上 下
99 / 154
おっさんと再会

呪殺

しおりを挟む
 夕食は部屋でとることもできるし、食堂でも食べられるらしい。
 せっかくなので、俺たち3人で食堂へ向かう。
 到着してみると、かなり広い空間が確保されていて、畳の上に長いテーブルが、等間隔で座布団が並べられていた。
 食堂内には、おそらくカグヤノムラの特色である陶器や工芸品が飾られていて、村の文化に触れながら食事を楽しめるようだ。
 もちろん小さい庭園も併設されていた。
 スタッフの軽い挨拶の後、料理が適度な感覚で運ばれてくる。
 全て並べられると、かなり壮観というか、月並みな表現をすると豪華だ。

「それでは、ただいまよりお料理について簡単に説明させていただきます」

 一礼ののち、柔らかな雰囲気の女性が一品一品の解説を始めてくれる。

「こちらのお刺身は――」
「カグヤノムラの近くの海で獲れた魚が中心となっております。季節によって異なる種類を楽しむことができます」
「お、お魚で言いますとこちらの焼き魚はお塩のみの味付けとなっていて――」
「素材本来の味わいをお楽しみください。もし物足りない場合は、タレをお持ちいたします」
「そ、そうなんです……あはは……」

 お姉さんが丁寧に話してくれるのだが、すぐにミヤが割り込んで、おそらく続くはずであろう言葉を言ってしまう。

「ほらミヤ、お姉さんが困ってるだろ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。むしろお詳しいですね! こちらの出身の方ですか?」
「はい、そうです」

 そう、実はミヤはカグヤノムラの出身なのだ。

「――ってそうなの!?」

 思わず大きな声を出してしまい、周囲に謝罪する。
 少なくとも、一緒に暮らしていた時には出身がわからない様子だったが、思い出したのだろうか。

「……すっかりお伝えし忘れていました。それでは、残りのお料理について紹介し次第、お伝えさせていただきます」
「は、はぁ……」

 ということで、その後も主役を喰ったミヤの解説は続いた。
 だし汁によって味付けされた野菜が、口内だけでなく身体にも優しい煮物。
 豆をどうにかして白い固形の物体にしたものや、それをフライとはまた違う食感にした揚げ物。後者は、他にも野菜や魚など、いろいろな食材が使われている。
 また、カグヤノムラではパンではなく米という炭水化物が主食らしい。
 雪のように真っ白なものがメジャーらしいが、今回は赤や黄色の色がついた、珍しいものである。
 薄く切った野菜を保存食にしたものや、茶色く食欲をそそる汁物。
 俺もよく知っているプリンだが、抹茶の色をしていたりと、どの料理も好奇心をそそるものだった。

「……で、ミヤは山を出た後、どんな日々を過ごしたの?」

 さて、ここからが本題だ。
 ルーエは興味を示さず、一人黙々と料理に手をつけるかと思いきや、興味津々な様子。

「そうですね……」

 艶かしく耳に髪をかけながら話を始める。

「話せば長くなるのですが、ミヤはまず、花嫁修行のために各地を回ろうと思いました」

 そういうことか。
 各地を回った末にたどり着いたのがこのカグヤノムラだったと。
 確かに、ここは奥ゆかしい土地であり、何かを学ぶにはもってこいな気がする。

「そうして最初に訪れたのがこのカグヤノムラです」

 あ、全然違った。

「村に一歩足を踏み入れた時、ミヤはすべての記憶を思い出しました。……家族に捨てられたことも」

 ここは深掘りしないほうが良さそうだ。
 でも、この村でミヤと再開したと言うことは、家族と和解したのだろう。

「もちろん、今更家族に会おうとは思いませんでした。ただ、たまたまと言いますか、偶然と言いますか、アクシデントと言いますか、とにかくちょっとした不幸を家族に起こした……いえ、起こりまして」
「……ん?」
「そうして家族の死を見届けた後は、一度全国を回って多種多様な技術を身につけ、ここでお館様が現れるのを待っていました」
「……ふむ、さぞ辛い道のりだったのだな。自分を捨てた家族に不幸が起こったのは慰めになるだろう」

 ……ルーエは涙ぐみながら頷いてるけど、これ、多分ミヤさんやっちゃってるよね?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

病原菌鑑定スキルを極めたら神ポーション出来ちゃいました

夢幻の翼
ファンタジー
【錬金調薬師が治癒魔法士に劣るとは言わせない!】 病を治す錬金調薬師の家系に生まれた私(サクラ)はとある事情から家を出て行った父に代わり工房を切り盛りしていた。 季節は巡り、また流行り風邪の季節になるとポーション作成の依頼は急増し、とてもではないが未熟な私では捌ききれない依頼が舞い込む事になる。 必死になって調薬するも終わらない依頼についに体調を崩してしまった。 帰らない父、終わらない依頼。 そして猛威を振るう凶悪な流行り風邪に私はどう立ち向かえば良いのか? そして、私の作った神ポーションで誰を救う事が出来たのか?

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...