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おっさん、パーティに行く
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「……で、結局ジオくんは気持ちよくジョークを披露してて国の現状についてはノー情報ってことでOK?」
パーティが終わり、王の間へと呼び出されたジオ一行。
彼はエドワード王から優しく問われていた。
「……いえ、確かに楽しくなってしまったのは本当ですが、自分なりに思うところはありました」
「あ、そうなの!? ごめんねジオくん、てっきり君は依頼のことを忘れちゃったのかと……王反省!」
ペロリと舌を出し、自らの頭をコツンと叩く一国の長。
その姿は見るものに安心……というよりは苛立ちを感じされせる。
「ジオを甘く見てもらっては困る。たとえ、人生で初めて趣味を認められたとしても情報を得ることくらいできるさ。なぁ?」?「そうだな。彼は、俺が貴族とのコネを作ろうと躍起になっている時ですら目的を忘れていなかったぞ」
「エドガーくんは何やってるの!? 資金提供なら僕がしてあげるよ!?」
「え、そうなのか……?」
「うん。物語とはいえ、あんまり革命とか起こされると困るけど、君の文才は本物だって王もわかってるよ」
多くの貴族がエドガーの小説を楽しんでいるように、視点は違えど王もまた彼のファンだったようだ。
余計な一言で数度のチャンスをふいにした彼にとっては嬉しい申し出だろう。
「それで……ジオくんはどんなことを考えたのかな?」
会話が本筋に戻ってきたところで、ジオは王を見つめて口を開いた。
「……まずフォックスデンの村を見てきた感想です。フォックスデンの人々は余所者の私にも温かく接してくださりました。また、教会は素朴ですが、村の人々のことを思って行動できる素晴らしい若者がいます」
エドワード王は黙って頷いている。
「地域特有の料理など、守っていってほしい文化を感じました。でも……」
「でも?」
「文化を守ることと変わらないことは違うと思います。教会の牧師は変わらないことを望み、副牧師は変わることを望んでいました。ただ騎士団に守護してもらうだけでなく、村人自らの力で外敵に対処できるようになりたいと」
「それは……」
王はしばし考え込んでいたが、やがてそれを音に乗せて伝えた。
「村単位であったとしても、それこそ革命につながってしまいそうじゃないかい?」
「その差は人々の心の豊かさや指導者によるでしょう。可能性があるからと芽を摘んでしまうのは、それこそ保守的な貴族と同じなのではないでしょうか?」
国を率いていく立場としては、おそらく王の意見の方が正しいのだろう。
しかし、誰かの上に立つことなく、純粋な心を持っているジオの言葉は彼の胸に突き刺さった。
「……そうだね。今日のパーティはどうだったか、聞かせてもらってもいいかい?」
「貴族の中にも、ウォリック伯爵のように温和で協力的な方はいました。私のジョークを喜んでくれたのもそういう人々だったと思います。ですが……」
自らの特殊な技能によって周囲の声を聞き分けることができるジオ。
彼はその技で得た情報を告げる。
「中には良くないことを考える者もいるようです。詳細はわかりませんでしたが、暗号のような言葉での会話が聞こえました」
「暗号?」
「はい。あとは……」
次の言葉を聞いて、王は目の色を変えた。
そして、ジオを自分のすぐ近くまで呼び寄せると、耳元で何かを囁いた。
「……いいんですか?」
「被害がどこまで及ぶかわからないからね。ジオくんにはその対処を頼んでも良いかな?」
「わかりました」
「どんどん面倒なことに巻き込んでごめんね。可能性がありそうな人物については僕の方で調べておくから」
「お願いします」
ルーエとエドガー、そして王の間の警護をしていたシャーロットに会話の内容はわからなかった。
だが、もうすぐ「何か」が起こること、その対処に当たらねばならないことは確定的だった。
パーティが終わり、王の間へと呼び出されたジオ一行。
彼はエドワード王から優しく問われていた。
「……いえ、確かに楽しくなってしまったのは本当ですが、自分なりに思うところはありました」
「あ、そうなの!? ごめんねジオくん、てっきり君は依頼のことを忘れちゃったのかと……王反省!」
ペロリと舌を出し、自らの頭をコツンと叩く一国の長。
その姿は見るものに安心……というよりは苛立ちを感じされせる。
「ジオを甘く見てもらっては困る。たとえ、人生で初めて趣味を認められたとしても情報を得ることくらいできるさ。なぁ?」?「そうだな。彼は、俺が貴族とのコネを作ろうと躍起になっている時ですら目的を忘れていなかったぞ」
「エドガーくんは何やってるの!? 資金提供なら僕がしてあげるよ!?」
「え、そうなのか……?」
「うん。物語とはいえ、あんまり革命とか起こされると困るけど、君の文才は本物だって王もわかってるよ」
多くの貴族がエドガーの小説を楽しんでいるように、視点は違えど王もまた彼のファンだったようだ。
余計な一言で数度のチャンスをふいにした彼にとっては嬉しい申し出だろう。
「それで……ジオくんはどんなことを考えたのかな?」
会話が本筋に戻ってきたところで、ジオは王を見つめて口を開いた。
「……まずフォックスデンの村を見てきた感想です。フォックスデンの人々は余所者の私にも温かく接してくださりました。また、教会は素朴ですが、村の人々のことを思って行動できる素晴らしい若者がいます」
エドワード王は黙って頷いている。
「地域特有の料理など、守っていってほしい文化を感じました。でも……」
「でも?」
「文化を守ることと変わらないことは違うと思います。教会の牧師は変わらないことを望み、副牧師は変わることを望んでいました。ただ騎士団に守護してもらうだけでなく、村人自らの力で外敵に対処できるようになりたいと」
「それは……」
王はしばし考え込んでいたが、やがてそれを音に乗せて伝えた。
「村単位であったとしても、それこそ革命につながってしまいそうじゃないかい?」
「その差は人々の心の豊かさや指導者によるでしょう。可能性があるからと芽を摘んでしまうのは、それこそ保守的な貴族と同じなのではないでしょうか?」
国を率いていく立場としては、おそらく王の意見の方が正しいのだろう。
しかし、誰かの上に立つことなく、純粋な心を持っているジオの言葉は彼の胸に突き刺さった。
「……そうだね。今日のパーティはどうだったか、聞かせてもらってもいいかい?」
「貴族の中にも、ウォリック伯爵のように温和で協力的な方はいました。私のジョークを喜んでくれたのもそういう人々だったと思います。ですが……」
自らの特殊な技能によって周囲の声を聞き分けることができるジオ。
彼はその技で得た情報を告げる。
「中には良くないことを考える者もいるようです。詳細はわかりませんでしたが、暗号のような言葉での会話が聞こえました」
「暗号?」
「はい。あとは……」
次の言葉を聞いて、王は目の色を変えた。
そして、ジオを自分のすぐ近くまで呼び寄せると、耳元で何かを囁いた。
「……いいんですか?」
「被害がどこまで及ぶかわからないからね。ジオくんにはその対処を頼んでも良いかな?」
「わかりました」
「どんどん面倒なことに巻き込んでごめんね。可能性がありそうな人物については僕の方で調べておくから」
「お願いします」
ルーエとエドガー、そして王の間の警護をしていたシャーロットに会話の内容はわからなかった。
だが、もうすぐ「何か」が起こること、その対処に当たらねばならないことは確定的だった。
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