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おっさんと戦い
黒幕
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王都に着くと、すでに街には火の手が上がっていた。
店は薙ぎ倒されていて、野菜や果物が無惨に散らばっている。
街には多くの魔物が放たれていて人々は逃げ惑い、ところどころで騎士たちが応戦しているのが見えた。
彼らの身の安全を確保してからエドワード王の元へ向かいたかったが、おそらく王はさらに強大な魔物に狙われているはず。
できる限り道中の魔物を処理しながら、俺は城門を目指した。
「じ、ジオ様! 先ほど城内に恐ろしい魔物が突撃してきました! どうかエドワード王をお助けください!」
巨大な門の前で魔物と戦っていた兵士に声をかけられる。
彼は門番だろうか、城内に入ろうとしている魔物たちを必死に堰き止めている。
だが、その背後に大きな穴が空いていることが、強大なそれを食い止めきれなかったことを示していた。
「王はどこに!?」
「おそらく王の間に!」
門番に襲いかかるゴブリンやオーク、火を放ちながら飛んでいる鳥を魔術で蹴散らし、城内へ突入する。
「これは……」
少しの埃もないような美しい内装は見る影もなく、ある部分は床が崩れ、またある部分は血で染まっていた。
きっと、多くの兵士たちが王を守ろうと奮闘し、その結果命を落としたのだ。
彼らの遺体がないことが気がかりだが、急いで王の間へ向かう。
目的地が近づくにつれ、だんだんと空気が重くなっていくように感じる。
血の滴る階段を上り切り、ようやく王の間に辿り着くというところで、ついに俺は敵の姿を捉えた。
「待て!」
黒い影は、今にもへたりこむ王を殺そうとしていた。
俺が声をかけるとそれは……それらはゆっくりと振り向いた。
「おや、予想よりも早かったですね。やはり魔王を倒したというのは嘘ではなさそうだ」
「あなたは……」
長い金髪を後ろで束ね、貴族のお手本のような所作をしているその男は、社交パーティで見かけたナイトリッチ伯爵その人だった。
その横にいるのは大柄な獣。
フォックスデンに来たばかりの頃に倒したブラッドウルフに酷似していた。
しかし、体毛はところどころ腐っているように緑色に変色していたし、背にはウォリック伯爵が乗せられている。
「来てくれたのかジオくん! 王感激!」
「感激してる場合ですか! 早く逃げてください!」
「いや、それが腰が抜けちゃって、もう歩けないのよ……」
「えぇ……」
緊急事態故に仕方ないか。
俺はテレポートの魔術でエドワード王とウォリック伯爵を捉え、自分の少し後ろに呼び寄せた。
「いたっ!? 結構高いところから落としたね!?」
「地面にめり込むよりマシでしょう! それよりどうしてウォリック伯爵まで!?」
「全然見当もつかないよ!?」
まさか彼も協力者……には見えないな。
俺の疑問を読んでいるかのように、ナイトリッチが口を開く。
「おや残念だ。彼は私の研究に混ざりたいと言っていただろう? だから混ぜてやろうと思ってね」
「……混ぜるって……」
「ブラッドウルフの状態を見れば、死した後にアンデッドとして復活させられたのはわかるだろう?」
本格的なアンデッドに出会ったことはないが、存在は俺も知っていた。
すでに命のないものに「動力」を入れてやることで、もう一度活動させているのだ。
その「動力」はさまざまで、人間の心臓のような物体が使われることもあれば、怨念や憎悪のような実態のないものが使われることもある。
問題は、ブラッドウルフが何を「動力」として動いているかだ。
「言わなくてもわかるだろうが、一応説明しておくよ。このブラッドウルフは君が討伐した個体であり、魔物研究の家系にあるトマスくんによって蘇生させられた。素材と食料はもちろん、この城の人間たちだ」
「貴様……よくも兵士の命を!」
エドワード王が吠える。
一国の王としての誇りがあるのだろう。
彼の言葉は鋭い矢のように放たれたが、ナイトリッチは意に介さずうすら笑みを浮かべている。
