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おっさんと和の村
カグヤノムラ
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だんだんとカグヤノムラへ近づいてきたのだろう。
平野から森の中へと様子が変わっていったと思うと、目の前には大きな山が現れ、山間を縫うようにして続く小径を進んでいく。
道幅はかなり狭く、左右に生い茂っている木々が視界を遮ることもあったが、それがかえって秘境へと続いているのではないかという期待を煽る。
「こんな不便な場所なのに観光客が多いとは、それだけ魅力的な何かがあるのだろうな」
ルーエが言った。
顔にかかりそうな葉を手で払っている。
「この道も魅力の一つなんじゃない?」
小道は先が永遠に続いているのではないかと思うほど長く、夜にはさぞ不気味なのだろうと考えずとも理解できる。
だが、日が昇っているうちは、日光を葉が和らげて散らしているようで、むしろ神秘的な落ち着きが得られた。
「村にテレポートなどできないだろうし、どこが楽しいんだ?」
「朝日だってさ、頑張って山を登って見るから美しいんだよ。もちろん単体でも綺麗だと思う気持ちはあるけど、苦労して手に入れた感情が心に残る気がする」
彼女の言葉通り、おそらく道を越えた先にあるカグヤノムラは、今まで訪れた都市よりはだいぶ小さいだろう。
なんならフォックスデンよりも狭いと思う。
だから、あまり地理に詳しくない段階でテレポートを使おうものなら、上手くいかずに埋まってしま……「うま」くいかずに「うま」るか。
また新しいジョークを見つけてしまったな。
カグヤノムラは独特の雰囲気があるらしいし、もしかしたら洒落に関しても独自の発展を遂げているかもしれない。
要調査だな。
ちなみに、ルーエはというと。
「……確かに。伊達に年齢を重ねているわけではないな」
「はは、ありがとう」
珍しく俺の言葉をまともに受け止めてくれた。
そこから1時間ほど歩いて、ついに村への入り口に差しかかった。
「これはまた……不思議だな」
まず目に入ったのは、村のシンボルである古びた神社だった。
立派な石灯籠の並ぶ参道、足元には苔むした石畳が敷かれていて、静かながらも歴史の趣きを感じる。
石灯籠なんて、ルーエが持っていたガイドブックを読まなければ、ただの景色としか思わなかったかもしれない。
やはり本を読むことで知識が増えると世界が広がる。
「民家はどこにあるんだろうね?」
「見当たらないな……とりあえず道なりに進んでみるか」
石畳を少しずれると、敷き詰められた小石たちが楽しげに音を鳴らす。
それに心を躍らせながら歩くこと数十歩、巨大な鳥居が眼前に配置されている。
ガイドに書いてあったとおり、参道や鳥居は端を歩くようにした。
なんでも中央は神様の通りみちなのだそうで、真ん中を突っ切ろうとするルーエを抑えて鳥居をくぐる。
神様に敬意を示したのが良かったのか、今回は彼女が弾かれることもなく、無事に通過することができた。
もしかしたら、神社や教会などで、魔族に対する捉え方が違うのかもしれない。
神社には参拝者がちらほらといたが、境内から村の中心部に伸びている道を見つけたので、先にそちらに向かうことにした。
「村に着いたらまず神様に挨拶ってことかな」
「かもしれないな。とりあえず礼くらいはしておくか」
二人で頭を下げてから歩き始める。
家々は統一感のある構造になっていて、伝統的なものなのだろうと読み取れた。
風情を色濃く残しているだけでなく、村人たちも、外見だけでなく、表情にも温かみを讃えていた。
服装は俺の愛用しているジンベイと同じような柔らかさがあり、親近感が湧いてくる。
彼らは通りすがりの俺たちにも笑顔で挨拶を交わし、時には手を振っていた。
村の奥へと進むと、開けた広場が広がっていた。
広場の周囲にはさまざまな店が並んでいて、おそらく飲食店だと思われる店の前には木製の椅子があった。
