づいて来たんですか?」
俺と目を合わせた時にかなり驚いてたようだし、進んで人前に出るようには思えない。
「それはもう……」
河童はふるふると震えている。
自分の本能に抗っているような、冷静を装おうとしているようだった。
「それは……きゅうりが大好物だからです! 是非とも分けてもらえませんか!?」
「あ、はい」
きゅうりを手にとって差し出すと、今までの怯えようが嘘だったかのように、俊敏な動きで受けとる河童。
とてつもなく幸せそうな表情で一口一口を味わっている。
「よ、よかったですね……」
「は……ひゃ……」
大好物を咀嚼したい本能と、こちらに感謝を伝えたいのであろう理性が戦っているようだ。
ひとまず口の中のものを飲み込んで、河童は一息ついた後、もう一度声を発した。
「本当に、ありがとうございます……。実は、ここしばらく何も食べていませんで……」
「それはまた、どうしてですか?」
彼、彼らはこの階層に住んでいるようだが、どのようにして食料を調達しているのだろう。
自分たちで栽培しているのか?
「この階層には、定期的に食べ物が落ちているんです。それが、最近ダンジョンに恐ろしい魔物がやってきて、そいつが……」
河童の話によると、この階層の謎解きは、ミヤのいう通り川上から流れてくる果物を二つに切るというものらしい。
だが、近頃ダンジョンに住み着くようになった魔物が果物を丸呑みして、そのまま下に行ってしまってから、内部の環境が変わってしまったようなのだ。
「……というわけで、ろくに食べ物もなく、どうすれば良いのか、このまま餓死にするのかという瀬戸際であなたが現れたのです」
「なんていうか、大変だったんですね……。野菜はまだあるんで、よかったら持って行ってください」
「いいんですか!?」
俺の両手を握り、何度も礼を告げる河童。
やはり手が湿っていて、申し訳ないが少し気持ち悪い。
「なんなら、ちょうどその魔物を退治しに行くところだったんですよ。でも、河童さんの話を聞く限り下へ降りるのは難しそうですね」
謎解きができないのなら、下へ行くこともできないだろう。
「あ、それならあっしに任せてください。少々お時間いただきますね」
そういって河童は川に潜っていった。
数分後、突然地面が揺れて、件の階段が露出した。
さらに数分待っていると、川の水面から河童が顔を出す。
「何かあった時のために、川の深くに階段を出現させるボタンがあるんです! それじゃあ、お願いしますね!」
もう一度礼を言った後、河童は下流に泳いで行ってしまった。
「もろんですとも! 見てくださいあっしのこの身体、虫も殺せなさそうでしょう?」
目の前の生物をよく観察してみるが、言う通り弱そうだ。
背丈は160くらいで、緑色の皮膚は若干湿っているように見える。
先ほどの言葉を述べながら魔物はくるりと回ったが、その時に背中に甲羅がついているのが確認できた。
水中を進む時に意味があるのか、または戦闘における盾の役割を持っているのかもしれない。
視線を上げると、くりくりとした丸い目玉と黄色い嘴が目に入ってくる。
腹の中はわからないが、目だけを見れば純粋そのもの。
嘴は顔の半分ほどの面積があり、鋭利に尖っていた。
さらに頭頂部には、真っ白な円形の皿が乗せられていて、正直意味がわからない。
「……というか、本当に河童を見たことがないので?」
「ないですね……魔物なんですよね?」
人間と魔物が融合した結果、人の言葉を持ち越せる事例は知っているが、もとから言葉を喋る魔物とは出会ったことがない。
この河童という生き物、本当に魔物なのだろうか?
「いや、あっしたち河童は魔物というか……人間ではないですけど、また別の生き物だと思います。はい」
「また別の生き物ねぇ……」
人間の成り立ちからして不明なことが多いわけだし、河童が同じような固有の種だと否定することはできない。
「それで、河童さんはどうして俺に近づいて来たんですか?」
俺と目を合わせた時にかなり驚いてたようだし、進んで人前に出るようには思えない。
「それはもう……」
河童はふるふると震えている。
自分の本能に抗っているような、冷静を装おうとしているようだった。
「それは……きゅうりが大好物だからです! 是非とも分けてもらえませんか!?」
「あ、はい」
きゅうりを手にとって差し出すと、今までの怯えようが嘘だったかのように、俊敏な動きで受けとる河童。
とてつもなく幸せそうな表情で一口一口を味わっている。
「よ、よかったですね……」
「は……ひゃ……」
大好物を咀嚼したい本能と、こちらに感謝を伝えたいのであろう理性が戦っているようだ。
ひとまず口の中のものを飲み込んで、河童は一息ついた後、もう一度声を発した。
「本当に、ありがとうございます……。実は、ここしばらく何も食べていませんで……」
「それはまた、どうしてですか?」
彼、彼らはこの階層に住んでいるようだが、どのようにして食料を調達しているのだろう。
自分たちで栽培しているのか?
「この階層には、定期的に食べ物が落ちているんです。それが、最近ダンジョンに恐ろしい魔物がやってきて、そいつが……」
河童の話によると、この階層の謎解きは、ミヤのいう通り川上から流れてくる果物を二つに切るというものらしい。
だが、近頃ダンジョンに住み着くようになった魔物が果物を丸呑みして、そのまま下に行ってしまってから、内部の環境が変わってしまったようなのだ。
「……というわけで、ろくに食べ物もなく、どうすれば良いのか、このまま餓死にするのかという瀬戸際であなたが現れたのです」
「なんていうか、大変だったんですね……。野菜はまだあるんで、よかったら持って行ってください」
「いいんですか!?」
俺の両手を握り、何度も礼を告げる河童。
やはり手が湿っていて、申し訳ないが少し気持ち悪い。
「なんなら、ちょうどその魔物を退治しに行くところだったんですよ。でも、河童さんの話を聞く限り下へ降りるのは難しそうですね」
謎解きができないのなら、下へ行くこともできないだろう。
「あ、それならあっしに任せてください。少々お時間いただきますね」
そういって河童は川に潜っていった。
数分後、突然地面が揺れて、件の階段が露出した。
さらに数分待っていると、川の水面から河童が顔を出す。
「何かあった時のために、川の深くに階段を出現させるボタンがあるんです! それじゃあ、お願いしますね!」
もう一度礼を言った後、河童は下流に泳いで行ってしまった。
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