「そんなに兵士たちが大切なら今すぐ会わせてあげよう。さぁ、餌の時間だ」
号令を聞き、ブラッドウルフが地を蹴った。
店は薙ぎ倒されていて、野菜や果物が無惨に散らばっている。
街には多くの魔物が放たれていて人々は逃げ惑い、ところどころで騎士たちが応戦しているのが見えた。
彼らの身の安全を確保してからエドワード王の元へ向かいたかったが、おそらく王はさらに強大な魔物に狙われているはず。
できる限り道中の魔物を処理しながら、俺は城門を目指した。
「じ、ジオ様! 先ほど城内に恐ろしい魔物が突撃してきました! どうかエドワード王をお助けください!」
巨大な門の前で魔物と戦っていた兵士に声をかけられる。
彼は門番だろうか、城内に入ろうとしている魔物たちを必死に堰き止めている。
だが、その背後に大きな穴が空いていることが、強大なそれを食い止めきれなかったことを示していた。
「王はどこに!?」
「おそらく王の間に!」
門番に襲いかかるゴブリンやオーク、火を放ちながら飛んでいる鳥を魔術で蹴散らし、城内へ突入する。
「これは……」
少しの埃もないような美しい内装は見る影もなく、ある部分は床が崩れ、またある部分は血で染まっていた。
きっと、多くの兵士たちが王を守ろうと奮闘し、その結果命を落としたのだ。
彼らの遺体がないことが気がかりだが、急いで王の間へ向かう。
目的地が近づくにつれ、だんだんと空気が重くなっていくように感じる。
血の滴る階段を上り切り、ようやく王の間に辿り着くというところで、ついに俺は敵の姿を捉えた。
「待て!」
黒い影は、今にもへたりこむ王を殺そうとしていた。
俺が声をかけるとそれは……それらはゆっくりと振り向いた。
「おや、予想よりも早かったですね。やはり魔王を倒したというのは嘘ではなさそうだ」
「あなたは……」
長い金髪を後ろで束ね、貴族のお手本のような所作をしているその男は、社交パーティで見かけたナイトリッチ伯爵その人だった。
その横にいるのは大柄な獣。
フォックスデンに来たばかりの頃に倒したブラッドウルフに酷似していた。
しかし、体毛はところどころ腐っているように緑色に変色していたし、背にはウォリック伯爵が乗せられている。
「来てくれたのかジオくん! 王感激!」
「感激してる場合ですか! 早く逃げてください!」
「いや、それが腰が抜けちゃって、もう歩けないのよ……」
「えぇ……」
緊急事態故に仕方ないか。
俺はテレポートの魔術でエドワード王とウォリック伯爵を捉え、自分の少し後ろに呼び寄せた。
「いたっ!? 結構高いところから落としたね!?」
「地面にめり込むよりマシでしょう! それよりどうしてウォリック伯爵まで!?」
「全然見当もつかないよ!?」
まさか彼も協力者……には見えないな。
俺の疑問を読んでいるかのように、ナイトリッチが口を開く。
「おや残念だ。彼は私の研究に混ざりたいと言っていただろう? だから混ぜてやろうと思ってね」
「……混ぜるって……」
「ブラッドウルフの状態を見れば、死した後にアンデッドとして復活させられたのはわかるだろう?」
本格的なアンデッドに出会ったことはないが、存在は俺も知っていた。
すでに命のないものに「動力」を入れてやることで、もう一度活動させているのだ。
その「動力」はさまざまで、人間の心臓のような物体が使われることもあれば、怨念や憎悪のような実態のないものが使われることもある。
問題は、ブラッドウルフが何を「動力」として動いているかだ。
「言わなくてもわかるだろうが、一応説明しておくよ。このブラッドウルフは君が討伐した個体であり、魔物研究の家系にあるトマスくんによって蘇生させられた。素材と食料はもちろん、この城の人間たちだ」
「貴様……よくも兵士の命を!」
エドワード王が吠える。
一国の王としての誇りがあるのだろう。
彼の言葉は鋭い矢のように放たれたが、ナイトリッチは意に介さずうすら笑みを浮かべている。
「そんなに兵士たちが大切なら今すぐ会わせてあげよう。さぁ、餌の時間だ」
号令を聞き、ブラッドウルフが地を蹴った。
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