見たこともない丸く連なった食べ物を口にしているのを見て、ここにきて正解だったと心の中で喜ぶ。
平野から森の中へと様子が変わっていったと思うと、目の前には大きな山が現れ、山間を縫うようにして続く小径を進んでいく。
道幅はかなり狭く、左右に生い茂っている木々が視界を遮ることもあったが、それがかえって秘境へと続いているのではないかという期待を煽る。
「こんな不便な場所なのに観光客が多いとは、それだけ魅力的な何かがあるのだろうな」
ルーエが言った。
顔にかかりそうな葉を手で払っている。
「この道も魅力の一つなんじゃない?」
小道は先が永遠に続いているのではないかと思うほど長く、夜にはさぞ不気味なのだろうと考えずとも理解できる。
だが、日が昇っているうちは、日光を葉が和らげて散らしているようで、むしろ神秘的な落ち着きが得られた。
「村にテレポートなどできないだろうし、どこが楽しいんだ?」
「朝日だってさ、頑張って山を登って見るから美しいんだよ。もちろん単体でも綺麗だと思う気持ちはあるけど、苦労して手に入れた感情が心に残る気がする」
彼女の言葉通り、おそらく道を越えた先にあるカグヤノムラは、今まで訪れた都市よりはだいぶ小さいだろう。
なんならフォックスデンよりも狭いと思う。
だから、あまり地理に詳しくない段階でテレポートを使おうものなら、上手くいかずに埋まってしま……「うま」くいかずに「うま」るか。
また新しいジョークを見つけてしまったな。
カグヤノムラは独特の雰囲気があるらしいし、もしかしたら洒落に関しても独自の発展を遂げているかもしれない。
要調査だな。
ちなみに、ルーエはというと。
「……確かに。伊達に年齢を重ねているわけではないな」
「はは、ありがとう」
珍しく俺の言葉をまともに受け止めてくれた。
そこから1時間ほど歩いて、ついに村への入り口に差しかかった。
「これはまた……不思議だな」
まず目に入ったのは、村のシンボルである古びた神社だった。
立派な石灯籠の並ぶ参道、足元には苔むした石畳が敷かれていて、静かながらも歴史の趣きを感じる。
石灯籠なんて、ルーエが持っていたガイドブックを読まなければ、ただの景色としか思わなかったかもしれない。
やはり本を読むことで知識が増えると世界が広がる。
「民家はどこにあるんだろうね?」
「見当たらないな……とりあえず道なりに進んでみるか」
石畳を少しずれると、敷き詰められた小石たちが楽しげに音を鳴らす。
それに心を躍らせながら歩くこと数十歩、巨大な鳥居が眼前に配置されている。
ガイドに書いてあったとおり、参道や鳥居は端を歩くようにした。
なんでも中央は神様の通りみちなのだそうで、真ん中を突っ切ろうとするルーエを抑えて鳥居をくぐる。
神様に敬意を示したのが良かったのか、今回は彼女が弾かれることもなく、無事に通過することができた。
もしかしたら、神社や教会などで、魔族に対する捉え方が違うのかもしれない。
神社には参拝者がちらほらといたが、境内から村の中心部に伸びている道を見つけたので、先にそちらに向かうことにした。
「村に着いたらまず神様に挨拶ってことかな」
「かもしれないな。とりあえず礼くらいはしておくか」
二人で頭を下げてから歩き始める。
家々は統一感のある構造になっていて、伝統的なものなのだろうと読み取れた。
風情を色濃く残しているだけでなく、村人たちも、外見だけでなく、表情にも温かみを讃えていた。
服装は俺の愛用しているジンベイと同じような柔らかさがあり、親近感が湧いてくる。
彼らは通りすがりの俺たちにも笑顔で挨拶を交わし、時には手を振っていた。
村の奥へと進むと、開けた広場が広がっていた。
広場の周囲にはさまざまな店が並んでいて、おそらく飲食店だと思われる店の前には木製の椅子があった。
見たこともない丸く連なった食べ物を口にしているのを見て、ここにきて正解だったと心の中で喜ぶ。
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